Pythonの「Plotly」ライブラリで「ゴールデンクロス」「デッドクロス」を可視化する「Python」×「株価データ」で学ぶデータ分析のいろは(4)(1/2 ページ)

日々変動する株価データを題材にPythonにおけるデータ分析のいろはを学んでいく本連載。第4回は株価の上昇、下落を示すゴールデンクロスとデッドクロスを描画させる方法を紹介します。

» 2021年10月19日 05時00分 公開

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はじめに

 連載第3回まで各種オシレーターに基づいて可視化した株価データを考察しました。連載第4回は株価が上昇または下落に転じるサインを説明します。

 連載の趣旨がデータ分析である以上、Python自体の言語仕様や文法に関しては詳しい説明を割愛する場合があることをご了承ください。

サンプルの実行方法

 サンプルファイルを実行する場合は、サンプルファイルのリンクを開いた後に、メニューの「ファイル」から「ドライブにコピーを保存」を選択して保存したコピーを「Google Colaboratory」で実行してください。

株価が上昇する/下降するシグナル

 連載第3回で株価データを可視化してみた結果、線が重なったタイミングで株価が上がる/下がるという方向性が分かりました。この点に関して先に用語と概念を説明します。

ゴールデンクロスとデッドクロス

 移動平均線、オシレーターにおいて短期線が長期線を下から上に抜くことを「ゴールデンクロス」といいます。逆に、短期線が長期線を上から下に抜くことを「デッドクロス」といいます。

ゴールデンクロスとデッドクロス ゴールデンクロスとデッドクロス

 ゴールデンクロスは株価が上昇に転じるシグナル、デッドクロスは株価が下降するシグナルです。株価のテクニカル分析においては、2本の線が交差する角度が鋭角であるほど、上昇/下降の度合いが大きいといわれています。

ゴールデンクロスとデッドクロスでの短期線/長期線は、○日線という厳密な線ではありません。2本の線の比較で短期と長期、という意味です。

 本連載のサンプルコードでは、株価の終値と各オシレーターの値を日単位で生成しますので、どの日付でゴールデンクロス/デッドクロスが発生したかはすぐに分かるでしょう。データ分析に向いているPythonの特性を生かして短い処理で的確にゴールデンクロス/デッドクロスを検出できることと、視覚化の方法を、次章より順を追って説明します。

株価データをグラフ化する

 可視化する対象が増えますので、今回はmplfinanceよりも自由度の高い「Plotly」を利用して可視化していきます。

利用するライブラリとデータの準備

 Plotlyは、2次元のグラフ表示だけでなく、地図や3Dのグラフなどさまざまなグラフを描画できるライブラリです。今回から、各種オシレーターに加えてゴールデンクロス/デッドクロスも表示しますので、高い自由度を保ちつつグラフが描画できるPlotlyでチャートを描画させてみましょう。Plotlyは、Google Colaboratoryに組み込まれていますので、インストール作業は不要です。

 今回のサンプルでは、パシフィックネット(3021)の株価データを利用します。前回と同じように、株価を取得して5日と25日の移動平均を計算します。

import talib as ta
close = df['Close']
ma5, ma25 = ta.SMA(close, timeperiod=5), ta.SMA(close, timeperiod=25)
df['ma5'], df['ma25'] = ma5, ma25
df.tail()
株価データの取得と移動平均の計算(Ch4.ipynb抜粋)
取得した株価データと計算した移動平均の確認 取得した株価データと計算した移動平均の確認

 ma5、ma25がそれぞれ5日、25日の移動平均を意味します。

ローソク足チャートの表示

 Plotlyを利用して200日分のローソク足チャートを表示してみましょう。Plotlyライブラリ内のplotly.graph_objsというグラフを表示するライブラリを利用します。Plotlyでグラフを表示する際には、レイアウトをハッシュで、表示するデータを配列で定義します。

import plotly.graph_objs as go
df = df.tail(200) # 200日分のデータ
layout = {
            	'title'  : { 'text': "(株)パシフィックネット(3021)", 'x':0.5 }, 
            	'xaxis' : { 'title': "日付", 'rangeslider': { 'visible': False } },
            	'yaxis' : { 'title': "価格(円)", 'side': "left", 'tickformat': ',' },
            	'plot_bgcolor':'light blue'
          }
data =  [
            	go.Candlestick(x=df.index, open=df['Open'], high=df['High'], low=df['Low'], close=df['Close'], 
                   increasing_line_color='#00ada9', decreasing_line_color='#a0a0a0')
			]
ローソク足チャートを表示する準備(Ch4.ipynb抜粋)

 ライブラリをインポート後、レイアウトとデータを定義します。レイアウトで指定するキーは次の通りです。

名前 概要
title グラフ全体のタイトル
title.text タイトル
title.x 表示するx軸の位置(0〜1.0の割合で指定)
xaxis X軸タイトル
xaxis.text タイトル
xaxis.rangeslider レンジスライダーを表示するか
yaxis Y軸タイトル
yaxis.text タイトル
yaxis.side Y軸の値の目安を表示する位置
yaxis.tickformat Y軸のラベルのフォーマット
yaxis.plot_bgcolor 表示するグラフの背景色
レイアウトで指定するプロパティ

 グラフ自体のタイトル、X軸タイトル、Y軸タイトルの3つを指定します。ローソク足チャートのデータは、plotly.graph_objsのCandlestickメソッドで作成します。Candlestickメソッドの引数は次の通りです。

名前 概要
x インデックス
open 始値
high 高値
low 安値
close 終値
increasing_line_color 陽線の色
ecreasing_line_color 陰線の色
Candlestickメソッドの引数

 データを表示するために、データフレームの値を指定します。陽線の色と陰線の色は、CSSで利用する色名、RGB、Hexで指定できます。サンプルでは、陽線を緑、陰線を灰色に指定しています。

ローソク足チャートの表示

 グラフを表示する際には、plotly.graph_objsのFigureメソッドでグラフを表示するFigureオブジェクトを生成します。

fig = go.Figure(layout = go.Layout(layout), data = data)
fig.show()
ローソク足チャートの表示(Ch4.ipynb抜粋)

 Figureメソッドの書式は次の通りです。前節で作成したレイアウトとデータを引数に指定して実行します。

%Figureオブジェクト% = %plotly.graph_objsオブジェクト%.Figure(layout = go.Layout(%レイアウトのハッシュ%), data = %表示するデータの配列%)
Figureメソッドの書式

 グラフの表示は、Figureクラスのshowメソッドで行います。サンプルを実行すると以下のようなローソク足チャートを表示します。

ローソク足チャート ローソク足チャート

 ゴールデンクロスとデッドクロスのデータを作成して、このグラフに表示してみましょう。

ゴールデンクロスとデッドクロスを算出する

 データフレームでは、カラムを操作したり計算したりする処理を短いコードで記述することができます。いったんデータフレームの処理に戻って、5日移動平均と25日移動平均のゴールデンクロスとデッドクロスを算出してみます。

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