AIの定義にはいろいろあると思いますが、基本的には「人間の方が優秀」と思いたいじゃないですか。
でも、「過去のデータに基づいて、現状を最適化する」という文脈では、正直なところAIは「人間より優秀」だと思います。それはそうですよね。膨大なデータを学習しているのですから。しかも、その反応はすごく速い。
もちろん、中には裏付けがないものもあるので、事実かどうかを確認する必要はありますが、「情報」という意味での基本的な能力は、人間よりも優れていると思います。
そうすると、大切になってくるのは「人間は、何が得意なのか?」「どういうところに力を入れるべきなのか?」だと思うのです。
それは何か?
1つ目は、「ひらめき」です。異なるものを組み合わせて、新しい概念を作り出すのは、AIには難しい。
私が、ひらめきを得るために大切にしているのは「目の前の課題と向き合うこと」です。人口減少をはじめ、社会の中は課題だらけです。「この課題をどう、解決するか?」を考え始めると、明確な解決策があるわけではないので、「AIに置き換えられるのでは?」といった不安を抱えている場合ではなくなります。というより、さまざまな社会課題を、AIにサクッと解決してほしいぐらいです。
2つ目は、「人となり」ですね。AIには人格がないので、「私は、何者か」というところが大切になってくる。「○○さんなら、信頼できる」「○○さんって、いい人ですね」と言われることって、結構大切なのかも。
3つ目は、「内発的な動機」です。つまり「私は、どうしたいのか」です。AIにあるのは過去の情報です。人間にあるのは未来です。
4つ目は、「泥臭いことをいとわない」こと。ユーザーと話したり、ユーザーにあった提案をしたりしながら、心の距離をいかに近づけるか。これからは、いままで以上にコミュニケーションが大切になってくるかもしれません。コロナ禍も落ち着きましたし、案外、飲み会が重要かもしれませんよ。
5つ目は、「体験」ですね。AIは、体験はできません。仕事を通じて、仲間やユーザーと楽しむこと。
このような「人の得意なこと」に取り組んでいくことが重要なのではないかと思います。
とまぁ、あれこれお話してきましたが、大切なのは「過度に恐れないこと」だと思います。
これまで、狩猟社会が農耕社会になり、工業社会から情報社会になり、いま、創造社会に変化してきました。恐らくこれまでも社会が変化する中では、さまざまなものが淘汰(とうた)されてきたのでしょうね。
言い方を変えると、社会の変化に合わせて、創造社会に最適なツールが出てきたのだと思います。
とはいえ、社会が大きく変わり、正解が何かよく分からない中、とてつもない新たなツールが出てくると、何となく置いていかれているような気がして不安になりますよね。私もそうです。
でも、恐れていても何も変わらないので、目の前のできることから関わっていければいいのかな、と思います。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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