エンジニアも知っておきたい出世のコツ四箇条経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(9)(1/2 ページ)

エンジニアが出世するために必要な行動とは何だろうか――上司にゴマをすること? 身を粉にして働くこと? いや、真実はもっとシンプルだ。

» 2015年01月05日 18時00分 公開
[山崎元,@IT]
経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」

連載目次

ゲームとしての「出世」

 率直にいって、エンジニアは文系ビジネスパーソンよりも、「出世」というゲームに対する感度が鈍いことが多い。しかし、エンジニアも多くの場合、出世に興味を持ってはいる。しかし、どう動けばいいのかを整理できず、受動的に評価されるのを待っている人が多いように見える。特に、自分の技術的な能力に自信を持っている人が組織内での出世を得られない場合は、人事がアンフェアだと不満を持ったり、プライドが傷ついたりするのではないか。

 ほとんどの組織にあって「人事」は完全に公平とは言い難いものだし、その結果としての出世の具合に納得し難い状況が生じることはある。しかし、不公平に腹を立てる前に、「出世」というゲームの構造がどのようなものなのか、再確認しておくことは有益だろう。

 出世とは、組織内で「出世にふさわしい評判」を蓄積して、ある時点でそれを「より高い地位として実現してもらう」ゲームだ。

 「出世にふさわしい評判」には、大きく言って、二つの意味がある。一つは「仕事の能力」に関わるものであり、もう一つは「リーダーとしての能力」に関わるものだ。前者は割合分かりやすいのだが、後者は何が大事なのか、特に若手・中堅の時代には気が付きにくいことが多い。「大物感」とか「忠実さ」とか「面倒見の良さ」といった、仕事の能力としては計量しにくい、評価者が主観的に判断する属性が、意外に重視されることになる。

 また、いくらいい評判が蓄積されても、それを高い地位に変える判断は、その時点でより高い地位にある人にやってもらわなければならない。そして、役員、社長など、目指す地位が高くなればなるほど、最後の決定は判断者の個人的な判断の色彩を帯びる。「上司に気に入られるような行動」や、端的に言って「ごますり」は、仲間内ではばかにされるかもしれないが、出世ゲームでは決め手になることがあるのが現実だ。

出世の心得四箇条

 若いころから出世のことばかり考えて働くのは、はっきり言って楽しくない。だが、出世に不利な働き方をするのは能率が悪過ぎる。多くの組織にあって、結果に差が表れるのは将来のことだとしても、三十歳代の半ば位までには、将来出世する人とそうでない人の「評判の持ち点」には顕著な差が付いているものだ。

 ここで、筆者が若いころに会社の先輩から授けられた「出世のコツ、四箇条」を読者に伝授しよう。筆者が、意に沿わない人事異動の内示を受けて腐っていた時に、本来なら次に仕えるべき上司として赴任して来ていた先輩(15歳ぐらい年上で当時の地位は課長クラス)が教えてくれたものだ。

 先輩の言葉は再現すると次のようなものだった。

 ヤマザキ、君は仕事はできそうだ。大いに結構だ。これからこの会社で出世するための心得を授けるから、心して聞け。

 第一に、意見は常に大きな声で言え。いい意見を持っていても、小さな声で言ったのでは効果がない。これは真実だ。

 次に、意見は常に「会社のために」を論拠として言え。会社のために言った意見なら、仮にお前の意見が間違っていたとしても、お前は救われるだろう。この会社は、その程度には信用していい。

 そして、これが大変難しいのだが、誰に対しても同じことを言え。相手によって言うことを変えるヤツが多いのだが、これは信用されない。誰にでも同じことが言えないなら、それは言わない方がずっといい。これら三つの心得を守れるなら、お前の将来は順風満帆だ。

 そうだ。もう一つ付け加えよう。

 上司に「お前は可愛いヤツだな」と思われるような愛嬌を持てるといいな。これがあれば、鬼に金棒だ

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