MicrosoftとOEMベンダーのハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)ソリューションであり、Azureサービスとして提供される「Azure Stack HCI」の新バージョン「22H2」が一般提供されました。
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Microsoftは2022年10月12〜13日(米国時間)に開催した年次イベント「Microsoft Ignite 2022」で、「Azure Stack HCI OS」の新バージョン「22H2」の一般提供開始を発表しました。また、「Azure Arc-enabled VM management Public Preview 2」として、幾つかの新機能が間もなく利用可能になることも発表しています。
Azure Stack HCI OSは、年1回のリリースサイクルで機能更新プログラムおよびインストールメディア(ISOイメージ)が提供されます。Microsoft Azureに登録されている運用中(または60日の無料評価期間中)のAzure Stack HCIクラスタには、機能更新プログラムとしてバージョン22H2が提供されます。管理者は「クラスター対応更新(CAU)」を使用して、クラスタ上のリソースをオンラインのまま、クラスタ全体を新バージョンにローリングアップグレードできます(画面1、画面2)。
バージョン22H2は、Windows Updateから機能更新プログラムを取得してインストールしたり(画面3)、インストールメディアを使用してアップグレードインストールしたりすることもできます(一般提供開始時点ではインストールメディアは準備中)。
バージョン22H2のOSビルドは「10.0.20349」で、バージョン「21H1」の「10.0.20348」とバージョン番号が非常に近いものですが、新機能としては「Network ATC v2」「記憶域レプリカの圧縮と高速化」「クラスタ対応更新(CAU)のエラー軽減と単一ノードへの対応」「セキュリティベースラインの強化」(新規インストールの場合)があります。
「Azure Arc-enabled VM management(Azure Arc対応仮想マシン管理)」は、Azure Stack HCIクラスタ上に「Azure Arcリソースブリッジ(プレビュー)」をデプロイすることで利用可能になる、Azureポータルとの統合機能です。
この機能をセットアップすると、Azureポータルから「Azure Arc仮想マシン(プレビュー)」の作成を開始し、「Azure Resource Manager(ARM)」に基づいて、Azure Stack HCIクラスタ上のWindowsやLinux仮想マシンをデプロイして、ゲストOSを自動構成(管理者アカウントの追加など)することができます。
Azure Stack HCIクラスタのリソース(OSギャラリー、仮想ネットワーク、仮想マシン、仮想マシンのデータディスク、仮想マシンのネットワークアダプター)は、Azure上のリソースとして見えますが、これはAzure Stack HCIクラスタ上のリソースをAzureに「投影」(プロジェクション)したものです。サイズの大きなOSイメージがAzureからオンプレミスにダウンロードされるということはありません。Azure側の操作がAzure Arcリソースブリッジを通じてAzure Stack HCIクラスタにリダイレクトされ、実際のデプロイ作業はオンプレミス側で行われます。
MicrosoftはAzure Stack HCI OSバージョン22H2のリリースと同時に、2022年10月中にAzure Arc-enabled VM managementのPublic Preview 2が利用可能になることも発表しています(10月17日時点で既に利用可能になっています)。
Public Preview 2で注目すべき新機能の一つは、「Azure Marketplace」との統合です。この機能は、Azure Marketplace上のパッチ済みOSイメージからAzure Stack HCIクラスタに展開するための仮想マシンイメージを準備し、Azure Stack HCIクラスタのOSギャラリーに格納します(画面4)。
作成可能なイメージは「Windows Server 2022 Datacenter:Azure Edition、Windows 11 Enterprise multi-session」「Windows 10 Enterprise multi-session」の第2世代仮想マシン(Gen2)用です(画面5)。
Azure Editionは「Windows Server用Azure Automanage」によるホットパッチやSMB over QUICに対応するもの、Windows 10/11 Enterprise multi-sessionは「Azure Virtual Desktop(AVD) on Azure Stack HCI」用のイメージです。Azure Editionについては、ISOイメージのダウンロード提供も開始されました。
作成された仮想マシンイメージは、オンプレミスで準備したこれまでのOSギャラリー内のWindowsやLinuxイメージと同じように、Azure Stack HCIクラスタ上に仮想マシンをデプロイする際に選択できるようになります。
この他、Public Preview 2では、Azure Arc仮想マシン(プレビュー)でデプロイした仮想マシンで、VM拡張機能による「Azure Arc for Servers」のゲスト管理を自動的に有効になる新機能も追加されています(画面6)。
今回の発表には、Windows Server Datacenterの「ソフトウェアアシュアランス(SA)」に含まれる「Azureハイブリッド特典」の拡張も含まれます。これまでのAzureハイブリッド特典は、オンプレミスのWindows ServerのライセンスをAzureに持ち込むことで、少ないコンピューティング料金でWindows仮想マシンを実行できるというものでした。
今回の発表では、Windows Server DatacenterのSAがあれば、以下の有料サービスを追加コストなしで利用できるようになります。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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