ドイツ、イギリス、シンガポール、サウジアラビア――さまざまな国で働いてきた女性コンサルタントがアドバイスする、新しい物事との良き接し方とは? ※「大切なのは、今やっている仕事を心から楽しむこと」〜ペレイラ氏の動画付き
アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広が、グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うインタビューシリーズ。第16回は「KPIsoft」のSandra Pereira(サンドラ・ペレイラ)さんにご登場いただく。
KPIsoftは、アジアを拠点にグローバル展開するAaaS(Application as a Service)ベンダーで、売り上げ、利益、製造コストやマーケットシェアといった企業経営に欠かせない指標である「KPI(Key Performace Indicator)」データをクラウド上に集約するシステム「KPIsoft」を提供している。
製品名を企業名にしたのは、社名を聞けばその製品がイメージされることを狙ってのことだとか。特に注目を集めているのが、このソフトが従業員一人一人のパフォーマンスレビューを容易にする点だ。個人の成長と企業業績の改善を分かりやすく示す、これまでにないパフォーマンスマネジメントソフトとして大手IT企業にも導入されているという。
CEOを務めるペレイラさんはドイツ出身。医師からコンサルタントへ転身した異色の経歴を持つ彼女が、グローバルにキャリアを積み上げていく中で常に大切にしてきたものとは……?
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) お生まれはフランクフルトでいらっしゃいますね? ゲーテ大学では何をご専攻でしたか?
Sandra Pereira(サンドラ・ペレイラ:以降、ペレイラ氏) 小児科の医師(M.D.:Doctor of Medicine)です。人の命に直接触れたことによって、人間中心の考え方になったのだと思います。実際に臨床医として3年勤務しました。
阿部川 そしてマッキンゼーにお移りになったと……。ずいぶん違った道をお選びになったように思いますが、何があったのですか(笑)
ペレイラ氏 いつも聞かれます、一体全体どうして医者だった人がコンサルタントになったのかと(笑)。
実はマッキンゼー社員の40%はさまざまなバックグランドを持ったコンサルタントの集まりなのですよ。マッキンゼーはチームの多様性を大切にしている企業で、私のような経歴の人間を必要としたのはまさにその多様性を具現化したかったからでしょう。私自身も病院の医師からビジネスコンサルタントの世界に飛び込んだことで、個々人が違っていることが互いの能力を引き上げ、チームとしての強みを生み出すことを知りました。
阿部川 そもそも、なぜビジネスの世界へ転身したいと思われたのですか?
ペレイラ氏 きっかけは大学時代の経験です。ある時、勤務していた小児科病棟に保険会社によって「KPI(※)」というものが導入されました。病院の使命は患者の病気を治すことなのに、いきなり財務上の目標が降ってきたのです。病院長はそのような視点で病院を運営したことがなかったので、とても戸惑っていました。
阿部川 病院といえども組織ですからね。経営する必要がある。
ペレイラ氏 ええ。病院経営の当事者は「医師」と「患者」と「保険会社」なのですが、医師はまったく財務的なことには関知しません。保険会社が運営に関わるのです。
KPIが導入されたことで、それまで患者を中心に病院を運営してきたのに、「この部署や治療は予算の範囲内かどうか」が焦点となる。そのためにどれほど大切な決断が先送りにされ、また理不尽な決定がなされたか分かりません。
財務の知識だけでは当然患者を診ることはできません。かといって財務的な制約があれば患者にしわ寄せが来る。「患者を診ること」と「病院を経営すること」の2つをバランスよく行う方法がどこかにあるはずだと考えていた時に、「コンサルタントとしてやってみないか」という話をいただいて。マッキンゼーが私の探究心に火をつけてくれました。
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