エンジニアも知っておきたい出世のコツ四箇条経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(9)(2/2 ページ)

» 2015年01月05日 18時00分 公開
[山崎元,@IT]
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四箇条の解釈

 大先輩が授けてくれた心得は、要約すると、「大きな声」「会社のため」「同じ言葉」「上から見た愛嬌」の四点だ。これらはいずれも、ゲームとしての「出世」に深くつながっている。

 まず、目立たないことには出世の対象になりにくいのは、組織一般の傾向だ。黙っていても能力が評価されて上司が取り立ててくれるのは、特殊なまでに有能な人か、人の評価によほど丁寧な組織だけだ。また、誰もがそう思う平凡な意見でも大きな声で臆せず声に出すことは、リーダーにとって必要な属性だ。

 筆者はこれまでに13の会社に勤めてきたが、全ての会社で「うるさいぐらい積極的な人」の方が「控えめな人」よりも遙かに有利だった。

 次に、意見の論理を「属する組織のために」という根拠でまとめることは、長年にわたって組織に対する忠誠心があると示すことになるし、上司はこれを自分に対する忠誠心としても解釈する可能性が大きい。忠実で予測可能であることは、上司が部下を評価し、活用する場合に最も重要な属性だ。

 加えて、誰に対しても「同じ言葉」を使い、「彼が口にした言葉は本心からの言葉だ」と思える信頼こそが、組織のリーダーにとって最大の力の源泉だ。相手による言葉の使い分けは、長期的にうまくいくことはまれであり、人物を軽く見られたり、無用な敵を作ったりする原因となり得る。

 最後の「愛嬌」は、現実にあって強力な武器だ。「出世」ゲームの最後の決着は、その時点で偉い人が、自分を取り立てようと思うかどうかで決まる。能力がありそうだけれども親しめない人物よりも、能力に限界はあっても親しみを感じる人物を、重要なポジションの部下、あるいは自分の後継者に選びたくなるのは自然な心理だ。

 自分よりも上の世代の「力を持っている人」を動かせると、人脈、資金、地位、仕事のチャンスなどを早く得られる場合が多い。世間で出世している経営者の多くは、偉くなってからは外に見せていないとしても、若いころにこうした能力を発揮した人々だ。

 ちなみに、先の心得を授けてくれた先輩は、会社(大手商社)と部署(非営業部門)を考えると、あり得る出世の上限(副社長)まで出世した。

 筆者は大組織を離れてしまったし、もともと上の世代に向けた「愛嬌」が不足していたので、しょせん大いに出世する素質はなかったのだろうと思うが、それ以外の心得は、経済評論家という仕事に合わせてアレンジして心掛けてきたつもりだし、大いに役に立ったと思っており、今でも先輩の教えに感謝している。

 エンジニアである読者の皆さんにも「人物評価を上げるコツ」として先の四箇条を活用いただけると幸いだ。結果的に出世してくれるなら、なおさらに喜ばしい。

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筆者プロフィール

山崎 元

山崎 元

経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。


※この連載はWebサイト『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を、筆者、およびサイト運営会社の許可の下、転載するものです。



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