編集 鈴木 台湾にはフリーランスのエンジニアはどのくらいいるのでしょうか。
ヒュウさん たぶん、日本よりもずっと少ないと思います。
編集 鈴木 フリーランスのエンジニアはどうやって仕事を探しているのですか。
ヒュウさん 多くの場合はネットで探しています。実は1つ(日本と)大きな差があって、台湾の開発プロジェクトは、ほとんどの場合は社内で開発します。全部のメンバーが社員。ですから、台湾でフリーランサーとして(台湾の企業で働く)機会を求めたら、たぶん自力で探さなければならない。でも日本では多くの場合、いろいろな人を集めてチームを作ります。そもそもプロジェクトの量も日本の方がずっと多いと思います。
台湾にも派遣会社はありますが実に少ないと思います。そうした背景もあって、台湾で本当にフリーランサーをやりたい人は台湾の仕事ではなく欧米の仕事を探します。
編集 鈴木 2つ目の質問です。「オードリー・タン」さんは、台湾のエンジニアに人気ですか?
ヒュウさん オードリー・タン……ああ、英語名はあまり聞き慣れないのでピンと来ませんでした。国内では「タン・フォン」と呼びます。僕は正直、よく知りません。新聞で報道されるまでそういう人がいることは分かりませんでした。あまり話題にもなっていません。たぶん使っている言葉も少し違うのかな……。台湾は言語を中心にグループを作ることが多くて、異なる言語の人とは全然出会うことがないので。
阿部川 (タンさんは)日本では台湾のIT大臣として有名で、ITで台湾をある意味救った象徴としても有名です。
ヒュウさん はい、タンさんが作ったものは良いものです。タンさんが担当する前のプロジェクトは、良くないものも結構ありました。
阿部川 素晴らしい業績を残していますが、それでも(台湾国内では)あまり知られていないんですね。ヒュウさんとお話ししないと、そういうこと分かりませんでした。
ヒュウさん 日本ではすごく有名なんですね。でも台湾は、そのくらいの品質でサービスを作ることは普通ですから。政府のプロジェクトを除いてですけれども。
阿部川 政府がダメだったんですね
ヒュウさん あくまでも以前は、ですよ。コロナ禍になってからはITに関して政府もすごく成長した気がします。例えば最近でもワクチンの予約が全部ネットでできるようになりました。それもオードリー・タンが作ったものです。
編集 鈴木 日本が新型コロナウイルス感染症対策サイトのソースコードをGitHubで公開したときに、タンさんが「ここ間違ってるよ」ってプルリク(Pull Request)送ってくれたんですよ。それで日本人は、「すごーい。日本のIT大臣はおじいさんなのに、台湾のIT大臣はかっこいい」ってもりあがったんですよ。
ヒュウさん 確かにそういうニュースを見たことがあるような気がします。たぶん、すごく賢い人なんだと思います。インタビューで見掛けた話では、本1冊を1時間で読めるらしいです。そのときから、タンさんはすごいってちょっと思い始めました
編集 鈴木 ヒュウさんよりも学び方を知っているかも?
ヒュウさん たぶん効率的に学べてるのかな。スピードの他にポイントの収集とか整理とかが、僕はタン・フォンと近いと思います。
インタビュー中、3つのことを考えた。その1、「学びたい」という意志や意欲があることは素晴らしい。それがある人とない人の違いはどこから来るのだろうか。
その2、エンジニアへのスタートは31歳。「できるかできないか」ではなく「やるかやらないか」の決断。たとえ、それで仕事にならなかったとしても、決して悔いは残らなかっただろう。そのこと自体がヒュウさんの誇りか。
その3、オードリー・タン(本名は唐 鳳)さんは、「台湾のコンピュータ界における偉大な10人の中の1人」なのに、それほど一般的には有名ではないらしい。日本での報道は業績を過度に言いはやしたりジェンダーへの興味が強すぎたりしたのだろうか、ちょっと反省。
アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。
「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOなど、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。取材はオンライン、英語もしくは日本語で行います。
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