イメージや動画の解析技術を提供し、シンガポールの犯罪減少に寄与するソフトウェアを開発しているテクノロジー企業の代表が常に持ち続けている“純情”な想いとは――。 ※日本のエンジニアへのアドバイス動画付き
アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広が、グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うインタビューシリーズ。第14回はAIを活用した画像、動画認識技術を提供する「Graymatics」のCEO、Abhijit Shanbhag(アビジット・シャンハー)氏に登場いただく。
エンジニア出身のアビジットさんが起業をした理由、そして「芯」に持ち続けているものに、読者の皆さんも必ずや共感するだろう。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 今日はお時間いただき、ありがとうございます。
Abhijit Shanbhag(アビジット・シャンハー:以降、アビジットさん) コンニチハ! お会いできてうれしく思います。私のことはアビジットと呼んでください。
阿部川 Graymatisのサービスについてお聞かせください。
アビジットさん 現代は、1日に260億枚以上の写真と10億秒以上の映像がネット上にアップされているといいます。検索エンジンやビッグデータの視点で見れば、この膨大な情報を無視することはできません。
しかし今分析対象になっているのは、ほとんどがテキスト情報で、映像分析はまだまだです。Graymaticsはこの膨大なイメージやビデオを細部までピクセルレベルで解析し、テキストと同じようにデータ化する技術を提供しています。
例えば、このインタビューを行っている場所は、会議室のような部屋で、インタビュアーのGoさんは男性で、年齢は幾つぐらいかとか。さらに表情から判断して感情まで解析していきます。腕時計はどのようなデザインで、どこの製品かといった細部まで分かりますよ。
阿部川 素晴らしいですね。どのような仕組みになっているのですか?
アビジットさん アルゴリズムの多くは「人間はどのような経路をたどって思考しているのか」を模倣しています。人は視覚から実にたくさんの情報を取り出しています。それをまねして、さらに最新のディープラーニングの理論や技術を用いて、幾つかのパターンを想定しました。知的所有権も保有しています。
2011年に開発し、その後全てのデータを蓄積、分析しています。現在はGraymaticsで解析したイメージやビデオのデータが、消費者市場の新しい知識を発見するツールになっています。インターネット上のどのイメージが頻繁にアクサスされたりクリックされたりしたのか、ユーザーの目が何にくぎ付けになったのかも分かります。
阿部川 シンガポールの首相官邸からも出資を受けているそうですね。
アビジットさん ええ。シンガポール政府から依頼を受けて、内務省向けのソフトウェアプラットフォームを開発しています。
シンガポールには多くの場所にさまざまな「CCVT(closed-circut-television 閉鎖回路テレビ、映像監視システムのこと)」があります。それらで集めた多くの映像データから不審人物を特定し、政府機関に警告を出すというシステムが間もなく稼働します。シンガポールはもともと安全な国ですが、このソフトウェアが稼働すれば、より安全な国になると思います。
阿部川 テキストに特化して解析する企業や、単純に映像のみを探し出すサービスを提供する企業はありますが、ビッグデータやソーシャルアプリケーションまで含めて、統合的に解析サービスを提供しているのは独自性がありますね。
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