データサイエンティストの採用で使われている3つのスキルセットや、人材育成のためのインターンシップと各スキルの育て方、データサイエンティストが満足する職場環境や評価制度などについての意見が聞き出された、データサイエンティスト協会主催セミナーのパネルディスカッション内容を紹介する。
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2018年6月12日(火)、「データサイエンティスト協会 調査・研究委員会セミナー」が開催された。データサイエンティスト協会 調査・研究委員会では「データサイエンティスト市場の“需要と供給のミスマッチ”の解消」をメインテーマに調査・研究活動を行っているとのことで、今回これを目的としたセミナーである。
セッションは、下記の3つだった。
登壇者のプロフィールについては、TECH PLAY上のイベントページを参照してほしい。
本稿ではパネルディスカッションの内容についてまとめる。発言は口語調で記述した。最後に質疑応答があったが、より適切な位置に各質疑応答内容を移動させている。
※注意点として、あくまで筆者なりの解釈で会話を短くまとめており、音声の録音もしなかったので発言内容を再チェックできていない。認識違いなどがある可能性もあるので、その点はあらかじめご了承いただきたい(以下、敬称略)。
濱中 自己紹介をお願いします。
斉藤 パーソルキャリア(PERSOL CAREER、旧インテリジェンス)は人材支援サービスの会社で、私はそのデータソリューション部のマネージャーをしています。ただしIT戦略や組織変革などをやってきた人間なので、データサイエンスや機械学習にそれほど詳しいわけではありません。
佐々木 インテージ(INTAGE)は小売店パネルなどを提供(例えばビール缶などに記載されている「売り上げNo.1」などのデータソースを提供)する市場調査の会社です。最近は、そういったデータ販売だけでなく、データ解析のニーズが高まってきていて、今はデータ解析業務も行っています。
倉田 それでは最初のテーマです。データサイエンティストに活躍してもらうためには、企業側から見ると、人材の採用や育成は重要な課題です。このあたり、各パネリストの会社ではどうしているのでしょうか?
斉藤 パーソルキャリアの採用プランとしては、現在、20名のところを40名にしたいと思っています。データの活用をスピーディに行うためです。
採用基準として、データサイエンス協会が提唱する「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」という3つのスキルセットを使っています。これらのスキル領域ごとに人材を割り当てられるように採用しています。
佐々木 インテージは今はおおむね25名前後ですが、ニーズが高まってきているので、これからさらに増やす予定です。
中途採用においては、やはり3つのスキルセットを採用基準としています。ちなみに、エンジニアリングだけはデータサイエンティストとは別の部署に分けています。
新卒については、インターンシップで体験入社を受け入れて、それぞれに社員がついて実業務の中で体験してもらっています。実際、インターンシップの後、インテージの採用試験を受けてくれる人は多いです。
会場質問 3つのスキルセットは、一般のデータサイエンティストに、どのくらい浸透しているのでしょうか?
斉藤 3つのスキルセットについては、パーソルキャリアに面接に来る8割方の人は知っています。残り2割の知らない人については基本的に不採用にしています。
佐々木 インテージに面接に来る半分以上の人は知っていますね。ただし、その言葉・概念を知らなくても必要なスキルセットを持っていることはあり得ますよね。だから実際のスキルセットを見る面接をしています。
会場質問 3つのスキルセットのうち、どのスキルを持つ人が多いのでしょうか?
斉藤 データサイエンス力の高い人もたまに来ますが、テクノロジが好きでエンジニアリング力が強い人が面接に来ることが多いですね。
佐々木 わたしたちのところはデータサイエンス力のある人が多いです。だからこそ逆に、ビジネス力がどれくらいあるかも見ています。
濱中 3つのスキルセットのうち、実業務ではどれを伸ばせばよいのでしょうか?
佐々木 インテージでは、本人や周りが見て足りないスキルがあれば、それを伸ばすことをしています。
斉藤 パーソルキャリアでは、データの分析・解析をする人材がまだまだ不足しているので、「データサイエンス力」がある人を求めています。これからは「ビジネス力」も高い人がより重要だと思っています。
濱中 確かに。会社を成長させて給料を伸ばすためにも、「データサイエンス力」だけでなく「ビジネス力」も伸ばす必要がありますよね。
会場質問 入社後、3つのスキルセットの力は、どうやって育てているのでしょうか?
斉藤 外部研修とOJT(On-the-Job Training)で育てています。社外研修として書籍やKaggleへの参加も有効ですね。
佐々木 まずはOJT。自分が強い分野についての情報共有会のようなことを社内でやっています。あと、データサイエンスでPythonを使うケースが増えてきているので、「手の空いている人は、Pythonで遊ぶべし」ということをやって、遊んで学んだことをチーム内で共有しています。
倉田 どういった職場環境や評価制度があれば、データサイエンティストは満足するのでしょうか?
斉藤 人事部の調査によると、「パーソルキャリアの環境や制度に対する社員の満足度は高い」という結果が出ています。満足度を高めるために工夫しているのは、新しい技術や論文への興味が高い社員が多いので、そういったものにアクセスできるようにするなど、何かをやりたいメンバーが能動的に動ける職場環境にしています。こうすることによって結果的に、パフォーマンスも上がっているのではないかと思います。
また、評価制度については、ビジネスのリーダー、データサイエンスのリーダー、エンジニアリングのリーダー、そしてプレイングマネージャーである私で、総合的に評価することで、評価の妥当性と信頼性を高めるようにしています。
佐々木 インテージでは、そもそも「データサイエンスが好きだからやっている」という人ばかりですが、データサイエンスの性質からしても、学ぶ活動に積極的な人が多いです。そこで、お互いに学び合える職場環境にしたり、書籍の購入やセミナーへの参加も業務の一環として認めたりするなど、さまざまな対策をしています。。
また、評価制度については、「やった“成果”をきちんと評価に取り入れるべきだ」と考えており、具体的には「顧客の満足度」を評価基準の一つとして採用しています。
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