1000近くに上る追加要件の多くを受け入れ仕様凍結をしたにもかかわらず、さらに171項目の追加要件を突き付けられたベンダー。開発が遅延し、納期を守れなかったことで訴えられてしまった彼らを裁判所はどう判断したのか――。人気過去連載を電子書籍化して無料ダウンロード提供する@IT eBookシリーズ。第111弾は「IT訴訟解説」のパート5をお贈りする。
2008年8月、旭川医科大学は電子カルテを中核とする病院情報管理システムの刷新をNTT東日本に依頼した。
プロジェクトの開始直後から、現場の医師たちによる追加要件が相次ぎ、プロジェクトが混乱した。NTT東日本は、1000近くに上る追加項目のうち、625項目を受け入れた上で、仕様を凍結(もうこれ以上要件の追加、変更は行わないと合意すること)し、納期も延長することになった。
ところが仕様凍結後も現場医師らの要望はやまず、さらに171項目の追加項目が寄せられ、NTT東日本はこのうちの136件の項目を受け入れたが、開発はさらに遅延し、期日通りにシステムを納品できなかった。
NTT東日本は「プロジェクトの失敗は旭川医大が要件の追加、変更を繰り返したことが原因だ」と損害賠償を求め、旭川医大は「NTT東日本が納期を守らず、テスト段階での品質も悪かった」と反論し裁判になった。これが「旭川医大の惨劇」のあらましである。
「ベンダーのプロジェクト管理義務」が問われた本件、裁判所はどう判断し、どうすれば悲劇は防げたのか――。
@IT eBookシリーズ 第111弾『「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説 vol.5』は、IT訴訟の和解調停や裁判の補助を長年担当してきた細川義洋氏が本事件を3回にわたって詳しく解説する「旭川医大の惨劇」シリーズのほか、IT業界の労働問題、要件定義の責任の所在、検収の証拠など、IT業界で働くエンジニアたちがいつ当事者になってもおかしくない裁判の数々を解説する。
同じような惨劇を二度と起こさぬよう、本ブックレットを読んで法的知識を身に付け、過去事例で学んでもらいたい。
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