クラウドストレージを提供するBackblazeは、自社のデータセンターにおけるHDDとSSDの使用統計レポートを発表した。故障しにくいHDDがどれか、故障しやすいHDDがどれかが分かる。SSDについてもHDDと比較した。
Backblazeは2021年11月2日(米国時間)、自社のデータセンターにおけるHDDとSSDの使用統計レポートを発表した。2021年第3四半期についてのデータだ。同社はクラウドストレージの他、企業や個人向けのクラウドバックアップサービスを提供している。
2021年9月30日時点で、Backblazeが世界4カ所のデータセンターで使用するドライブの台数は、19万4749台だった。このうち起動ドライブが3537台(HDDが1557台、SSDが1980台)、データドライブが19万1212台(全てHDD)。
使用統計レポートには、データドライブの四半期故障率と生涯故障率に加え、SSD起動ドライブとHDD起動ドライブの故障率の比較、これらのデータに関する解説などが掲載されている。
2021年9月30日時点でのデータドライブ(19万1212台)のうち、テスト用のHDDと、種類別の使用台数が60台に満たないモデルのHDDが合計で386台あり、これらを除いた19万826台のHDDデータドライブについて、まず故障率統計を計算した。
24種類のHDDを使用しており、容量は4〜16TB。年間平均故障率(AFR:Annualized Failure Rate)は、0.00〜6.29%の範囲だった。
第3四半期に故障が全く発生しなかったHDDが1種類だけあった。
Western Digital(WDC)のHGSTブランドのHDD「HUH721212ALE600」だ。容量は12TB。BackblazeのデータセンターではこのHDDを2600台使用している。いずれもアムステルダムのデータセンター内でDell Technologiesのストレージサーバに内蔵されていた。
次の5モデルは、第3四半期に1件しか故障が発生しなかった。
・HGSTブランドの8TB HDD(HUH728080ALE600) 使用台数1109台
・Seagate Technologyの6TB HDD(ST6000DX000) 使用台数886台
・東芝の4TB HDD(MD04ABA400V) 使用台数97台
・東芝の14TB HDD(MG07ACA14TEY) 使用台数447台
・Western Digitalの16TB HDD(WUH721816ALE6L0) 使用台数1040台
これらの中でも、特にSeagate Technologyの6TB HDD(平均使用期間:77.8カ月)、東芝の4TB HDD(平均使用期間:75.6カ月)は、使用期間が長いにもかかわらず、高い安定性を発揮した。
上記の表には“外れ値”がある。以下の2つのHDDモデルについては、故障率をそのまま受け取ることができない事情があった。
・Seagate Technologyの12TB HDD(ST12000NM0007)
2020年1月時点で、このモデルはBackblazeの環境では最適に動作しないことが分かり、BackblazeはSeagate Technologyとの協議を経て、このモデルの使用中止を決めた。だが、コロナ禍の影響で撤去が遅れたため、このモデルについては高い故障率が予想されていた(実際に故障率は5.06%と高かった)。このモデルは2021年第4四半期に全て撤去される予定だ。
・Seagate Technologyの14TB HDD(ST14000NM0138)
このHDDはDell Technologiesのストレージサーバの一部として導入された。第2四半期から高い故障率を示しており、今期も6.29%と高い。Seagate TechnologyとDell Technologiesが原因を調査中だ。
Backblazeは現在、データセンター内のストレージサーバの起動ドライブとして、SSDとHDDの両方を採用している。どちらの起動ドライブもワークロードは同様で、サーバを起動させるだけでなく、ファイル(通常、ログファイル)の読み書き、削除も行っている。
2018年半ばから、新規ストレージサーバでは起動ドライブとしてSSDのみを使うようになり、故障したHDD起動ドライブもSSDに置き換えるようになっている。
Backblazeは2021年9月に、2021年第2四半期までのデータを使って、HDD起動ドライブとSSD起動ドライブの生涯ARFを比較した結果を報告した(関連記事:「SSD」と「HDD」はどちらが故障しやすいのか?)。
今回のレポートでは、2021年第3四半期のデータを加えて比較結果を更新し、生涯AFR(Lifetime AFR)次の図のようにまとめている。
HDDの生涯AFR(青い線)は2018年から、毎年1ポイント以上の上昇を示し、2021年に入って7%の手前で頭打ちになりつつある。
HDDとSSDのグラフ(オレンジ色の線)で、最初の4つのデータポイントについては(物理的な記録方式が全く異なるにもかかわらず)カーブが似ている。SSDの方がやや故障率が低い。これまでのデータからSSDも今後、故障率が上昇しそうだが、HDDと比べてどのような推移を示すのか注目される。
1年前と比べてBackblazeが使用するデータドライブ(HDD)の台数は、4万129台増えた。新しいドライブを6万7990台導入し、既存ドライブを2万7861台撤去した結果だ。故障で撤去したドライブが1674台、移行のために撤去したドライブが2万6187台だった。データドライブの総容量は、1年前と比べて約600PB(ペタバイト)増えた。
2021年9月30日時点で使用していたHDDの生涯AFRについてもまとめた。
Backblazeがデータセンターで使用するHDDの生涯AFRは、低下を続けている。1.43%という最新の値は、統計を開始した2013年以降で最も低い。
容量でみると4TBモデルから16TBモデルにわたり、使用期間は短いもので1カ月(東芝 16TB)、長いもので6年以上(Seagate 6TB)となっている。
容量別で見た生涯AFRが最も低いモデルは、次の7種類だった。
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