SD-WANが話題になり始めたのは2015年ごろからだ。最近まで導入事例はほとんど見られなかったものの、コロナ禍で企業ネットワークの状況は一変し、SD-WANの採用が増え始めた。
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私事であるが筆者は2021年3月末でNECを退社し、4月から独立して企業ネットワーク関連プロジェクトの支援やコンサルティングの仕事を始めた。3月末にあいさつメールを数百人の方に送ったところ、いただいた返信の中に強く印象に残ったものがあった。大手企業でネットワーク運用を担当しているAさんからのものだ。「昨年のコロナ禍は強烈でしたね。社内のネットワークは使われることなく、それまで補助的であったリモートアクセスのみで業務、事業が継続できたのですから。自分がやってきたことを、一瞬で全否定された気持ちになりました」
銀行や流通業では店舗がネットワークの主役だ。多くの来店客が決済や売り上げの膨大なトラフィックを生むため、ネットワークが必ず利用される。しかし、オフィスワーク主体の企業ではAさんと同じ思いを持った方は多いだろう。
コロナ禍で在宅勤務主体の勤務形態を続けている企業はいまだに多い。出社率が10%を切るような事業所もある。そのような所では図1のような企業ネットワークの空洞化が起こっている。補助的な存在であったリモートアクセスで大部分のトラフィックが扱われ、企業ネットワーク本体は空洞化してしまった。複数のキャリアの広域イーサネットで二重化するなど、必要な帯域幅の確保と信頼性を保つため構築、運用に注力してきたネットワークが空洞化したのだから、Aさんが挫折を感じるのも無理はない。
2019年11月に筆者は本コラムで「企業ネットワークは『更改』するな、『高度化』せよ!」と書いた。企業ネットワークを根本から作り替えてもメリットは得られない。それよりも現在のネットワークを高度化しよう、と述べたのだ。しかし、コロナ禍が状況を一変させた。空洞化したネットワークを放置していいはずがない。
コロナ禍で生まれた企業ネットワークへの新しい要件は次の通りだ。
これらの要件を満たす手段としてSD-WANをクラウドセキュリティとセットで導入する事例が増えている。SD-WANが話題になり始めたのは2015年ごろからだ。その後、順調に普及しているとはいえなかったが、コロナ禍が転機となってユーザーが増えつつある。
SD-WANは閉域網やインターネット、モバイル網などを仮想的に1つのネットワークとして扱い、柔軟な構成制御やトラフィック制御ができることが大きな特徴だ。
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