Microsoftは2023年9月26日(米国時間)、Windows 11およびWindows 365クラウドPCの新機能として、「Windows 365ブート」と「Windows 365スイッチ」の一般提供を発表しました。
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「Windows 365 Cloud PC(クラウドPC)」は、「Azure Virtual Desktop(AVD)」の技術をベースに、セットアップと管理を簡素化した「サービスとしてのデスクトップ」(Desktop as a Service、DaaS)であり、「Microsoft 365 Apps」を含む(または含まない)、「Windows 11」または「Windows 10 Enterprise」の仮想デスクトップをエンドユーザーに割り当てて提供します。
クラウドPCには、2つのエディション(Business、Enterprise)と、エディションごとに3つのプラン(Basic、Standard、Premium)が用意されています。
Windows 365 Businessは、中小規模の企業や組織を対象としており、クラウドPCをシンプルに購入、デプロイ、管理できます。管理者は「Windows 365ポータル」(windows365.microsoft.com)を使用して、「組織の設定」でクラウドPCの設定をカスタマイズし、「Microsoft Entra ID」(旧称、Azure Active Directory)のユーザーにクラウドPCのライセンスを割り当てることで、ユーザー専用のクラウドPCをプロビジョニングできます。OS環境の日本語対応にも標準で対応しています。
一方、Windows 365 Enterpriseは、「Microsoft Intune」でデプロイおよび管理します。クラウドPCの設定は「プロビジョニングポリシー」として定義し、Microsoft Entra IDだけでなく、オンプレミスの「Active Directory」とのハイブリッドID環境や、シングルサインオン(SSO)の有効化、Azureネットワークへの接続などを詳細に設定できるため、企業や組織のハイブリッドIT環境に柔軟に対応できます。もちろん、こちらもOS環境の日本語対応に標準で対応しています(画面1、画面2)。
クラウドPCのプロビジョニングには1時間ほどかかりますが、プロビジョニング完了後、クラウドPCを割り当てられたエンドユーザーは、「Windows 365ポータル」(windows365.microsoft.com)または「Windows 365」アプリを使用して、自分のクラウドPCにいつでも、どこからでも接続して、作業を継続できます(画面3)。
Microsoftは、Windows 11 バージョン22H2向け2023年9月の「オプションの更新プログラム」(更新プログラムのプレビュー、Cリリース、KB5030310)リリースと同じ日に、クラウドPCへの接続の新しいエクスペリエンスを提供する「Windows 365ブート(Windows 365 Boot)」と「Windows 365スイッチ(Windows 365 Switch)」の一般提供を開始しました。
いずれも、Windows 11 バージョン22H2のOSビルド「22621.2361」以降を実行するProおよびEnterpriseエディションで利用可能な新機能です。一部報道では、Windows 11 バージョン23H2の新機能のように紹介されていますが、既にWindows 11 バージョン22H2で利用可能になっている新機能です。
2023年9月のオプションの更新プログラムでは「Copilot in Windows(プレビュー)」など、多数の新機能が「制御された機能ロールアウト(CFR)」技術による段階的なロールアウトが始まりましたが、Windows 365ブートおよびスイッチは、新機能の有効化(Windows構成更新プログラムによる先行的な有効化)には関係なく利用できるようです。
Windows 365ブートは、複数のユーザー(パートタイマーやシフトワーカーなど)が同じWindows 11(OSビルド「22621.2361」以降)の物理デバイスを使用して、自分専用のクラウドPCに接続する機能を提供します。
Windows 365ブート用に構成された物理デバイスでは、エンドユーザーが物理デバイスのOS(Windows 11)に対話的にサインインして使用することはなく(「タスクマネージャー」の禁止など、システム的に制限を加えることも可能で、制限することを推奨)、ローカルデバイスに対話的にサインインするのと同じエクスペリエンスで、直接ユーザー専用のクラウドPCに接続し、サインインさせることができます。
Windows 365ブートは、Microsoft Intuneに用意された専用のウィザードを使用して、「Windows Autopilot」用の構成プロファイルを準備し、それを使用して物理デバイスをセットアップすることで導入できます(画面3、画面4)。
そのため、Windows 365 Businessでは利用できません(一般提供のアナウンスにはできそうに記述されていますが、その方法は説明されていません)。Windows 365 EnterpriseおよびWindows 365 Frontline(1ライセンスで複数のクラウドPCを利用できる、共有PC向けプラン)で利用できます。
Windows 365ブートは、Windows Autopilotへの物理デバイスの登録と、物理デバイスのOOBE(Out-of-Box-Experience)セットアップで利用可能になる機能であるため、既存の物理デバイスに追加で利用可能にするのは困難です。残念ながら、筆者にはその環境がないため、Windows 365ブートの展開とエクスペリエンスを検証することはできませんでした。
Windows 365スイッチは、Windows 11の「タスクビュー」を使用して、ローカルの複数のデスクトップ切り替え操作と同様のエクスペリエンスで、クラウドPCのデスクトップと物理デバイスのローカルデスクトップを切り替えることができる機能です(画面6〜8)。
この機能は、最新のWindows 11 バージョン22H2と、Microsoft Storeから無料で入手できる最新の「Microsoft 365」アプリ(本稿執筆時点ではバージョン「1.3.192」)で利用可能になります。
ローカルデバイスとクラウドPCがWindows 365スイッチのシステム要件を満たしていれば、すなわちWindows 11 バージョン22H2(OSビルド22621.2361)以降で(クラウドPC側も)、最新の「Windows 365」アプリがインストールされており、Windows 365ライセンスが割り当てられていれば、Windows 365スイッチが利用できるようになり、Windows 365アプリの「︙(このクラウドPCを管理する)」メニューにWindows 365スイッチを利用するための「タスクビューに追加」メニューが追加されます(画面9)。
なお、「タスクビューに追加」メニューが利用可能になるまでには、Microsoft Storeから「Windows 365」アプリをインストールしてから数時間待つ必要があることに留意してください。
Windows 365ブートとWindows 365スイッチの詳細については、前掲のGA(General Availability、一般提供)アナウンス、および以下の公式ドキュメントを参照してください(最新情報は英語ドキュメントで)。これらの機能は一般提供が始まったばかりで、既知の問題が幾つか存在します。既知の問題については、以下のドキュメントの「トラブルシューティング|既知の問題」を参照してください。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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