さよなら、シリコンバレービザや永住権はどうなるの?(2/4 ページ)

» 2020年03月30日 05時00分 公開

転機は突然やってくる

ワイオミング州、イエローストーン国立公園にあるカラフルな温泉の沼。あちこちに吹き上がる間欠泉と生で見るバッファローやバイソンなどの野生動物を目当てに夏休みには世界中から観光客が訪れるのだが、バイソンより観光バスの台数の方がはるかに多い

 私もその口で、あと5年、いや3年だけ頑張ろう、と思って毎日、老骨にムチ打って働いていたのですが、ある日、ひょんなことで一気にマインドが変わってしまいました。というのも同じ中高年エンジニアの友人A氏が体を壊し急に入院してしまったのです。

 あと何年か頑張って、貯金して、子供を独り立ちさせて……。日本に帰ったら、自転車は年齢的に無理だけど、鉄道で日本一周するぞ、と夢を描いていたA氏。にもかかわらず、旅行どころか入院となってしまい、「このまま異国で人生が終わってしまうのではないか」と嘆く彼を見ると、「明日はわが身かもしれない」と思い、辛くなってしまいました。

 日本を発つときに「頑張れよー、もう帰ってくるなよー」と成田で手を振ってくれた両親は、かつては毎年孫の顔を見に遊びに来てくれていたのに、長距離フライトがおっくうになり、最近は「今度はいつ帰ってくるんだー」とSkype越しに心細い顔を見せるようになりました。

 日本のテレビドラマなんて昔は何とも思わなかったのに、仕事が終わってみんなで飲みに行くシーンなんかを見てしまうと、「これができるのも、あと数年か」としみじみしたり。

 全てが急に逆回転するようになってしまいました。

 とはいうものの、現代は「70歳まで働け」という時代。リタイアするにはちょっと早過ぎます。「老後は2000万円必要」とまでいわれていますので、いくら貯金しても100歳まで持たせるにはまだまだ足りません。日本でも家賃と小遣い程度は稼がないと、旅行どころではないのでは、と焦り始めました。

 そもそも平均寿命が日本より10歳近くも短い米国では、当然リタイアする年齢も比例して早く、第一線で働く会社員が60歳を過ぎても会社にいるのは、よほどの専門職を除けば極めてまれなことです。早ければ50代後半、子供が独り立ちしたころに退職し、物価の高いシリコンバレーを離れ、地元に帰ってフルタイムではなく小遣い稼ぎ程度に働くのが一般的なようです。

 われわれ日本人が帰るべき故郷は日本であり、寿命が長い分、米国人より働き続けなければなりません。

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