「この研修では、経験豊富な講師のお話を聞いて、後日レポートを出すというものです」――文の途中で断りなしに主語や主題を変えると、読み手は戸惑ってしまいます。なるべく同じ主語で貫くようにし、主語を変えたいときにはそれを明示します。
「エンジニアのための文章力養成講座」は、書籍「文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント」(阿部紘久著 日本実業出版社)を基に、出版社と筆者の許可を得て、@IT読者向けに再構成したものです
「要件定義書」「提案依頼書」「テスト仕様書」――エンジニアは業務でさまざまな文章を書きます。しかし、文章力が足りないと、無駄なことをたくさん書いてしまったり、考えているのとは違うことを書いてしまったり、頭の中にあった大事なことを書きもらしてしまったりしがちです。
連載「エンジニアのための文章力養成講座」、第4回も「主語」にまつわる文章力を鍛えます。文章力を身に付けて、より良いエンジニアライフを送りましょう。
企業の研修でエンジニアが自分の意見を堂々と主張する機会を設け、国際的に通用する人間に育ってほしい。
企業の研修でエンジニアが自分の意見を堂々と主張する機会を設け、国際的に通用する人間を育ててほしい。
間違い文の主語は、前半が「企業」で、後半が「エンジニア」です。正しい文章は、主語を「企業」で一貫させました。
私はオープンソースプロジェクトで活動していて、世界中にメンバーのいる伝統あるプロジェクトだ。
私はオープンソースプロジェクトで活動している。そのプロジェクトは伝統があり、世界中にメンバーがいる。
間違いの文章は、「私は」という主語で始まった文が、いつの間にか「そのプロジェクトは」という主語に変わっていました。新しい主語を明示するとともに、文も分けると明快になります。
イタリア(のカフェテラス)では会話が大事だから、ほとんどの椅子が街路側に向けて並べられ、道行く人と視線のやりとりを楽しむフランスのような気取りはない。
これは主語と言うより主題の話です。
イタリアの話だと思って読んでいると、すぐにフランスの話に変わっていたことに2行目後半になってから気が付きます。しかも、最後にまたイタリアに戻っています。
フランス(のカフェテラス)ではほとんどの椅子が街路側に向けて並べられ、道行く人と視線のやりとりを楽しむが、イタリアでは友人同士の会話が大事だから、そのような気取りはない。
話の順番を「フランス→イタリア」に整理し、その国名を最初に示しました。こうすれば読むそばからスラスラ分かる文章になります。
連載「エンジニアのための文章力養成講座」は毎週木曜日掲載です。次回(7月13日掲載)は、「述語」の使い方を鍛えます。
文章力を伸ばす
書くことが、これでとても楽になる81のポイント
阿部紘久著 日本実業出版社 1404円(税込み)
文章力を磨くとは、考える力を磨くこと。「書く力は、考える力そのもの」「受け手発想で書く」「意味の狭い言葉を使う」「長文を書くポイント」など、文章を書くときに大事なことだけれど、なかなか教わることがない81のポイントを、多くの文例と共に分かりやすく解説する。
阿部紘久
エッセイスト(元国際ビジネスマン)
帝人、米国系企業CEOを経て、2005年から昭和女子大学ライティング・サポートセンターで文章指導を行う。社会人も指導している。
主な著書に『文章力の基本』(日本実業出版社)、『文章力の基本100題』(光文社)、『シンプルに書く! 伝わる文章術』(飛鳥新社)などがある。
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