2019年3月からプレビュー提供されていた「Windows Virtual Desktop」サービスの一般提供が2019年10月1日(日本時間)から始まりました。Windows Virtual Desktopは、2020年1月14日に迫っているWindows 7のサポート終了対策としても注目されています。9月末に新バージョンが提供された「Azure Storage Explorer」についても紹介します。
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2019年10月1日(日本時間)、「Windows 7」のデスクトップやマルチセッションの「Windows 10 Enterprise」(Windows 10 Enterprise for Virtual Desktops)をサポートするとして、以前から注目されていた「Windows Virtual Desktop」が全世界の地域(東日本、西日本リージョンを含む)で一般提供されたことが発表されました。
Windows Virtual Desktopは、WindowsデスクトップOSまたはWindows Serverのリモートデスクトップサービス(RDS)のスケーラブルな仮想デスクトップ環境を、Microsoft Azureのクラウド上に簡単に展開および管理することができるDesktop as a Service(サービスとしてのデスクトップ、DaaS)です。Windows Virtual Desktopには、主に次のような特徴があります。
「Windows 7向け拡張セキュリティ更新プログラム」(Extended Security Updates、ESU)は、2020年1月14日のWindows 7の延長サポート終了後も最大3年間、深刻度「緊急(Critical)」および「重要(Important)」レベルのセキュリティ問題を修正する更新プログラムを有料で提供する1年単位の契約です。Windows Virtual DesktopにWindows 7の個人用デスクトップまたはデスクトッププールを展開した場合、ESUの更新プログラムが追加コストなしで提供されます。
Windows Virtual Desktopにサービス固有の料金設定はありませんが、WindowsデスクトップやRDSのデスクトップまたはアプリにアクセスするには、アクセス先の種類に応じて、有効なWindowsやMicrosoft 365、RDS CALライセンスを所有していることが前提となります。なお、デスクトップやアプリを利用するユーザーによって使用されたAzure仮想マシンおよびAzureストレージに対しての支払いは必要です。
Windows Virtual DesktopでWindows ServerのRDSのセッションにアクセスするためには、以下のライセンスが必要になります。
なお、「Windows Virtual Desktopの価格」ページには「無料で試す」というボタンがありますが、これは「Azure無料アカウント」へ誘導するものであり、上記の前提ライセンスなしでWindows Virtual Desktopのサービスを無料で試用できるわけではありません。
既に前提ライセンスを所有しているなら、Windows Virtual Desktopを追加コストなしですぐに評価することができます。実運用環境のためのカスタマイズをさまざま評価して、最適な環境を調整しながら段階的に利用を拡大していくとよいでしょう。
Windows Virtual Desktopへのアクセスに必要なライセンスをまだ持っていない場合、Windows Virtual Desktopを導入するためには、ライセンスの契約が必要になります。Windows Virtual Desktopの機能や使用リソースに対するコストが、ライセンス購入のための投資コストに見合うものかどうかを判断するためにも、サービスを評価する前の段階での情報収集が重要です。
Windows Virtual Desktopは簡単に素早く展開できると説明しましたが、他のAzureサービスと比べると難解な部分があります。サービスを展開する前に、以下の公式ドキュメントを参照して必要な作業を事前に把握しておくことをお勧めします。
Windows Virtual Desktopは、主に次のような流れで環境を構築するのですが、幾つかの場面でPowerShellによる操作も必要です。
Windows 7のデスクトップを展開したり、日本語のOS環境およびアプリ(Office 365 ProPlusやその他のアプリ)をサポートしたりするためには、マスターVHDを準備してAzureにアップロードして使用することになります(Azure MarketplaceのイメージをAzure仮想マシン上でカスタマイズして使用することも可能)。
Azure Marketplaceイメージとしては、Windows 10 Enterpriseマルチセッション、Office 365 ProPlusを含むWindows 10 Enterpriseマルチセッション、シングルセッションのWindows 10 Enterprise、Windows Server 2016 Datacenter(RDS用)が用意されていますが、これらは全て英語環境です(画面1)。
公式ドキュメントの他に参考になるものとして、オンライン学習サービスである「Microsoft Learn」の以下のAzureラーニングパスをお勧めします(画面2)。このラーニングパスを受講すると、Windows Virtual Desktopの概要から準備、デスクトップやアプリの展開までを効率よく学ぶことができます(注:Azureポータルのサービスを作成する場面のユーザーインタフェースは少し古く、現在のものとは異なります)。
「Azure Storage Explorer」は、Microsoftが無料提供するWindows、macOS、Linux向けのスタンドアロンアプリであり、Azureストレージ(BLOB、ファイル、キュー、テーブル)、Azure Cosmos DB、Azure Data Lake Storageに対して、簡単な操作でアップロード、ダウンロード、管理操作を可能にします。
2019年9月27日(日本時間)に発表された新バージョン1.10.0(以降)では、Azure仮想マシンの管理ディスク(Managed Disks)が新たにサポートされました。
Azure Storage Explorerを利用することで、オンプレミスで準備したマスターVHDのアップロードや、Azureアカウント間のVHDのコピーが簡単になります(画面3)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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