先日、知人から「IT企業からリストラされたAさん」の話を聞きました。
Aさんはエンジニアではなく、バックオフィスの仕事をしていたそうです。バックオフィスとは、人事や経理、総務、労務など、本業のメインではありませんが、業務を間接的に支える、なくてはならない存在です。
Aさんは、仕事に一生懸命取り組んでいました。しかし、ある日上司から呼ばれて、リストラを告げられたそうなのです。
リストラとは、企業の業績が悪かったり、成長分野へ進出したりする際に、不採算部門の整理や業態の再構築を図ること。業績不振の企業が、体制を整えるために人員を整理するニュースはよく耳にします。
Aさんはなぜ、リストラの対象に選ばれてしまったのでしょうか。知人は「会社が求める人物像と、Aさんの努力の方向性が違ったようだ」と言います。
最後に、知人はこう言いました。「AさんはAさんなりに、一生懸命仕事をしてきたはず。でも、『なぜ、リストラされたのか』に気が付いていないんじゃないかと思います。次の仕事も『頑張らなければ、またクビになる』というスタンスで働いていたら、同じ結果になってしまうのではないかと心配です。でも、もう会社にいないので伝えることもできません」
冒頭の野球部マネジャーのお話、実は、Aさんのリストラを分かりやすく説明するために、知人が話してくれたたとえ話です。「Aさんはまるで、『ありがとう』という言葉を聞きたくて、ボールを一生懸命磨いている野球部のマネジャーのようだった」と。
甲子園に行けなかったのは、X子ちゃんでした。X子ちゃんはなぜ、甲子園に行けなかったのでしょうか。X子ちゃんと、Y子ちゃんの違いをまとめてみます。
X子ちゃんもY子ちゃんも、「マネジャーの仕事を一生懸命する」は同じです。しかし、チームの一員としての「目標に対する意識」や「行動の動機」が違いました。
リストラにあったAさんは、目の前の仕事には一生懸命取り組むけれど、会社が向かおうとしている方向や、「なぜ、それをするのか」という目的意識は薄かったそうです。
でも、このような意識で仕事をしている方は、ひょっとしたら多いのかもしれません。
例えば、新入社員時代や社会人経験が浅いときは、「何のためにこの仕事をしているのか」「会社はどこに向かおうとしているのか」といったことにまで、それほど意識が向かないものです。それよりもまず「目の前の仕事を覚える」――そういう時期もあります。
社会人経験を積んでも、「仕事のかじを取るのはマネジメントの仕事で、自分は関係ない」「直接の担当じゃない」「正社員じゃない」などの理由で、会社が向かおうとしている方向性にまで関心がない人も多いはずです。
というより、私自身がそうでした。若い頃は会社の理念や方向性になど全く関心がありませんでしたし、エンジニア時代も、興味があるのは「いかに美しいコードを書くか」「ずっとエンジニアでいるためにはどうすればいいか」など、自分のことばかりでしたから。
しかし、一生懸命仕事に取り組んでいるのに、会社やチームが向かっている方向とずれているために、努力が評価されない。そもそも、それにも気付いていないとしたら……不幸です。
ある程度経験を重ねてきたら、目の前の仕事を一生懸命こなすことも大切ですが、「何のためにこの仕事をするのか」「会社はどこに向かおうとしているのか」といった仕事の目的や周囲の期待、会社の方向性を理解した方が、努力の結果が会社の方向性と一致しやすいし、周りからの評価も高くなるのではないでしょうか。
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