デロイト トーマツ グループは、「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査」の2023年版を発表した。特定のクライシス(企業に重大な影響を与える出来事)については、51.4%の会社が対応計画を策定しているものの、リスクマネジメントと連動した体系的な対応計画を策定している企業の割合は一桁台と非常に少なかった。
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デロイト トーマツ グループは2024年4月2日、「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査」の2023年版を発表した。これは、日本の上場企業を対象に、優先的に対処すべきリスクについて調査した結果をまとめたもの。325社から有効回答を得た。
日本国内で優先的に対処すべきリスクを見ると、第1位は「人材不足」だった。
多くの業種で人材不足への懸念が上昇しており、特に小売り、流通業では、人材不足への懸念が2023年よりも15.7ポイント増加していた。第2位は「原材料、原油価格の高騰」。第3位には、「サイバー攻撃、ウイルス感染などによる情報漏えい」が入った。
海外で優先的に対処すべきリスクのトップは、「中国、ロシアにおけるテロ、政治情勢」。デロイト トーマツ グループは「国際情勢が一段と不安定化していることから地政学リスクの高まりが背景にある」と分析している。第2位は「人材不足」。第3位は「グループガバナンスの不全」だった。
2022〜2023年に日本国内で企業が経験したクライシスを見ると、「人材、労務関連」が2022年の8%から2023年は9.5%に増加した。デロイト トーマツ グループによると、長時間労働やサービス残業、ハラスメントといった労務課題に加え個人の労働観の多様化などが背景にあるという。
「クライシスマネジメントプラン」(リスクが顕在化した場合に被害を最小限にするための基本方針や対応計画)を立てているかどうかを聞いたところ、「BCP(事業継続計画)や不祥事マニュアルなど、特定のクライシスを対象としたプランを策定済み」と答えた企業(本社)の割合は51.4%。これに対して「リスクマネジメントと連動した体系的な枠組みで整理されたクライシスマネジメントプランを策定済み」と答えた企業の割合は4.0%と著しく低かった。
デロイト トーマツ グループは「自然災害の発生や感染症の流行、戦争の勃発などを踏まえ、非常事態時に陥った際に円滑な復旧するために、リスクマネジメントと連動したプランを策定する必要がある」としている。
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