SEには、正社員以外にも、契約期間だけ派遣元に雇用されて派遣先で働く「派遣社員」や、個人事業主として働く「フリーランス」といった働き方もあります。
職場での派遣社員は、見た目には正社員とあまり変わりません。ヘルプデスクやシステムの運用・保守業務を担当することもあれば、システム開発プロジェクトの一員としてプログラミングを担当することもあります。
給与は時給ベースで、働いた時間分が支払われ、もちろん残業代も出ます。交通費やボーナスは派遣会社や案件によって異なります。契約期間中は派遣元会社で社会保険に入ります。有給休暇も付与されます(※)。
表3は、リクルートスタッフィングが運営する「ITスタッフィング」掲載案件の職種ごとの時給平均値(※)です。
専門スキルが必要な職種ほど、時給が高いのが分かります。また、東京+横浜と、大阪では単価が1割程度違います。案件数も時給も首都圏有利というのは、どの業界も同じかもしれません。
フリーランスエンジニアも、職場では正社員と一見あまり変わりません。ただし、仕事内容が契約した業務のみであったり、物理エリアやネットワークにアクセス制限があるなど、正社員とは異なる部分もあります。これは、派遣社員も同様です。
仕事の受注は、エージェントに紹介されたり、顧客企業から直接、請け負ったりします。「月間160〜180時間基準で70万円。基準時間を超えたり下回ったりする分は基本報酬より差し引きする」といった契約をします。
個人事業主ですので、収入は給与ではなく成果物に対する「報酬」です。報酬の中から自分で社会保険を支払います。有給休暇はなく、交通費や通信費、消耗品などの経費や設備は自己負担、確定申告も自分で行います。
表4は、フリーランスSEの支援企業「PE−BANK」を通じて働いたフリーエンジニアの月額報酬分布です(※)。
月額50万円台、60万円台が多いことが分かります。大学卒の初任給が「20.2万円」(※)ですから、特に若手SEにとっては、魅力的に感じることでしょう。
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構が発表した「IT人材白書2016」には、「IT技術者の新しい働き方『フリーランス』」として、丸々1章を使ってフリーランスエンジニアの働き方や人物像が記載されています。
フリーランスになった理由や目的の1位は「自分のライフプランに合わせるため」、2位は「収入を増やすため」でした。実力さえあれば、正社員よりも高い収入を得られるのがフリーランスなのです。こういう働き方ができるのは、SEの仕事が「技術がある専門職」だからでしょう。
ただし、フリーランスには幾つかの注意点があります。例えば、先に書いたように社会保険やもろもろの経費は全て自分で支払わなければいけません。また、フリーランスは技術力を含めた「実力」が必要ですし、仕事を取ってくる「営業力」や「人脈」も必要です。新卒や若手SEが簡単に稼げるわけではありません。
今回は、誰もが気になるSEの収入を解説しました。実際は人それぞれですが、平均値としては魅力的と感じていただけたのではないかと思います。ただし、冒頭でも述べましたが、「仕事はお金(だけ)じゃない」のです。収入も大事ですが、お金に惑わされない仕事をしたいものです。
この連載は、今回が最終回です。「りある」というタイトルですから、SEの仕事のやや厳しい現実も書いてきました。ですが、「SEは天職」と言う人もいるように、自分の技術を生かせ、システムが出来上がった達成感を味わえ、お客さまから喜ばれる仕事です。就活生の皆さんが「SE」を将来の選択肢に加えてくださるとうれしいです。
読者の皆さんに支えられ、予定回数よりも多く連載できましたこと、お礼申し上げます。ありがとうございました。
現役のSE(システムエンジニア)兼ITライター。
技術士(情報工学)やネットワークスペシャリストなどのIT資格を多数保有。著書に「どこかで見た・聞いた・体験した!SEあるある四方山話〜SE100人に聞いた今どきのSEの生態」(技術評論社)、ネットワークスペシャリスト試験対策の「ネスペ」シリーズ(技術評論社)、情報セキュリティスペシャリスト試験対策の「セスぺ」シリーズ(日経BP社)など多数。
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