Microsoftは2023年10月31日(米国時間)、Windows 11の最新の年間(年次)リリース「Windows 11 バージョン23H2(Windows 11 2023 Update)」の一般提供を開始しました。Windows 11 バージョン22H2を実行しているデバイスは、Windows Updateで簡単かつ最短の方法で新バージョンに切り替えることができます。
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「Windows 11」のバージョン22H2以降、Microsoftは「品質更新プログラム」に含める形で、「機能更新プログラム」よりも短いサイクルで多数の新機能を追加してきました。これは「Momentアップデート」と呼ばれ、Windows 11 バージョン22H2にはこれまで4回提供されました。
現在は、2023年9月末から「Copilot in Windows」を含む多数の新機能の段階的なロールアウトが始まり、11月の品質更新プログラムで広範囲のデバイスで新機能が利用可能になる予定です。2023年5月以降、Windows 11 バージョン22H2に追加された新機能については、以下の「Windows構成の更新プログラム」のリリース情報で確認できます。これらの機能はWindows 11 バージョン23H2の新機能と重複していることが分かるでしょう。
なお、管理されているデバイスでは、Windows 11 バージョン22H2の新機能の一部が無効化されています。これは「エンタープライズ機能の制御」と呼ばれる仕組みです。管理されているデバイスをWindows 11 バージョン23H2に更新した場合、一時的な制御が終了し、利用可能になります。
Windows 11 バージョン23H2(OSビルド22631)とバージョン22H2(OSビルド22621)は、「NI_RELEASE」(NIは「ニッケル」に由来)と呼ばれる共通のOSコアを持ち、品質更新プログラムは共通であり、品質更新プログラムで更新されるリビジョン番号(22631.xと22621.xのx)です。そのため、アプリケーションやデバイスの互換性問題を心配することなく、新バージョンに切り替えることができます。ちなみに、Windows 11 バージョン21H2(OSビルド22000)は「CO_RELEASE」(COは「コバルト」に由来)でした。
Windows 11 バージョン22H2を実行するデバイスに対しては、Windows Updateを通じて「有効化パッケージ(eKB)」と呼ばれる小さなバージョン切り替えパッチが提供され(今回のKB5027397は100KB程度)、通常の品質更新プログラムと同じようなエクスペリエンスで(むしろ短時間で)Windows 11 バージョン23H2にアップグレードできます。
個人ユーザーであれば、Windows Updateで「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」をオンにした上で、「更新プログラムのチェック」をクリックすることで、いち早くWindows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムを取得できます(その場合でも、すぐには全てのデバイスに提供されるわけではないようです)(画面1、画面2)。数カ月後に広くブロード展開が始まれば、Windows Updateを通じて自動的に更新されます。
Windows 11 バージョン22H2のユーザーにとってこの機能更新プログラムは、新機能が主な目的ではなく、HomeおよびProエディションは次の24カ月(2025年11月まで)、EnterpriseおよびEducationエディションは次の36カ月(2026年11月まで)にサポートライフサイクルをリセットするためのものと考えてよいでしょう。そして、Windows 11 バージョン23H2に対しては、今後もMomentアップデートで新機能が追加されていくことになるでしょう。
Windows 11 バージョン21H2や「Windows 10」のユーザーにとって、Windows 11 バージョン23H2の機能更新プログラムはメジャー(大型)アップグレードであり、こちらもWindows Updateで入手できます。しかし、大容量のダウンロードとアップグレードインストールのために多くの時間がかかります。
Windows 11 バージョン22H2のデバイスの場合は、Windows Updateで機能更新プログラムをインストールするのが、最も安全で短時間で新バージョンにアップグレードできます。
この機会に、クリーンインストールを実施し、デバイスのOS環境をリフレッシュしたい場合や、Windows 11 バージョン21H2やWindows 10のデバイスの場合は、以下のサイトから「Windows 11インストールアシスタント」を使用して手動でアップグレードを開始できる他、インストールメディアを作成して使用することも(2023年11月1日時点ではメディア作成ツールはバージョン23H2に対応したものに更新されていません)、ISOメディアを直接ダウンロードすることもできます。手動アップグレードで設定やデータを引き継ぐ場合は、Windows 11 バージョン22H2であっても、Windows 11 バージョン21H2以前と同様、アップグレードインストールが行われることになります(画面3)。つまり、有効化パッケージは使用されず、大容量のダウンロードが行われます。
Windows 10 バージョン21H2以降には、2023年8月〜10月の品質更新プログラムで、新しいシステムコンポーネントとして「Windowsバックアップ」アプリが追加されました。このアプリを使用すると、「Microsoftアカウント」にファイルや設定、インストール済みストアアプリの状態をバックアップし、クリーンインストール時にそれらを復元できます(画面4)。このアプリについては、次回、説明します。
「Windows Server Update Services(WSUS)」で管理されているデバイスについては、アーキテクチャに応じて「Windows 11, version 23H2 x64 2023-10B」または「Windows 11, version 23H2 arm64 2023-10B」を承認、配布することで、Windows 11 バージョン23H2の有効化パッケージまたは通常の機能更新プログラムをWSUSクライアントに提供できます。
Windows 10の機能更新プログラムは、「機能更新プログラム」と「機能更新イネーブルメントパッケージ経由」の2つに分かれていましたが、WSUSでWindows 11 バージョン22H2以降向けの更新に採用された「Unified Update Platform(UUP)」ベースのパッケージでは、通常の機能更新プログラムと有効化パッケージが統合され、1つになったようです。「Windows 11, version 23H2 x64 2023-10B」のファイル情報を確認すると、有効化パッケージである「KB5027397」が含まれていることが分かります(画面5)。
企業では、この他にも「Microsoft Intune」や「Microsoft Configuration Manager」「グループポリシー」(画面6)など、幾つかの方法でアップグレードをコントロールできます。個人ユーザーであってもPro以上のエディションを使用しているなら、ローカルポリシーで保留日数を「0日」に設定すれば、すぐにWindows 11 バージョン23H2を取得できます。
最後に、企業でWindows 11 バージョン23H2を評価したいという場合は、以下の90日評価版を利用できます。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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