CCENT/CCNA取得に向けて猛勉強中の新米ネットワークエンジニア。今週はクラスレスアドレッシングを用いてサブネット化したネットワーク構築について調べました。
「CCENT」資格取得を目標に勉強している新米ネットワークエンジニアのS君、今週は「LAN/WAN環境でアドレッシング要件を満たす、VLSMと経路集約を使用した適切なIPv4アドレッシング方式」を勉強しました。
先輩社員 齋藤さん(炭水化物好き)に添削をお願いし、評価をドキドキしながら待つS君。添削のお礼にランチをごちそうする約束をしているのですが、どうやらリポートの出来によってランチのランクが変わってくるようです(出来が良いとリーズナブルな炭水化物もの、出来が悪いと高価な炭水化物もの)。前回はツメが甘いと「もう一歩」評価をくらい、クリスマスに男二人で「海老天丼」(2500円!)を食べるはめになりました。お財布と体型維持のためにも、今週は良い評価をもらいたいところです。
前回、IPアドレスはネットワーク部とホスト部に分けられると説明しました。その際のホスト部に割り当てることができるホスト数について説明します。
図1が、割り当てられるホスト数の計算式です。
前回リポートで記載した通り、ホスト部には以下の2つも含まれます。
よって、2のn乗(nはホスト部のビット数)から2を引いた値が、ホストに割り当てることができるホスト数です。
各クラス(A、B、C)のホスト数について記載したのが図2です。
クラスAはホスト数が約1700万、クラスBは約6万です。どちらもホスト数に膨大な数が割り当てられますが、実際のネットワーク設計でこのような膨大なホスト数を割り当てて設計することはまれです。クラスA、クラスBを用いてIPアドレスを割り当てると、多数の数のIPアドレスが余ります。
対して、クラスCはホスト数254です。クラスA、クラスBと比較するとIPアドレスを節約できます。しかし、254個という固定の数であることに変わりはありません。ホスト数が10個の設計をしたい場合では、200以上の無駄を出してしまいます。上記の課題から、無駄をなくし効率的にIPアドレスを割り当てようという考え方の基に生まれたのが「クラスレスアドレス」です。
前回記載した通り、クラスレスアドレスは、クラスに依存することなくネットワークを構築できます。
図3は、クラスBのネットワークアドレスが割り当てられ、そのネットワークを32個のサブネットに分割して利用したい場合を想定します。32個に分割したい場合は、ホスト部を5ビット分サブネット化することで対応できます(2の5乗は32)。結果、ネットワーク部が21bit、ホスト部が11bitというようにサブネット化できます。
また、IPアドレスにプレフィックス値を付加した「172.16.0.0/21」のような表記を「CIDR(Classless Inter-Domain Routing)」表記といいます。
このようにクラスレスアドレスを用いることで、クラスに依存することなくネットワーク部とホスト部の範囲を意図的に決められます。
図4は、プレフィックス値ごとの割り当て可能なホスト数です。構築したいネットワークに対し、ホスト用に幾つ必要かを考慮して、無駄なく最適なホスト数を割り当てられるようにネットワークを分割していきます。プレフィックス値として設定できるのは、割り当てられたクラスに対応したネットワーク部のビット数以上です。
また、プレフィックス値の最大値は30です。プレフィックス値30は、割り当て可能なホスト数が2つのみなので、ポイントツーポイントというルーターやPCを直接接続する場合などに使用します。
サブネット化する際の注意点を記載します。
プレフィックス値27のIPアドレスが割り当てられた場合、図5のように第4オクテットはサブネット部とホスト部に分けられます。2進数の方が境目が理解しやすいのですが、実際はほとんど10進数で表記します。10進表記する場合、サブネット部やホスト部を意識せず、オクテット(8bit)をそのまま10進数に変換します。
実際にクラスレスでネットワークを分割していく際の「FLSM」「VLSM」という2つの分け方を説明します。
FLSMは「固定長サブネットマスク」と呼ばれ、分割したネットワークのプレフィックス値が全て同じという特徴を持ちます。
FLSMを用いたネットワーク構築は、幾つのサブネットに分割するかを基に、分割数に最適なビット数をホスト部の先頭から借用するという考え方です。
ほとんどはサブネットごとに必要とされるホスト数が異なるので、クラスフルアドレスよりは効率的ですが、まだIPアドレスの無駄使いをしています。FLSMよりもさらに効率を上げたものがVLSMです。
VLSMは、「可変長サブネットマスク」と呼ばれる、FLSM以上にIPアドレスの割り当て効率を上げた仕組みです。
FLSMが「必要なサブネットが幾つか」という考え方なのに対し、VLSMは「必要なホスト数からネットワークを分割していく」という考え方です。
FLSM、VLSMそれぞれのサブネット化の手順を、例を挙げて説明します。
3拠点、6部署にまたがってネットワークを分割する際の説明をします。ネットワークアドレスは「172.16.0.0/16」のアドレスを分割します。
まず、必要なサブネット数で分割する方法について説明します。必要なサブネットの数は、9個(6部署+3つのルータ間接続)です。
図7の上式を満たすnの値を求めると、ビット数を得られます。9個のサブネットを用意するためには、下式に記載があるようにホスト部から4bitをサブネット化すると対応できます。「172.16.0.0/16」のホスト部4bitをサブネット化するので、プレフィックス値は「/20」となります。
ちなみにこのときのホスト部は12bitなので、割り当て可能なホスト数は「(2の12乗)−2=4094」です。
プレフィックス値20でネットワークを分割した構成図が図8です。
分割する際に、サブネットをどのように割り当てるかというポリシーを決めます。ポリシー設定に正解はありませんが、ポリシーを設定しておくことで、分かりやすいネットワーク構成ができます。今回はホスト部から、値の小さなサブネットを順次割り当てています。
FLSMを用いることのメリットとして、ホスト数増大による拡張にも対応できる点があります。
VLSMによるサブネット化のセオリーは、「大きなサブネットから計算する」です。VLSMはIPアドレスの節約という点に重点をおいており、このルールを用いることでIPアドレスを効率的に割り当てられます。
今回のケースでは開発部(300台)、営業部(200台)、事業部(100台)、総務部と人事部(ともに50台)、最後に経理部(20台)の順に計算をしていきます。
総務部の50台は(2のn乗−2)の値で50以上の最少の値は62となり、nは6です。よってホスト部は6bit、ネットワーク部は26bitとなります。同様に他部署について求めたものが図9です。
ルールに従って、実際にネットワークアドレスをサブネット化したのが図10です。
最小値のプレフィックス値23からネットワークアドレスを割り当てます。次に割り当てるネットワークアドレス(/24)は、前回割り当てたネットワークアドレス(今回では/23)のサブネット部の最下位bitに1bit付加した値を10進数表記したものです。この方法で全てのネットワークアドレスを割り当てると、無駄なく割り当てられます。
ルールに従い、実際にサブネットを割り当てたネットワーク構成図が図11です。
ホスト数が多い開発部から割り当て、営業部、事業部の順にサブネットを割り当てます。ポイントツーポイントであるルーター間は最大のプレフィックス値30(一番小さいネットワーク)を用いるため、最後に割り当てます。
このように、FLSM・VLSMを用いてサブネット化していくことが可能です。割り当てられたネットワークのホスト数に余裕がある場合には、ホスト数に余裕を持ったサブネットを作れるFLSMを用いる場合があります。
また、必要なホスト数に見合ったサブネットを用意してサブネットの拡張に対応できるので、IPアドレスを節約したい場合には、VLSMを用います。
どのようなネットワーク構成になるかで変わってくるので、臨機応変に対応することが重要です。また、年々ホスト数が増えることを考慮したネットワークを構築することもありますので、現在だけではなく、将来のことも考慮が必要です。
用語 | 意味 |
---|---|
ポイントツーポイント | 2つのノード(ルータなど)接続のこと。1体1での接続 |
ポイントツーマルチポイント | 1対多の接続。イーサネットの接続方式。送信相手が複数存在するので「誰に」バトンタッチすれば相手へデータを届けられるか、引継ぎ相手を指定する必要がある。 |
次回はIPv6アドレスの種類と自動設定の方法について調べます。
リポート作成:新米S
今回のVLSMは、アドレス計算の仕組みをしっかり覚えられればOKです。ホストアドレス、ブロードキャストアドレスの求め方までリポートに含めてほしいところですが、大筋で良く書けており、十分に理解できていると判断できます。
総合評価は「よくできました」です。次回もこの調子でポイントを吟味して押さえてください。ランチのメニューはお手ごろ価格の「ヅケネギトロ丼(テイクアウト)」でお願いします。
齋藤
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