Intelが開催したイベント「Intel VISION」のキーノートスピーチを聞いて、「半導体は国家なり」という言葉が浮かんできた。いまや半導体がなければ、給湯器もクルマも動かない。新型コロナウイルスや戦争によって半導体のサプライチェーンが混乱し、製品の供給に支障が出て、そのことに気付かされた人も多いのではないだろうか。
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米国テキサス州で開催された朝の催しものを、日本時間で眠い目をこすりながら視聴させていただいていた。後追いで視聴も可能なので、そうすればよかったのだが、何となくリアルタイムで見てしまった。
「Intel VISION 2022」という催しもののキーノートスピーチである(Intel VISIONのキーノートスピーチなどは、IntelのPress Kit「Intel Vision 2022」から参照可能)。この2年、新型コロナウイルスのため、対面によるイベントがほとんどなくなってしまっていた。その復活ということである。
日本でも新型コロナウイルスの前には、単独企業のプライベートな展示会というものがないわけではなかった。みなさんも行ったことがあるのではないだろうか。
多くは協業各社や自社の各事業部門などのブースが並ぶ展示会場(商談会場)とキーノートスピーチやセミナーなどが開催されるホールなどが隣り合っているものだ。
今回のIntel VISIONの会場もそういう催しもの会場に見えた。新任のCOO(Chief Commercial Officer)「クリストフ・シェル(Christoph Schell)」氏が会場を走り回って紹介してくれる。それほど広い会場には見えない。その後も走ってキーノートスピーチの会場に案内してくれる。
会場は「お金を持っている」はずのIntelの割には、意外と質素な感じがする。だいたいキーノートスピーチが行われたホール自体も、それほど大きなものではない。「密です」と言いたくなるような人の密度だ。米国らしくマスクしている人はいないように見える。会場内にいるのは数百人くらいか。
しかし、会場は小さくても視聴者は多いのが現代的だ。カッコいいコンピュータグラフィックスに彩られたこの会場をストリーミングでリアルタイムに見ているのは、極東の片隅にいる筆者も含めて、全世界に何万人だか何十万人だか(?)、もっとだろうか。後追い視聴も含めたらかなりの数になるだろう。
キーノートスピーチの会場には、IntelのCEO「パット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)」氏が小走りで登場する。コマーシャル・オフィサーの人とは違い細身のCEOは息を切らしたりはしない。
そのゲルシンガーCEOのキーノートスピーチを聞きながら、唐突に頭の中に思い浮かんだ言葉は「鉄は国家なり」だ。19世紀、帝国主義の時代のドイツの鉄血宰相ビスマルクの言葉らしい。
ゲルシンガーCEOは、細面に眼鏡をかけ、いかにも頭がよさそうで物腰は柔らか。ビスマルク的なコワモテな感じはみじん感じもない。語り口もソフトで攻撃的ではない、しかし、そのキーノートを聞きながら、ゲルシンガーCEOはそんなことを一言も言っていないのだが、ついに「半導体は国家なり」の時代に入ったと確信してしまった。
若者は、知らないかもしれない。昔は「鉄は国家」だったのだ。第二次世界大戦くらいまでは、確実にそうだったのではないかと思う。その残滓(ざんし)はかなり後まで残っていた。
日本でも昭和の時代は確実に「鉄は国家」の残滓があった。個人的な記憶だが、大学時代に日本最大級の製鉄所に工場見学に行った際、「私立大学の学生に来てもらっても困るんだよ」と言われたことがある。そして、結局就職したのは半導体業界だった。当時から半導体は「産業のコメ」などと言われていたが、「国家」から見たらしょせんは部品屋だ。今までは。
ゲルシンガーCEOのキーノートスピーチの最初の方で紹介される製品がある。台湾のPEGATRON(和碩聯合科技)という会社の5G関係の製品群だ。Intel Xeonを採用しているようだ。
しかし、スピーチはIntel Xeonの性能がどうとかいうことには触れないのだ。そこから写しだされるのは、例えば洪水でクルマが水に浮いているような画像(そんな映像に慣れて驚かなくなってしまったのがこのころの異常さ)など災害のイメージだ。IT製品はそういう災害などに対抗するためのインフラとしての役割だ。様変わりである。
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