以上、10組によるプレゼンテーションの終了後、審査員によって各賞が決定された。受賞作品は以下の通りである。なお、賞金として最優秀賞には100万円、各部門賞には20万円が贈られた。
各賞の発表後には、審査員による講評も行われた。今回のコンテストへの応募作全体に対しては、厳しい評価が多く、審査そのものも難航したという。「実際の受賞作も、審査員の評価としては他の作品との明確な差があったわけではない」と強調する。
評価が厳しくなった理由については審査員がそれぞれにコメントしたが、大きくは「プロトタイピング、作り込みの甘さ」「ベースとなるアイデアの弱さ」に集約されるようだ。例えば、ユーザーインターフェース(UI)に「スマートフォン」を選択している作品が非常に多かった点には、再考の余地があるのではないかという。
「今回の応募作でUIとして多く使われていたスマートフォンは、本当に『家』を操作するためのデバイスとして最適だろうか。家には、家なりの、より適したUIがあるのではないだろうか。また、スマートフォンで『文字』を使って家と『会話する』というアイデアも本当にベストなのだろうか。実際には自然言語よりもキーワードによる命令の方が使いやすいのではないか。この部分は、まだまだチャレンジできる分野だと感じている」(青木氏)
「皆さん、スマホを使い過ぎだと思う。家を交えて家族でチャットする作品も複数見受けられたが、『実際に、そのような使い方をする人がどのくらいいるのか』について、十分に考えられたのかどうか疑問を感じている。もちろん、そこにアイデアの目がないわけではない。そのアイデアについて、もっと深く考える必要があったのではないだろうか。HEMSを使って家をハックするというテーマに対して、もっと自由に考えてほしかった」(小笠原氏)
その中で最優秀賞を受賞した「hometalk」は、「家と会話するコンセプトに否定的な意見もある中、キャラクター立てされた家の存在は、使っている人を優しい気持ちにする意味で評価する意見もあった。今後、より完成度を上げて、住む人が優しい気持ちになれるプロダクトに仕上げていくことを期待したい」(小林氏)という観点で選出されたそうだ。
また、ベースとなるアイデアが弱い理由として「既存のルールを破っていない」ことや「今までの延長線上でアイデアを考えている」作品が多いことを指摘した審査員もいた。
「今回応募された作品は、どれもルールを破っておらず、イノベーションを感じなかった。イノベーションを生むためには『破っていいルールを破る』ことが必要。スマートハウスについて考える人には、それを見極める力を持ってほしい。そのためには、電気事業法などを含む既存のルールを徹底的に調べ、分析することも必要になるはずだ」(梅嶋氏)
「イノベーションは、連続性の中からは生まれづらい。特に、今回のようなコンテストであれば『こうあるものをこう変える』というよりも『こうだったらいい』という発想が欲しかった。家の中にある機器のセンサーはどんなデータを取得して、それによって生活がどう変わるのかについて、連続性の外で考えることが大切だと思う」(小笠原氏)
「家CON-2015」の実行委員長を務めた大和ハウス工業の西村氏は、応募作品への評価は厳しくなった一方、実際にコンテストを主催する立場として、気付いたことも多かったと総括した。
「もう少し募集開始からの時間が必要だったかもしれないと感じる部分はあった。応募した側にも、消化不良に感じた点はあったと思う。今後の改善点としたい。一方で、応募作には、いろんな立場、いろんな切り口からの提案があった。現状のHEMSの問題点として、ユーザーフレンドリーではないという観点からの提案が多かったことも事実だ。
HEMSを推進する立場で大切なのは『HEMSを使えば、こんなことができる』というアピールを効果的に行っていくこと。それをどう伝えれば、どのように分かってもらえるかを、引き続き考えていきたい」(西村氏)
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