ローコード/ノーコード開発ツールにメリットがあることは言うまでもないが、IT部門にとって気になるのが「導入しても活用できるのか、しっかりと定着するのか」といった点だ。導入しても、いつも同じ人が開発していたり(属人化)、業務に合わず使われなくなったり(陳腐化)するのでは意味がない。ではIT部門として、どういったアプローチを採るべきなのか。
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「スキルがなくても業務アプリを簡単に開発できる」といったうたい文句で注目されがちなローコード/ノーコード開発ツール。しかし、その部分だけに目を奪われていると「有象無象の業務アプリが大量に作成され、管理できない」「IT部門への問い合わせが急増し、業務に支障が出る」といったトラブルに巻き込まれかねない。
大切なのは、事業部門が主体性を持って開発に携わり、それでいてIT部門によるガバナンスが効いている状態を作り出すことだ。難易度が高い取り組みだが、それでも積極的に進める企業がある。日本航空(以下、JAL)もそうした企業の一つだ。
本稿は、@ITが開催したオンラインセミナー「ローコード/ノーコード開発セミナー 2023 夏」で発表された同社の講演「JAL IT部門が推進するユーザー伴走型アプリ開発の歩み」から、事業部門を巻き込んだ業務アプリ開発の最適解を探る。
JALのIT部門は主に3つの組織で構成されている。IT戦略を担う「IT企画本部」、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略などを推進する「デジタルイノベーション本部」、システム開発を担う「JALインフォテックを中心としたグループ会社」が密に連携しながら、JAL全体のITを支えている。しかし、「近年は業務部門や現場の期待に応えきれない状況に陥っていた」とJALの吉原公貴氏(IT企画本部 IT運営企画部 運営グループ 主任)は振り返る。
「例えば、『OJT(On the Job Training)の評価結果をまとめて本人や次の講師にすぐ共有したい。システムで対応できないか』といった相談があっても『開発するためには要件定義や開発、検証で1年かかる』としか回答できませんでした。当然、そこまで時間がかかるなら不要という結論になってしまいます。ウオーターフォール型の開発では工数や期間がかかるのは当然だと考えていた一方で、IT企画本部としても社内のニーズに応えられないもどかしさ、無力さを感じていました」
そうした意識が変わるきっかけになったのは、クラウドベンダーや他社の事例だ。その事例では、マネージドサービスやツールを活用することで業務アプリをたった2日で開発していた。吉原氏にとってそれは「かなりの衝撃だった」という。
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