MicrosoftにフィードバックしたWindows Serverのあのバグはどうなった?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(219)

前回、Windows Serverの次期バージョン(vNext)のプレビュー版で「SMTPサーバ」の機能が削除されたことをお伝えしました。せっかくプレビュー版をインストールしたので、筆者が主にWindows Server 2022についてフィードバックしたバグ(「フィードバックHub」を通じて)の幾つかのプレビュー版(2022年8月末リリースのビルド25192まで)での状況を確認しておきましょう。

» 2022年09月21日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「Windowsにまつわる都市伝説」のインデックス

Windowsにまつわる都市伝説

ローカライズ問題は後回し? それとも無視ですか?

 「Windows Server 2022」および同じビルドベースの「Azure Stack HCI バージョン21H2」の「Sconfig」ユーティリティーは、「Windows Server 2019」以前のWSH(Windows Script Host)ベースのものから、PowerShellベースのものに作り替えられました。

 WSHベースの以前のSconfigユーティリティーは、再起動の確認などでMsgBox関数のダイアログボックスを多用していました。そのため、ローカルコンソールまたはリモートデスクトップ接続では使えても、「PowerShell Remoting」「WinRM(Windowsリモート管理)」「SSH」(Windows Server 2019以降にはSSH Serverがあります)などで接続したリモートコンソール環境では使い物にならないことがありました。それがPowerShellベースになったことで、可能な限り、キャラクタベースで動作するようになりました(ダイアログボックスの代わりにY/N入力などがキャラクタベースに。ただし、日付と時刻の設定については、まだ「timedate.cpl」コントロールパネルに依存しています)。

 しかしながら、この新しいSconfigユーティリティーには日本語環境(他の英語以外の言語については承知していません)で表示や機能に影響する問題があります。以下の連載でも少し触れていますが、機能に影響する問題としては、更新プログラムを個別に番号を指定してインストールできないという問題があります(画面1)。表示上の問題とは、「((Y))」のように多重かっこで表示されてしまう部分が多数存在することです。

画面1 画面1 Windows Server 2022英語版の更新プログラムのインストールは何も問題ないが(画面上)、日本語版は個別インストールするための「S」の表示が切れ、入力も受け付けてくれない(画面下)

 2022年8月31日にリリースされたWindows Server vNextのビルド「25192.1000」(製品名はまだ「Windows Server 2022」のままです)で、この点が改善されているかどうかを確認してみましょう。残念ながら、何の進展もありませんでした(画面2)。

画面2 画面2 Sconfigユーティリティーのローカライズ問題に改善はなし

Windows Admin Center 2208 Preview、あのバグはどうなった?

 Microsoftは2022年8月後半に「Windows Admin Center(WAC)」の次期バージョンとみられる「WAC 2208 Preview」もリリースしています。WACのバグとしては、管理対象が日本語環境の場合、「ログオンしているユーザー」の数が誤って表示されるという問題です。このバグについては、バグが発生する理由を含め、本連載の第189回で説明しました。このバグは、WAC 2103、2110、2110.2で確認していますが、バグの理由からすると、かなり初期のバージョンからのものだと思います。

 WAC 2208 Preview(バージョンは2110.2のままですが、ビルドは1.3.2208.18002)で長く放置されたこのバグを確認してみました。残念ながら、何も改善はありません(画面3)。以前のバージョンと同様、誰もログオンしていなければ「ログオンしているユーザー:-1」、1ユーザー以上がログオンしていれば「ログオンしているユーザー:0」と表示されます。以前のバージョンと同様に、接続先が英語環境(表示言語とシステムロケールがen-us)の場合は、正しく表示されるはずです。

画面3 画面3 「ログオンしているユーザー」の報告数は接続先が日本語環境だと信用できないものに

 こんな感じで英語版にも影響するバグは、すぐに対応されることが期待できると思いますが、日本語環境固有の問題については、優先順位が低いか、単に無視(放置)されている状況です。日本語環境で利用している人にとっては、たとえそれがローカライズだけの問題だとしても、不完全な品質のものを正式版として世に出していると感じるかもしれません。

 Windows Server vNextが完成し、一般提供されるのは、まだ数年先の話。現在のプレビュー版で細かいこと言ってもしようがないと思うかもしれませんが、どの問題も現行バージョンに存在する問題であり、当面、修正されることは期待できなさそうということを指摘したかったわけです。

日本語版Windowsはつらいよ

 これはWindows Server vNextとは関係ないことなのですが、最近、Microsoftのサイトからダウンロードした正規のスクリプトが期待通りに動作しないということがよくあります。原因は分かっているのですが、すぐに忘れてしまい、毎回、同じ失敗を繰り返しています。

 それは何かというと、例えば、「Microsoft Azure」の「Azureポータル」には、機能のエージェントをセットアップするスクリプトを自動生成するものがあります。スクリプトをダウンロードして、いざ実行しようとしても、何も起こらないか、あるいはエラーが出力されたりします(画面4)。

画面4 画面4 ダウンロードした正規のスクリプトを実行しても、何も起こらない

 この問題が発生するのは、スクリプト内に日本語(#始まりのコメント行を含む)が含まれているときに発生します。そのようなテキストファイルを「Microsoft Edge」でダウンロードすると、文字コード「UTF-8(BOMなし)」で保存されてしまい、PowerShellは「UTF-8(BOMなし)」を自動判別できないため、文字化けが発生し、コメント行がコメント行として機能しない、改行コードを正しく認識しないといった状況が発生して、スクリプトを正しく実行できないのです。

 日本語版WindowsのコマンドプロンプトはANSI(Shift-JIS)を想定しているので(互換性が理由だと思います)、バッチファイルの場合には、同じように文字化けが発生して正しく実行できないことがあります。

 この問題は、コピー&ペーストで「メモ帳」(notepad.exe)に貼り付け、保存したとしても、同じように発生することがあります。その理由は、「Windows 10」のMay 2019 Update(バージョン1903)のときに、Linuxとの相互運用性を考慮して(Windows Subsystem for Linuxなど)、メモ帳の既定の文字コードがこれまでの「ANSI」から「UTF-8(BOMなし)」に変更されたからです。

 この問題の回避方法はいろいろありますが(バッチファイルの場合は、CHCP 65001.コマンドを先頭に追加するなど)、日本語を削除して保存し直す、あるいは日本語はそのままANSIコードで保存し直すのが簡単な対処方法です(画面5)。Linuxのシェル環境では、このような手間が必要になることはないと思います。Linuxとの相互運用性を配慮したせいで、Windows側で逆に余計な手間が増えている気がします。

画面5 画面5 ダウンロードしたスクリプトをANSIコードで保存し直すと、正しく機能するスクリプトになる

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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