嫌いな上司の対処法経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(11)(2/2 ページ)

» 2015年03月16日 18時00分 公開
[山崎元,@IT]
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ケース別の対処法

 深刻なケースから考えよう。例えば「上司の人事評価がフェアではなくて、自分に不利に働いている」場合はどうか。これは、人材価値を損なう深刻な問題だ。

 「上司の上司」に訴え出たり、他部署のマネジャーに協力を求めたりするなど、動き方はいくつかある。しかし、「あなたの評価はフェアでない」と申し立てることは、上司の能力や人格に対する明確な否定なので、必ず勝てる状況か、転職などの退路を作ってから戦う必要がある。

 転職の代わりに人事異動を画策することもできるが、上司と対立した事実を残すと、後で評価が不利になったり、元上司に仕返しされたりする場合がある。

 「上司が、成長につながるような仕事を与えてくれない」場合はどうか。これも、人材価値のマイナス要因だが、先の問題よりは折り合いを付けやすいかもしれない。

 思うようにならない場合には、転職で解決することが最善の答えになることがある。

 「『セクシュアルハラスメント』や『パワーハラスメント』がある」場合はどうか。これも解決を要する問題だが、上司と直接対峙(たいじ)しようとするのは危険だ。

 正確な記録を取っておいて、後で十分対抗できるようにしてからアクションを考えるべきだ。ハラスメントは加害者に問題があり、職場の他のメンバーのためにもただすべきなのだが、訴え出ると、その後被害者も居心地が悪くなる場合がある。

 「上にはへつらうくせに、下には威張る上司」はどうか。

 この種の上司が大切にしているのは上と横に対する体面なので、仕事の力で自分が勝る場合は、自分の方が上司よりもできることを相手に分からせた上で、「あなたが私に威張らないなら、私はあなたを上司として立ててあげよう」という暗黙のメッセージを伝えると、上司の態度を改善できる場合がある。

 「指示が不明確」「部下とのコミュニケーションが乏しい」といった不満は、かなりの程度部下の側から解決できる。部下に自分から積極的に働き掛けられない上司は少なくないが、部下から積極的にコミュニケーションを取られて嫌がる上司も少ないものだ。

 「無能である」「地位や報酬に見合った仕事をしない」「人格が下劣だ」「尊敬できない」といった上司に対する不満は、我慢するのが正解だ。

 尊敬できる上司の下で仕事をするのは理想だが、職場にそこまで求めるのは贅沢だ。上司は身内ではなくて「他人」だし、実質的には「顧客」であり、満足させるべき対象だ。実害がない限り、顧客に腹を立てて良いことは何もない。

 最後にひと言、「上司も人間だ」と申し上げておこう。

 部下から好意を持って接すれば好意的に受け止めることがあるし、反発されると長きにわたって恨みに思うこともある。ときには誤解をすることもある。もちろん、「部下も人間だ」。

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筆者プロフィール

山崎 元

山崎 元

経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。


※この連載はWebサイト『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を、筆者、およびサイト運営会社の許可の下、転載するものです。



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