「パチン」と切りかえられない感情のコントロールについて、専門家はどのように考えているのでしょうか。
心理学博士ダニエル・ゴールマンは、著書『EQこころの知能指数』(講談社)の中で、次のように書いています。
脳の構造からいって、情動が生起するタイミングや内容をコントロールすることはほとんど不可能だ。ただし、情動の持続時間はコントロールできる。日常的な悲しみや不安や怒りは、問題ない。時間がたてば、解決するものだ。けれども、そのような感情が非常に強くなり、長時間続くと、やがては神経症的な不安、制御不能な怒り、あるいは抑うつ症状など、病的な状況へと変化しはじめる。症状が非常に重くなってしまうと、それを治すには薬物療法や心理療法が必要になる。
脳の構造からして、感情が発生する「タイミング」や「内容」を「パチン」と切りかえるのは、難しそうです。
もう1つ、脳の特徴と言葉の認知について見てみましょう。
冒頭の「無感情になれるスイッチが欲しい」「嫌なことがあったので感情スイッチをオフ」というつぶやきにあるように、嫌な気分になったときの感情コントロールの方法は「感じないようにしよう」「考えないようにしよう」とするのが一般的です。
この「○○しないようにしよう」=つまり「否定語」について、加藤聖龍書『手に取るようにNLPが分かる本』(かんき出版)に、次のような記述があります(※)。
私たちの脳は「否定形」を理解できません。イメージできませんという表現の方が適切かもしれません。「白とピンクのパンダを想像しないでください」と言われても、脳は勝手に反応して「白とピンクのパンダ」を想像してしまいます。ですから、「○○しちゃだめ」や「××はよくない」という表現で強く脳に刻まれるのは、○○や××の部分なのです。
確かに「○○するな」といわれると、「○○する」に意識が向きます。ダイエットしているときに「食べないようにしよう」と思うと、ますます食べたくなるように。ダチョウ倶楽部の「押すなよ! 絶対に押すなよ!」もそうです。「押せ!」と言われているように感じます。
つまり、「感じないようにしよう」「考えないようにしよう」とすればするほど、「感じる」「考える」に意識が向いてしまうということではないでしょうか。実際、「感じないようにしよう」とすればするほど、モヤモヤした気分がよみがえってくるし、「考えないようにしよう」とすればするほど、思い出してしまいます。
ありませんか? そういう経験。
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