阿部川 4年間で仕事の内容や責任の範囲に変化はありましたか。
マユールさん 開発メンバーの一人として入社しましたので、入社当初は現在よりも責任範囲はずっと少なかったです。2年たったころから、多くの業務を任せてもらえるようになりました。
阿部川 ご自身から見て、なぜそうした変化が訪れたのだと思いますか。なぜ会社はあなたにそのような仕事を任せるようになったのか、ということですね。
マユールさん そうですね、私の仕事の進め方にあると思います。私は自分でやり方を考えてそれを完成するまでやるのが好きです。ただ開発には時間的制約がありますので、自分でゴールを設定し、そこに向かうためのプロセスややり方を説明し、そして達成する(という進め方をしました)。これを繰り返しできたことが認められたのだと思います。
また、常にチャレンジングなタスクを求めてきました。単にチームのリーダーが求めるものを達成するだけではなく、なぜそれを行うのか、どのような利点があってどうしてこのやり方を選んだのか、などを理解するようにしました。それが認められ、仕事を任せてくれるようになったのと思います。
子どものころ、「客観的な視点を持てた」というお話がありましたが、しっかり今に生きていますね。
阿部川 仕事で一番といっていいほど大切なことは「目的」ですからね。それがなく戦術だけに走ると失敗する。そのような姿勢をどこで身に付けたのですか。
マユールさん 子どものころからのくせだと思います。なぜそうなるのか、なぜこれが必要か、他にやり方がないのか、そのような可能性を考えるのが生まれついての性分のようです。
阿部川 “インド教育のたまもの”といった感じがしますね。
阿部川 将来やりたい仕事、なりたい姿はありますか。
マユールさん 「業界のリーダー」になりたいですね。特に技術について実際の仕事やオンラインのコースをたくさん受講し、先進的なものを学び続けていきたいと思っています。そして業務やプロジェクトの全体をマネジメントできる能力を身に付け、どのような問題に対してもクイックに、的確な解決策が提供できるようになりたいと思っています。これが究極のゴールでしょうね。
阿部川 往々にしてエンジニアの将来は、技術に特化するかマネジメントに進むかの二者択一で語られますが、マユールさんのお話ではどちらも必要ですね。
マユールさん その通りです。マネジメントに対して問題が持ち込まれても、その技術的な側面を理解できていなければ、解決策を考えられません。逆もそうです。どちらか一方に深く、というより、どちらも全体的に理解していることが必要です。
阿部川 ただ、それを実現するには一生懸命働かないとできません。学ぶことは一生ですね。でもマユールさんはそれを楽しんでいる。
マユールさん はい、仕事そのものがとても楽しいし、そう思ってずっとやってきています。
阿部川 マユールさんにとって仕事とは何でしょうか。
マユールさん 全く新しいことから学び、深く探求することです。良いアイデアを持っているだけでは何にもなりません。実際に手を動かして取り組むと、全く新しいチャレンジが必要になります。そうすると取り組むこと自体が楽しくなってくる。これまで、それを繰り返してきました。私にとっては、その繰り返しこそが仕事ですし、今後もそれを続けていきたいと思っています。
以前も書いたが、インドでのITエンジニアになるための競争はすさまじい。エンジニアになるためにはたとえ嫌いであってもITを学ぶ。その姿勢の良しあしは別にして、掛け算を19の段まで暗記するなど、まるで世界のエンジニア不足をこの一国で満たすかの勢いだ。
そしてエンジニアになれば、国籍は不問、複数の国をまたいで多国籍のエンジニアと仕事をすることが当然だ(ただし英語はマスト)。コロナ禍でなくとも、エンジニアはオンラインで仕事ができる。それができれば、エンジニアには、またIT業界には、まだまだ無限ともいえる仕事がある。それができなければ、答えは明白だ。
アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 訪問教授 インタビュアー、作家、翻訳家
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。
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