Oracleは2024年9月に米ラスベガスで開催した「Oracle CloudWorld 2024」に合わせ、「Oracle Cloud Infrastructure」や「Oracle Database」に関する複数の新機能、サービスを会期中に発表した。本記事では、特に開発者やITエンジニアに関わる内容に絞って発表内容をお伝えする。
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Oracleは2024年9月に米ラスベガスで開催した「Oracle CloudWorld 2024」に合わせ、「Oracle Cloud Infrastructure」(以後、OCI)や「Oracle Database」に関する複数の新機能、サービスを会期中に発表した。
本記事では、OCIやOracle Databaseに関する発表内容を中心に、開発者やITエンジニアに関わる内容に絞ってお伝えする。
「OCI Generative AI Agents」は、さまざまな生成AI(人工知能)ワークロードを支援するエージェントをフルマネージドで提供するサービスだ。このサービスの第1弾として「RAG Agent」の一般提供を開始した。
RAG Agentを活用することで、RAG(検索拡張生成)の構築や生成AIとの統合といった作業をせずに、RAGを利用できるという。Rag Agentを通じてハルシネーション(幻覚)を低減するためのセルフチェック機能も提供している。
Oracleは自然言語からSQLを自動生成する「SQL Agent」の開発を進めていることも明らかにした。
OCIの生成AIサービス「OCI Generative AI」で、Metaの大規模言語モデル(LLM)である「Llama 3.1」(70B〈700億〉および405B〈4050億〉パラメーター)の提供を開始した。
OCI Generative AIでは、Llama 3.1について次の機能をサポートしているという。
ユーザーはチャットインタフェースを通じて、オンデマンドホスティングモデルAPIまたは専用ホスティングエンドポイントからこれらのモデルにアクセスできる。
データサイエンス、機械学習プラットフォームをマネージドで提供する「OCI Data Science」において、「AI Quick Actions」機能を通じて、Hugging Faceからオープンソースの生成AIモデルを数クリックでOCI上にデプロイできるようになった。
Python、JavaScript、SuiteScript、Rust、Ruby、Go、PL/SQL、C#、Cなどのプログラミング言語のコーディングを支援するAIコードコンパニオン「Oracle Code Assist」のβ版が「Oracle Beta Program」を通じて利用可能になった。Oracleによると、Java、SQL、OCIでのアプリケーション開発にも最適化されているという。
Oracle Code Assistのβ版は、JetBrainsの「IntelliJ IDEA」や、Microsoftの「Visual Studio Code」といった開発環境の拡張機能として利用できる。
開発者は、Oracle Code Assistを活用することで、コードの生成や補完、テストケースの作成、コードの分析や最適化の提案、コードの説明文、組織固有のポリシーに基づく提案などを受けられるとしている。
Oracle Code Assistの詳細は、下記記事を参照いただきたい。
OCIのマネージドKubernetesサービス「OCI Kubernetes Engine(OKE)」で、次のような機能強化を発表している。
「Oracle Database@AWS」「Oracle Database@Azure」「Oracle Database@Google Cloud」は、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft、Google Cloudとのパートナーシップに基づくサービスだ。Oracleの最新のデータベースソフトウェアとハードウェア、「Oracle Exadata」クラスタを3社それぞれのデータセンター内に持ち込むものであり、ユーザーは各社のマーケットプレースからOracleのサービスを購入し利用できるようになる。
Oracle CloudWorld 2024の基調講演に登壇したOracle 会長兼CTO(最高技術責任者)のラリー・エリソン氏は、Oracle Database@AWSの発表とともに、これらの取り組みについて「オープンマルチクラウドの時代」と強調した。
Oracleは、Oracle Database@AWSのプレビューを2024年12月にリリースし、2025年に複数のリージョンに拡張する計画だ。
Oracle Database@AWSの詳細は、下記記事を参照いただきたい。
なお、AWSはフルマネージドのOracle Databaseサービスとして「Amazon RDS for Oracle」を提供している。Oracle Database@AWSが登場するなら、Amazon RDS for Oracleをあえて選ぶ理由はあるのか。
日本メディア向けのブリーフィングに登壇した日本オラクル社長の三澤智光氏は「Amazon RDS for Oracleが今後どうなるのかは現時点(※2024年9月時点)で分からない」とした上で、「私見にはなるが、Oracle Database@AWSが提供する内容を踏まえると、Amazon RDS for Oracleを選ぶ意味はなくなるのではないか」と述べた。
Oracleは、エンタープライズ向けのアプリケーション開発において、AIを中心に据えたインフラを実現する「Generative Development for Enterprise(GenDev)」を発表した。
Oracle ミッションクリティカルデータベーステクノロジー担当 エグゼクティブバイスプレジデントのホアン・ロアイザ氏は、基調講演で、「生成AIは近い将来、エンタープライズアプリに必要な大量のコードを生成可能になるだろう。だが、人間より速く生成できたとしても、それだけでは生成AIがエンタープライズアプリを構築する現実的な手段にはならない」とした上で、生成AIをアプリ開発に適用するために、次の3つの課題を解消していく必要があると指摘した。
ロアイザ氏は「アプリケーションをモジュールに分割し、モジュールが独立して動作できるようにする取り組みが求められる」とした上で、Oracle Databaseのテクノロジーがどう役立つのか、Oracle Database 23aiで追加された新機能とともにそれぞれ解説した。
JSONデュアリティビューは、RDB(リレーショナルデータベース)とJSONデータモデルの利点を両立させる機能だ。データをリレーショナルな形式で格納しつつも、APIを通じてJSONドキュメントとしてデータを表示したり、JSONドキュメント上でデータを編集してRDB上のデータを変更したりできるようになるという。
「JSONデータベースでは、JSONデータに直接アクセスする。RDBも同様で、テーブルに保存されたデータに直接アクセスする。JSONデュアリティビューは、『アプリがデータにアクセスする形式』と『データを保存する形式』を分離するというアプローチだ。ビューの作成も簡単で、各キーと値のペアがどのテーブルとカラムに対応しているかを指定するだけだ。デュアリティビューを作成すると、自動的にREST APIやMongo APIが生成され、JSONデータのGETやPUTが可能になる。ビューを作成後も、従来通り、テーブルに対してSQLクエリを実行したり、グラフクエリを実行したりすることも可能だ」(ロアイザ氏)
JSONデュアリティビューを活用することで、アプリケーションを構成する複数のモジュールごとに必要なデータをJSON形式でやりとりできるようになり、依存関係の低減やデータ操作に関するコードを大幅に削減できるとし、AIを中心に据えた開発インフラの実現に役立つとした。
AIベクトル検索は、ドキュメントや画像などのデータを、単語やピクセルではなく、意味に基づいて検索可能になる機能だ。AIベクトルはドキュメントや画像などのデータの意味を数値化(次元として表現)する。AIモデルを使ってデータオブジェクトに対するベクトルを生成し、インデックス化することで、似た画像やドキュメントの内容が検索可能になる。
「Oracle DatabaseではAIベクトルを生成し、管理し、リレーショナルデータと統合(JOIN)することができる。5行のSQLで実行でき、クエリ全体は数ミリ秒で処理される。SQLの知識があれば誰でも5分以内にこの新機能を習得できる」(ロアイザ氏)
ロアイザ氏は、生成AI時代の開発インフラとして同社のローコード開発プラットフォームである「Oracle APEX」も紹介した。Oracle APEXではblueprintと呼ばれる宣言型言語を提供し、AIがアプリロジックを生成しやすくする環境を提供するという。
ロアイザ氏は「どんなに速い車を持っていても、舗装されていない道を走るのでは十分な性能を発揮できない。AIに全ての問題を魔法のように解決させるのではなく、AIが効果的に機能するようにインフラを変革する必要がある。GenDevは、AIのための開発インフラとして『舗装された道』を提供する」と述べた。
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