充実した気持ちで働くためには、仕事量や心の状態などをうまくコントロールすることが大切です。仕事の不満や悩みを解消するヒントをお届けする本連載。今回のテーマは「仕事を断る」です。
「忙しい」という字は、「心」を「亡」くすと書きます。充実した気持ちで働くためには、仕事量や心の状態などをうまくコントロールして、自分らしく働くことが大切ですよね。
一方、ビジネスシーンでは、「上司からの高い目標設定」「顧客からの無茶(むちゃ)な要求」「納期間際になってからの仕様変更」「行きたくない飲み会の誘い」など、「本当は断りたいのに、断れない」ことがよくあるものです。
断らないことによって得られる信頼もあるでしょう。しかし、何でも受け入れて「言いなり」になってしまうと、身の周りが「本当は断りたい仕事」だらけになり、大切な時間が割かれてしまうばかりか、引き受けた仕事を一人で抱え込んでしまう羽目にも陥りかねません。
そこで今回は、「なぜ、仕事を断れないのか?」に焦点を当て、「仕事の断り方」と、「断る流儀」について考えます。
インターネットで「仕事 断り方」と検索すると、「うまい断り方」――つまり、表現方法の情報がたくさん出てきます。
でも、「うまい断り方」が分かれば、仕事を断れるでしょうか。
もちろん、「私には、この仕事はできません!」とぶっきらぼうに断るよりも、「期待を寄せていただいてありがとうございます。今、他の案件を抱えており、手が離せない状況です。あさってなら時間が空きますが、それまでお待ちいただくことはできますか?」のように、感謝の言葉や現在の状況説明、代替案の提示などをからめてうまく伝えるテクニックも大切です。
でも、仕事を断れない本当の理由は、「これを引き受けないと、○○を失ってしまうのではないか」のような、心理的な「恐れ」ではないでしょうか。
「うまい断り方」も大切ですが、それだけではなかなか断れません。なぜなら、思考よりも感情の動きの方が強いからです。
仕事を断れないとき、次のような「恐れ」を抱いていませんか?
「仕事を断る」とは、相手の依頼に「No」を伝えることです。拒否することで、「嫌われるんじゃないか」「人間関係が悪くなってしまうのではないか」のような恐れを抱きます。
「みんな残業しているのに、私一人だけ……」のように、周りの人の目が気になって仕事を断れないケースもあります。集団意識がそうさせるのでしょう。村八分にされるのは怖いですよね。
信頼や信用、評価を失ってしまうのではないかという恐れを抱く人もいます。仕事に一生懸命取り組んでいる人や、役職や立場がある人ほどそうでしょう。
転勤や部署移動など、相手の依頼が働く環境を大きく変える場合は、「この依頼を断ったら、会社を辞めなくてはいけないのではないか」「給料が減ってしまうのではないか」のような、生活基盤や収入を失う恐れを抱くこともあります。
「プロだったら、○○すべき」「管理職だったら、○○しなければならない」のような、過剰なプロ意識やプライドが仕事を断らせないこともあります。プライドが傷つくことを恐れているのかもしれません。
「顧客との飲み会は絶対に参加すべき」「社会人なら上司に従うべき」「仕事とはそもそも大変なものだ」のような、仕事に対する思い込みが強くあると、「断る自分が悪いのだ」という罪悪感を抱きます。もちろん、何でもかんでも断った方がいい……とは思いませんが、「すべき」「ねばならない」は苦しいものです。
ワーカーホリックという言葉があるように、「常に忙しくしていないと不安」という人もいます。「プライベートよりも仕事優先」という価値観が、不安を抱かせるのかもしれません。
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