サーバレスコンピューティングとは何か、その典型的ユースケースとは【完訳】CNCF Serverless Whitepaper v1.0(1)(1/4 ページ)

注目が集まるサーバレスコンピューティング。本連載では、その概要とユースケース、コンテナオーケストレーションやPaaSとの使い分け方などを分かりやすく解説した、Cloud Native Computing Foundationのホワイトペーパーを完訳してお届けする。第1回は、「サーバレス」の意味と典型的なユースケースに関する部分を掲載する。

» 2018年02月28日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

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 「サーバレスコンピューティング(サーバレス)」が急速に注目を浴びる存在となってきた。Amazon Web Servicesの「AWS Lambda」に続き、Microsoft Azure、Google Cloud Platform、IBM Cloudと主要パブリッククラウドサービスの全てがサーバレスのサービスを展開。一方、IBMのコントリビューションしたコードに基づくオープンソースプロジェクト「Apache OpenWhisk」をはじめ、サーバレスを実現するソフトウェアが多数登場している。だが、「サーバレス」の正確な定義を聞かれると、返答に困る現状がある。

 こうした中、コンテナオーケストレーションツールのKubernetesに始まり、各種のクラウドネイティブアプリケーション開発/運用に関連する技術やツールのナビゲーター的存在となりつつある団体、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)のServerless Working Groupが、サーバレスを解説したホワイトペーパー、「CNCF Serverless Whitepaper v1.0」を2018年2月中旬に公開した。

 このホワイトペーパーは、サーバレスの基本的な意味に始まり、典型的なユースケース、PaaSやコンテナオーケストレーション(あるいはCaaS)との比較および使い分け、詳細な技術解説までをカバー。特にPaaS、コンテナオーケストレーション、サーバレスという3種のクラウドネイティブアプリケーションプラットフォーム技術のそれぞれの利点、欠点および使い分けについての記述は、幅広い読者にとって参考になると考えられる。

 そこで、CNCFの承諾を得て、このホワイトペーパーを完全に翻訳し、計5回の連載としてお届けする。原文に対する改変は、読みやすさのための少数の例外を除き、加えていない(翻訳・構成:三木泉)。

 本連載では、ホワイトペーパーを5つに分割して掲載する。構成は次の通り。

第1回 サーバレスコンピューティングとは何か、その典型的ユースケースとは(本記事)
第2回 サーバレス、CaaS、PaaS――それぞれの利点と欠点
第3回 サーバレス、CaaS、PaaSをどう使い分けるか
第4回 サーバレスアーキテクチャを詳しく知る
第5回 サーバレスの利用に関するレコメンデーション

 なお、「サーバレスコンピューティング」あるいは「サーバレス」という呼称が適切かどうかについては、2018年2月時点で、業界内では異論がある。「言葉が曖昧すぎる」「サーバ機が不要という誤ったイメージを与える」などの理由からだ。そうした考えを持つ人たちの一部は、「FaaS(Functions as a Service)」という言葉を好んで使う。

 CNCFのServerless Working Groupは、ホワイトペーパー内で示されている通り、「サーバレス」という呼称を、「FaaS、およびAPIサービスとして提供されるBaaSの双方あるいは一方を意味する言葉」として使うことに決めたようだ。この考え方に従うと、AWS Lambdaのようなサービスは「サーバレス」「FaaS」のどちらの言葉を使って形容しても不適切ではないということになる。

CNCF サーバレスホワイトペーパーv1.0

 本稿では、台頭しつつある「サーバレス」アーキテクチャと、これをサポートするプラットフォームによって実現される、クラウドネイティブコンピューティングの新しいモデルについて説明します。まず、サーバレスコンピューティングの概要と、サーバレスコンピューティングの成功事例を紹介し、サーバレスコンピューティングがどのように他のクラウドアプリケーション開発モデル、すなわちInfrastructure as a Service(IaaS)、Platform as a Service(PaaS)、コンテナオーケストレーションあるいはContainers as a Service(CaaS)と異なり、あるいは関連するのかを紹介します。

 このペーパーには、関連するプログラミングモデルとメッセージフォーマットを備えた、一般的なサーバレスプラットフォームの仕組みについての論理的な説明が含まれていますが、標準を規定しようとするものではありません。業界における、幾つかのサーバレスプラットフォームとその機能を紹介していますが、特定の実装を推奨するものでもありません。

 末尾には、クラウドネイティブコンピューティングのためのサーバレスコンピューティング利用の進め方に関する、CNCFによる推奨事項を掲載します。

WGチェア/TOCスポンサー:ケン・オーウェンズ(Mastercard)

著者(姓のアルファベット順):

サラ・アレン(Google)、クリス・アニズィック(CNCF)、チャド・アリムラ(Oracle)、ベン・ブラウニング(Red Hat)、リー・カルコート(SolarWinds)、アミール・ショードリー(Docker)、ダグ・デイビス(IBM)、ルイ・フーリー(Huawei)、アントニオ・グリ(Google)、ヤロン・ハビブ(iguazio)、ダニエル・クルック(IBM)、オリット・ニッサンメッシング(iguazio)、クリス・ムンズ(AWS)、ケン・オーウェンズ(Mastercard)、マーク・ピーク(VMware)、キャシー・チャン(Huawei)

他の貢献者(姓のアルファベット順):

カリーム・アミン(Clay Labs)、アミール・ショードリー(Docker)、サラ・コンウェイ(Linux Foundation)、ザック・コーレイセン(Linux Foundation)、アレックス・エリス(VMware)、ブライアン・グラント(Google)、ローレンス・ヘクト(The New Stack)、ロフィ・リュー、ダイアン・ミューラー(Red Hat)、バトリット・パト、ピーター・スバルスキー(クラウド・グル)、ペン・ツァオ(Hyper)

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