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» 2015年09月30日 05時00分 公開

リクルートの有名サイト事例に見る、シナリオベースABテストの基本的な考え方と改善プロセス、チーム体制ABテストによるUX改善のコツ大解剖(1)(2/2 ページ)

[松村草也, 反中望,リクルートテクノロジーズ]
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シナリオベースABテストの具体例

 それでは具体的に、シナリオベースABテストとはどのような施策なのか? 事例を紹介する。

事例1:画面遷移数を変える

 Webサービスを開いてから、希望の商品・物件を見つけるまでに通る画面のステップ数は、なるべく少ない方がユーザー体験としては好ましい。しかし、数万〜数十万の掲載アイテムの中から、真に希望に合った条件のものを見つけるに当たっては、適切な絞り込みが必要になる。Webサービス側で提供する検索機能・絞込機能は特に結婚式場や中古車を取り扱うWebサービスにおいては大げさになりがちである。

 このトレードオフに着目して、筆者たちは「カーセンサー」において、ユーザーの「検索条件セット段階」から「一覧画面閲覧段階」へ進むまでのステップについてABテストで検証を行った。

図3 画面遷移数を変更するシナリオベースABテスト

 上の図のテストでは、経路上のステップ数を減らすことでアクション率が改善した。

 このテストを通し比較することで、価格・地域・メーカー・車種、といった主要条件をどのように機能として組み合わることがユーザーの問い合わせやすさを極大にするのか知ることができた。

事例2:お気に入り機能について考える

 次は多くのWebサービスで見られる「お気に入り機能」の提供タイミングについての検証事例を紹介したい。一度気になった商品・物件をお気に入りリストにストックしておき、その中でさらに比較検討をした上で、問い合わせができるのがお気に入り機能だ。しかし、ここで筆者たちはユーザーに、【1】お気に入りに追加する【2】問い合わせを行うという二つのアクションを選択肢として提示している。

図4 アクション機能の最適配置を検証するシナリオベースABテスト

 どちらも、一覧画面や詳細画面で常に行えるように提示をするのか。それとも、導線の中における段階によって、使える機能を限定して提供した方がよいのか。この問題についても、ABテストを行うことで、各ケースにおけるユーザーのアクション数の違いを実測でき、最適な提供の仕方を判断することができた。

 以上、二つの事例を紹介した。これら導線を加味したABテストでは、一般的なデザイン変更のみにとどまるABテストに比べ、大きな改善インパクトを期待できる。次に、「具体的には、どのようなフローで実施するのか?」「そのためには、どのような組織設計が必要になるのか?」について論じたい。

シナリオベースABテストによるサービス改善PDCAプロセスの全体像

 ABテスト単位の具体的なフローは以下の通り。1つの案件として、ABテストを2週間に1回の頻度でリリースタイミングを設けて実施している。

図5 ABテストを用いたサービス改善プロセスの流れ

 上記の流れの中で特にABテストを実施する際に論点なのは、効果見立て、並行実施する際のテスト計画、およびモニタリングの際の評価・判断の部分だ。これらについては連載第2回で詳しく論じていきたい。

企画・設計・制作・開発が一体となった素早いチーム作り

 次に、どのようなチーム体制で推進していっているのかを紹介する。

 リクルートマーケティングパートナーズおよびリクルートテクノロジーズのUXなどのサービスデザインを担当する組織では、主に「MP」と呼ばれるメディアプロデューサー兼UXデザイナーと、制作を行うデザイナー、コーダーと開発を行うエンジニアの3つのロールが連携してUX改善プロジェクトを推進している。

 案件ごとに全てのロールが含まれるチームを編成しているが、固定のものではなく、案件の進捗(しんちょく)に応じて適宜体制が組み換えられ、より柔軟な対応を可能にしている。

 そうした変化に対応しながらも、確実に成果を出していくポイントとしては下記の3点が挙げられる。

  1. 施策の方針を決める場には、プロダクトに関わる全チームのメンバーが参加し、全員の目線を合わせる
  2. チーム全員が同一または近くの拠点に集まることで、柔軟なコミュニケーションを行える環境を整える
  3. 対面やメールの他、チャットツールなども活用することで、コミュニケーションの効率化を図る

 上記の体制で、約2週間のサイクルで並行して3〜5回ほど、というスピーディな意思決定・リリースサイクルを実現している。

次回は、ABテストの設計・開発・実施を繰り返す課題の解決方法

 以上、連載第1回では、筆者たちが行っているABテストの概念、プロセス、組織体制についてお伝えした。実はこのようなサイクルでABテストの設計・開発・実施を繰り返していく中で避けることができない問題がいくつかある。次回は、その解決方法についてお話ししたい。

筆者紹介

松村草也

2010年4月新卒入社。2011年より株式会社リクルートテクノロジーズのUXデザインGに所属。リクルートグループ横断でUI/UXの改善施策の推進やCRM施策の実施、DSPを利用した商品開発など、デジタルマーケティング領域を担当。現在は「カーセンサー」の「アダプティブUX」デザインを推進。

反中望

ユーザー心理分析をベースとしたデジタルマーケティングのコンサルタントを経て、2015年1月にリクルートテクノロジーズ入社。ユーザー理解に基づく成果創出に強みを持ち、現在は「ゼクシィ」「カーセンサー」で「アダプティブUX」デザインを推進。


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