SEの現実を分かりやすく解説する本連載。今回のテーマは「資格」です。SEに資格は必要なのでしょうか? @IT読者の「りある」な資格取得実数と共に解説します。
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皆さんこんにちは! 現役のSE(System Engineer システムエンジニア)兼ITライターの左門至峰(さもんしほう)です。
本連載「えんじにあ解体新書」は、SEに代表されるIT技術者の仕事内容、日常、喜び、やりがいなどを、学生の皆さんに分かりやすく紹介しています。前回は、女性SEの実態について、アンケートの結果を使って解説しました。
さて、学生と社会人の違いは、何でしょうか。
「(学校に)お金を払う」⇔「(会社から)お金をもらう」「学生の本分は『学ぶ』」⇔「社会人の本分は『働く』」などが浮かぶでしょう。でも、後者はちょっと違います。社会人になったら、「働く」+「学ぶ」なのです。
楽天の三木谷浩史社長は、著書「成功の法則92ヶ条(幻冬舎)」で、「人生一生勉強。全て勉強」と述べています。IT業界はドッグイヤーやマウスイヤーといわれるほど、進化が速い業界です。SEは勉強して当たり前、勉強しないと業界から取り残されてしまう可能性があるのです。
SEの勉強の成果を示す方法として「資格」があります。IT業界には、100を優に超える資格があるのです。これだけ多くの資格がある業界は、他にはありません。
そもそも、SEに資格は必要なのでしょうか? 弁護士や医師などと違い、資格がなくてもSE業務はできます。また、資格を持っていなくても優秀なSEはいますし、逆に資格を持っていて仕事ができないSEもたくさんいます。ですから、資格は必須ではないといえます。
しかし、私は資格は持っていた方が良いと思います。
それは、TVドラマ「水戸黄門」の「印籠」としての役割があるからです。資格があると、自分の知識・実力を瞬時に相手に示せるのです。「葵の紋所」が徳川一門であると瞬時に示せるのと同じです。
自分の実力を他人に示すのは、とても難しいことです。
例えば、あなたがセキュリティの知識を豊富に持っているエンジニアだとします。しかし、どれだけセキュリティに詳しいかを「客観的」に説明するのは難しく、上司や人事、転職時の面接官も、あなたの言うことをそう簡単には信じてくれないのです。
それを簡単に示す方法が「印籠」としての資格です。国家資格の「情報セキュリティスペシャリスト資格」を持っていれば、セキュリティに関してある程度の力があると瞬時に示せるのです。
資格は、黄門様の旅を支える「杖(つえ)」の役割もあります。実際には、日々の業務を支えるという点で、印籠よりも杖としての役割の方が多いかもしれません。資格取得の学習を通じて実力がつくので、知識・技術拡充のために資格を取るのです。
では、現役のエンジニアは資格をどのように捉えているのでしょうか。
2015年9月に@ITが読者に行ったアンケート調査の結果を見てみましょう。今現在IT関連の職種についている人「603人」のうち、技術系の資格を持っている人は「442人」。取得率は「73.3%」でした。18歳以上の日本国民の運転免許の取得率「77%」程度(※)と比べても、高い数字です。つまり、多くのSEが、資格の価値を認めているということではないでしょうか。
そして、IT資格に高い奨励金を出す会社がたくさんあります。先日開催した情報セキュリティスペシャリスト試験のセミナーの参加者は、半分以上が会社から報奨金をもらっていました。10万円、30万円という高額な報奨金を出す会社もありました。これは、高い報奨金を払ってでも従業員に資格を取ってもらいたい=資格には価値がある、という会社からのメッセージです。
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