緊急事態宣言時とは異なりwithコロナに移行したいま、2020年7月14日時点で外出自粛や在宅勤務などの強い要請は出ていません。緊急事態宣言であれだけ経済が疲弊したことを考えると、次に緊急事態宣言が出るとしたら「特別なとき」になりそうです。
そう考えると、今後社員をどのように働かせるかは、「社会の要請」というよりは、それぞれの「企業の判断」にゆだねられるのでしょう。
今後「リモートワークは二極化する」と私は見ています。緊急時のBCP(事業継続計画)対策や、社員の安全や健康を第一に考え、これからの働き方を模索する企業はリモートワークを推進するし、従来の働き方をよしとする企業は推進しない……といった具合に。
もちろん、製造業やサービス業など業種、業態によっては、リモートワークの難しい仕事があるのも事実です。一概に「リモートワークを推進しない企業は、BCP対策や社員の安全を考えていない」としてしまうのは乱暴です。
また、リモートワークはITインフラや人事制度などの整備が必要ですし、業務内容によっては、効率が悪くなる仕事もあるでしょう。「柔軟な働き方に移行したいけど、現状ではできていない」といった事情もあると思います。
一方で、やろうと思えばリモートワークができるのに“やろうとしない”企業や、緊急事態宣言時はやっていたのに“やめてしまう”企業、「やっぱり、仕事は一堂に会してやらなくちゃ」と“そもそも、検討もしない”企業もあるはず。
つまり、リモートワークを推進するか否かは、経営層の姿勢を如実に表しているといっても過言ではないと思うのです。
また、大げさかもしれませんが、今後、リモートワークができる企業とできない企業とでは、人材採用に影響が出てくるのではないか……と、私は見ています。なぜなら、多くの人が「リモートワークのメリットを体験してしまった」からです。
新型コロナウイルス感染症が広がる前、在宅勤務をしている人はあまり多くありませんでした。もちろん一部には推進している企業もありましたが、どちらかといえば「介護や子育てと両立するため」や、「転勤により遠隔で働かなければならなくなったため」など、一部の「特別な人のもの」でした。
しかし、今回の新型コロナウイルス感染症によって、多くの人が在宅勤務を体験。「あれ? 会社に行かなくても、意外と仕事ができるな」「ギュウギュウ詰めの満員電車に乗らなくてもいいのは快適だな」「自由な時間が増えるのはいいな」「めんどくさい人間関係が減って、ストレスが減るな」「Web会議を使えば、離れている人とも仕事ができるんだ」「仕事内容によっては、会社よりも集中できるかも」といったことを、多くの人が知ってしまいました。
リモートワークのメリットを知ってしまった人たちが、今後何らかの事情で転職するとき、「柔軟な働き方ができる会社の方がいいな」と考えるのは必然でしょう。
学校もそうです。新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの学校ではオンライン授業の試行錯誤が始まりました。
もちろん、実際の授業となるとまだまだ課題はあるでしょう。でも学生や子供たちは、「その場に行かなくても、学習できる」「対面では話せなかった人と簡単に話ができる」など、むしろオンラインの方が、時間や場所の制約を受けずに、いろいろな体験ができることを知りました。
このような学生たちが就職活動をするとき、「リモートワークなんてありえない」という企業と、「働く場所に関係なく、あなたの実力を発揮してください」という企業とでは、どちらを選ぶでしょうか。
ひょっとしたら、近い将来「住むのは地元で、会社は東京」とか、「リモートワークが前提」といった働き方を望む人も出てくるかもしれません。
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