Googleは、「Google Cloud Platform」で提供するIaaS「Compute Engine」について、新タイプのリソースである「マシンイメージ」(β版)を発表した。管理作業を効率化できる他、複数のディスクを利用していてもクラッシュ整合性を確保しやすい。このような特徴から、従来の「カスタムイメージ」と比較してより包括的なソリューションだと位置付けた。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
Googleは2020年3月10日(米国時間)、「Google Cloud Platform(GCP)」で提供するIaaS「Compute Engine」について、新タイプのリソースである「マシンイメージ」(β版)を発表した。
マシンイメージは、仮想マシン(VM)の作成やバックアップ、リストアに必要な全ての情報を含むリソース。マシンイメージを採用すると、環境の管理に必要な時間を短縮できる。
Compute Engineで動作するアプリケーションを管理する場合、新しいインスタンスの作成に使うイメージの構築に多大な時間を費やす場合が多い。Compute Engineでは「カスタムイメージ」などの機能を既に提供しており、ディスクデータのような必要なデータを取得できるようにしてきた。
だが、新しいVMを作成するためのインスタンスの構成やメタデータを管理者が手動で取得する必要があった。今回のマシンイメージを使うとこうしたステップが不要になり、運用を効率化できる。
GoogleはCompute Engineでこれまで「カスタムイメージ」「永続ディスクスナップショット」「インスタンステンプレート」といった機能を提供してきた。
次の表から分かるようにマシンイメージは他の3つのリソースと比較して、ディスクバックアップと、インスタンスのクローニング、レプリケーションというユースケースに適している。
カスタムイメージはシングルディスクの内容、例えば起動ディスクの内容を取得できる。カスタムイメージを利用すると、必要なアプリケーションとともに事前に構成済みの新しいインスタンスを作成できるため、公開イメージを一から構成しなくてもよい。
マシンイメージはカスタムイメージと比べると、より包括的なリソースであり、複数のディスクや新しいインスタンスの取得、作成に必要な全ての情報を含む。
マシンイメージが含む内容は次の通りだ。
マシンイメージが含む情報によって、イメージ作成が容易になるだけでなく、高度な機能の基盤としても役立つ。
インスタンスのバックアップに必要となるのは、ディスクデータだけではない。インスタンスを再構成するには、マシンタイプやネットワークタグ、ラベルなどのインスタンスプロパティが必要だからだ。
マシンイメージを使うと、このような情報を簡単に取得できる。インスタンスからマシンイメージを作成すると、インスタンス情報とディスクデータを1つのリソースに格納できる。インスタンスをリストアする場合は、マシンイメージと新しいインスタンス名を指定するだけで済む。さらにマシンイメージは、ソースインスタンスが実行中であっても停止中であっても作成できる。
マシンイメージでは、インスタンスプロパティとデータを完全な形で保存するだけではなく、差分ディスクバックアップ技術を用いて差分スナップショットを作成できる。このため、高速で信頼性が高く、コストパフォーマンスに優れたインスタンスのバックアップが可能になる。
マシンイメージは、既存の増分スナップショットの他、特定の時点で接続されている全てのディスク間でクラッシュ整合性を保証する。Compute Engine自体がグローバルに一貫したタイムスタンプを使ってこれを保証している。
複数のディスクにまたがってバックアップポイントを維持したい場合には、クラッシュ整合性が特に重要になる。複数ディスクにまたがってバックアップポイントを維持できれば、マシンイメージをリストアする際に、全てのディスクの内容を特定の1つの時点に戻せることを保証できるからだ。
Compute Engineを使用すると、マシンイメージのディスクデータを指定した場所に保存できる。つまり、可用性やコンプライアンス上の目標を達成しやすい。例えば、「US」などの複数の地域を選択すると、複数のゾーンにまたがって複数のコピーを使ってデータを安全に保存できる。同様に、領域を1つだけ選択して、ディスクデータの位置を特定の領域に制限することもできる。
マシンイメージがどのように役立つのか、Googleは例を挙げて説明している。Webアプリケーションの一部としてインスタンスを作成後に設定を施し、これを他のインスタンスのベースとして使用する例だ。
マシンイメージを使用すると、Webアプリケーションをユーザーの望む通りにキャプチャーした後、テンプレートとなるイメージ(ゴールデンマシンイメージ)として保存できる。その後、このマシンイメージを使用して、ソースインスタンスと全く同じ方法で設定したインスタンスを必要な数だけ起動できる。
マシンイメージは他のプロジェクトと共有できる。新しいVMのプロパティを変更する必要がある場合は、マシンイメージのオーバーライド機能を使用して新しいインスタンスプロパティを定義できる。
レプリケーションを進める場合は、停止済みのインスタンスからマシンイメージを作成することをGoogleは勧めている。なぜなら、システムの整合性を保証できる他、OSが備える環境複製機能(Windowsの「Sysprep」ツールなど)を実行できるからだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.