Windows 10のサポート終了となる「2025年10月14」日まで、残すところ2年となりました。Windows 11(バージョン21H2)のリリースからもう2年以上が経過しています。まだWindows 10を企業のクライアントOSとして利用しているところも多いようですが、そろそろWindows 11への移行に本腰を入れるときです。
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以下の製品ライフサイクルのページに記されている通り、「Windows 10」の「半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)」は、現在の「バージョン22H2」が最後のバージョンとなり、製品としてのWindows 10 SACのサポートは「2025年10月14日」に終了します(画面1)。
MicrosoftはWindows 10の各バージョン(機能更新プログラム)について、H1(春)リリースが18カ月、H2(秋)リリースが18カ月(HomeおよびPro)または24カ月(EnterpriseおよびEducation)のサポートを提供してきました。
これらの期間に関係なく、全てのエディションについてWindows 10 バージョン22H2は、製品サポート終了(End of Support、EOS)までセキュリティ更新プログラムを含むサポートが提供されることになります。それ以前のバージョンについては、Windows 10 バージョン21H2のHomeおよびProエディションが2023年10月10日に終了しました(日本時間10月11日の品質更新プログラムが最後)。EnterpriseおよびEducationに対しては「2024年6月11日」までサポートが残っていますが、バージョン21H2のままで使用する特別な理由があるとは考えられません。
Windows 10はバージョン2004(OSビルド19044)以降、コアが共通(VB_RELEASE)であり、バージョン20H1(OSビルド19043)、21H2(OSビルド19044)、22H2(OSビルド19045)は「Windows Update」または「Windows Server Update Services(WSUS)」経由で小さな有効化パッケージ形式の更新プログラム(KB5015684、約31KB)のインストールで、素早く更新できます。OSのコアが共通で、通常のアップグレードインストールは行われないため、アプリケーションやハードウェアの互換性問題も心配ありません。
そして、Windows 10 バージョン22H2になれば、もうEOSまで新しい機能更新プログラムが提供されることはなく、毎月の品質更新プログラムのインストールだけでよくなります。もし、Windows Updateの機能更新プログラムの延期ポリシーや、WSUSでWindows 10 バージョン22H2のインストールをブロックしているのであれば、できるだけ早急にバージョン22H2にアップデートしましょう(画面2、画面3)。
現在、Windows 10を企業のクライアントOSとして使い続ける理由はさまざまでしょう。アプリケーションや周辺機器の互換性問題はその一つです。
最も大きな理由は、Windows 11で厳しくなったシステム要件(TPM《Trusted Platform Module》2.0やUEFI《Unified Extensible Firmware Interface》、プロセッサモデルなど)だと思います。筆者の手元には、「Windows 7」プリインストールPCを、「Windows 8.1」、Windows 10へとアップグレードしてきたノートPCが、いまだに現役でWindows 10 バージョン22H2で稼働しています。しかし、これをWindows 11にアップグレードすることは不可能です。
このように、Windows 11に対応できないデバイスを、Windows 11に移行する方法はデバイスのリプレース以外にありません。
Windows 10は機能更新プログラムの提供が年2回あるため、Windows 10 バージョン22H2を実行しているのであれば、古いOSだとは全く感じないでしょう。しかし、Windows 10という1つの製品で考えると、2015年に登場し、8年を過ぎたところです。2025年10月のEOSは、Windows 7やWindows 8.1と同様に、約10年間のサポートの終了と考えることもできます。Windows 11登場から10年先を見据えて新しいデバイスにリプレースすることは、快適なコンピューティング環境を維持するために十分に意味のあることだと思います。
Windows 11の機能更新プログラムは1年に1回のH2(秋)リリースとなり、各バージョンのサポート期間もリリース日から24カ月(HomeおよびPro)または36カ月(EnterpriseおよびEducation)と長くなるという利点もあります。
しかし、大量の古いWindows 10デバイスを、一気にWindows 11デバイスにリプレースするには膨大なコストがかかります。残り2年という猶予期間内に、計画的にリプレースを進めていくのがよいでしょう。
Microsoftは2023年4月に、Windowsの「長期サービスチャネル(Long Term Servicing Channel、LTSC)」リリースのロードマップについて明らかにしました。現在、Windows 11ベースのLTSCバージョンは提供されていませんが、発表されたロードマップによると、2024年後半に「Windows 11 Enterprise LTSC」および「Windows 11 IoT Enterprise LTSC」がリリースされるそうです。時期的に見て、Windows 11の“次の次のバージョン”、Windows 11 バージョン24H2をベースにしたものになると思われます。次は「Windows 12」なんてうわさもありますが、Microsoftからは製品名の変更について何の発表もありませんし、Windows 11のLTSCバージョンと同じビルドベースになる場合(違う可能性もあります)、製品名の整合性が取れなくなってしまいます。
Windows 10/11のLTSCリリースは、企業のクライアントOS向けではなく、例えば、規制が厳格で更新できないデバイス、インターネットに未接続の製造現場の制御システム、機能がロックされ長期サポートが必要なシステムなど、特殊な用途を想定したものです。
Microsoftは「Windows 10 Enterprise LTSC 2019」までは固定ライフサイクルポリシーで10年のサポートを提供してきましたが、「Windows 10 Enterprise LTSC 2021」から延長サポートを廃止し、メインストリームサポートのみの5年に短縮しました(IoT Enterprise 2021は10年)。Windows 11 Enterprise LTSCも同様に5年のサポートとなると思われます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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