情報セキュリティの啓発を目指した、技術系コメディー自主制作アニメ「こうしす!」の@ITバージョン。第30列車は、「Windows 11」です。※このマンガはフィクションです。
ここは姫路と京都を結ぶ中堅私鉄、京姫鉄道株式会社。
その情報システム(鉄道システムを除く)の管理を一手に引き受ける広報部システム課は、いつもセキュリティトラブルにてんてこ舞い。うわーん、アカネちゃーん。
「こうしす!」制作参加スタッフが、@IT読者にお届けするセキュリティ啓発4コマ漫画。
マンガのテーマは「Windows 11」です。
Windowsの新バージョンWindows 11が発表され、「Windows 10が最後のバージョンとなるはずだったのに、約束がほごにされた」と話題になりました。
Windows 7サポート終了時には、「悪いことをするコードはいねがー!?」で、Windows 8以降ではNXビット対応のCPUがインストール要件となり、非対応のPCにはインストールできなくなったことを解説しました。
Windows 11はインストール要件がさらに幾つか追加され、非対応のPCにはインストールできなくなると発表されています。その要件の一つとして示されたのが「TPM 2.0」の搭載です。
TPMはTrusted Platform Moduleの略で、簡単にいえばセキュリティチップのことです。暗号鍵の生成や格納、そして暗号化や復号などを行う機能を持ちます。また、格納された鍵を読み出すことはできず、さらに耐タンパー性(外部からの解析や改変を防ぐ性質)があり、チップを分解して読み出すことも困難です。
代表的な使用例は、Windowsの暗号化機能「BitLocker」によるSSDやHDDなどのストレージの暗号化と復号です。その際に用いられる暗号鍵の1つであるストレージルートキーが、TPM内で生成、格納されます。
詳細な仕組みは以下をご覧ください。
Windows 11のリリースで、どうなるWindows 10(@IT)
Data Encryption Toolkit for Mobile PCs:第2章:BitLocker ドライブ暗号化(Microsoft)
しかしTPMに格納された暗号鍵は、取り出せないとはいえ、そのTPMを用いて復号できます。PCを丸ごと盗まれた場合や、TPMを初期化するのを忘れて、PCとSSD、HDDを一緒に廃棄してしまった場合、情報漏えいにつながるかもしれません。
TPMとBitLockerで暗号化しているから、それだけで安全というわけではありません。基本的な仕組みを理解して、運用する必要があります。
さて、TPMには物理的なチップの他に、CPUのファームウェアに実装された「fTPM」(Firmware TPM)があります。
自分のPCにはTPMが搭載されていないと思っていても、実はUEFI(BIOS)の設定でTPM(fTPM)が無効になっている場合があります。設定を有効にするとTPMが使えるようになるかもしれません。
「Windows 11のインストール不可」と判定されてしまった方は、試してもよいでしょう。
ただし、UEFI(BIOS)の設定変更は、最悪起動不可能になる危険があります。必ず事前にデータのバックアップを行うようにしましょう。
Windows 11が発表された際、Microsoftはインストールできるかどうかを確認する「PC 正常性チェックツール」を公開しました。これが不評を招き、あっという間に一時公開停止となりました。
最初のバージョンでは、アップデートできない理由が表示されなかったことが不評の原因でしょう。
筆者が困ったのは、Azure Active Directory(Azure AD)参加PCでは、マンガの3コマ目のような表示が出て、Windows 11をインストールできるのかできないのかが分からなかったことです。
しかも、IT管理者自身が確認しているときにまでこの表示です。IT管理者はエスパーではないので、この表示が出てもユーザーからの問い合わせに回答できません。
「何でもかんでもIT管理者に問い合わせするよう仕向けないでほしい」と、心の中でぼやいたのでした。
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フリーイラストレーター。アニメ「こうしす!」ではキャラクターデザイン・キャラ作画担当をしています。
アニメ「こうしす!」監督、脚本。情報処理安全確保支援士。プログラマーの本業の傍ら、セキュリティ普及啓発活動を行う。
「こうしす!社内SE 祝園アカネの情報セキュリティ事件簿」(翔泳社)2020年2月発売
「物語の力でIT、セキュリティをもっと面白く」をモットーに、作品制作を行っています。
オープンソースなアニメを作ろうというプロジェクト。現在はアニメ「こうしす!」を制作中。
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