一方の被告企業は、社員Aの死亡と業務との間の因果関係が存在しないと反論する。以下がその要旨だ。
- 発症2カ月前以外の時間外労働時間は、いずれも厚生労働省の認定基準を満たさず、しかも、発症の直前に連続29日間の休日が与えられている
- 労働時間以外の負荷要因についても、業務は経験、能力に応じた内容でトラブルもなかった。また、休業後においては1日数件の照会に対する回答という極めて軽易なもので労働密度も薄かった
- 社員Aが自殺未遂をした点については、その事実を知らないが、自殺未遂により致死性不整脈が引き起こされることはないから本件事故とは無関係である
- 仮に、業務に負荷が存在したとしても、社員A自身が被告企業に対して再三にわたり回復した旨の連絡および復帰希望の申し入れをし、原告らもそれを勧めていた
心臓に基礎疾患がある社員に対して、たとえ本人が望んだにせよ負荷のある業務に従事させたことが雇用主としての配慮を欠くと考えるべきか、あるいは状況から見て、雇用主にそこまでの責任を負わせるのは酷なことなのか。
裁判所の判断を見てみよう。
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