インダストリー4.0で先行するドイツをはじめ、欧州では5Gの実用化が進んでいる印象があるが、実際はどうなのだろうか。進んでいるとすればその要因、「鍵」はあるのだろうか?
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2023年6月24日、筆者は第89回情報化研究会を開催した。メインの講演はイスラエルに本社を置く「ASOCS」のCEO、ギラッド・ガロン氏による“Private 5G - keys to successful commercial deployment and industrial use cases”だった。
欧州で5Gの実用化は進んでいるのか、進んでいるとすればその「鍵」は何なのかが分かる講演を、とお願いしたのだ。ここでの「Private 5G(プライベート5G)」とは、日本の「ローカル5G」のことだ。海外では「ローカル5G」という呼称は使われていない。
ASOCSはプライベート5G用のソフトウェアをサブスクリプションで提供している。5G RAN(Radio Access Network:無線アクセスネットワーク)の製品「CYRUS」は、CU(Centralized Unit)、DU(Distributed Unit)、RAN Managementから成る。これらは汎用(はんよう)サーバ上の仮想基盤で動作する。
もう1つの製品「Hermes NGP」は、ポジショニングサービスを提供する。5G CoreやRUは持っておらず、プライベート5G全体のインテグレーションも行っていない。SIerが別にいるということだ。これまでに商用、PoC(概念実証)、ラボ構築を合わせて世界で約40のプロジェクトで使われている。その中には大規模な自動車工場や港湾、医療機関が含まれている。ユースケースとして多いのはスマートファクトリーだという。プライベート5Gの構成とASOCSの製品の位置付けを図1に示す。
ASOCSの製品は、Open RAN(Open Radio Access Network:O-RAN Allianceが策定したオープンなRANアーキテクチャ、インタフェース)、vRANに対応しており、O-RU、5GCと相互接続してマルチベンダーによる柔軟でコストパフォーマンスの高いプライベート5Gを構成できる。Web GUIで全て操作できるため、エンドユーザーが操作、設定変更を実施可能なことも特徴だ。
eMBB(Enhanced Mobile Broadband)、URLLC(Ultra-Reliable and Low-Latency Communications)を実装済みで、eMBBとしてはセル当たり下り1Gbps以上のスループット、URLLCは往復10ミリ秒の遅延値を実測している。
ネットワークスライスも実現されており、eMBBのスライスとURLLCのスライスを1つのプライベート5G上に定義できる。
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