面接は事前準備が肝心:転職失敗・成功の分かれ道(19)
毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。
今回は、転職のための面接の対策として留意すべきポイントとして、最低限押さえておくべき重要ポイントについてお話しさせていただきます。
経歴を簡潔に説明
経歴書に書いた内容を基に、プロジェクトの内容をすべて説明していくとだらだらと長くなってしまいます。そこでお勧めするのが、事前に経歴を簡単に準備をしておくことです。
簡単に経歴全体を説明する際の目安はおよそ5分前後。長すぎず短すぎず、これまでの経緯とご自身の強みを簡潔で分かりやすく話せるようにまとめておくといいでしょう。さらにチャレンジしてほしいのが、ポイントを書き出し、それを口に出して説明をする練習です。
応募した会社の業務内容や、応募した職種をしっかりと理解しているか、いままでの自分の経歴の中でどの部分が評価されて書類選考が通ったのかを考え、評価されたと判断した部分を強調し、あまり関係がないと判断したポイントを簡略化して述べるなど、メリハリを利かせることが必要です。そして、具体性のある内容となるよう心掛けてください。
考え方の一貫性
実際の面接では、応募に対するさまざまな考え方を問われます。その多くは次の3つに集約されます。これらは、どれも関連性があり内容に一貫性が求められるものです。最低限整理しておくポイントとして押さえておいてください。
(1)志望動機
どうしてその会社を選んで応募したのか。応募企業のどこに魅力を感じたのかということです。事前にWebページや会社案内などの資料で、その会社の強みや魅力を理解できるまで読み込んでおきましょう。
(2)転職理由
なぜ転職を考えたのか。転職するうえでの目的など、どのような意図で応募したのか。前向きで納得しやすい理由であることが大切です。
例えば、「こういう仕事をやりたいと考え」「将来的にこのようなキャリアを積みたいと考え」といった前向きな姿勢を示すことが重要です。特に自分のキャリアプラン、ゴールを明確にし、この転職がその目的を達するためのものであることを伝えましょう。
逆に現在の会社に対する不満や批判は、印象を悪くしてしまいます。会社の人間関係や残業時間の多さなどは、どの会社でも起こり得ることです。こうした不満はいわないようにした方がいいでしょう。不満を解決するために行動を起こしていると思われると、単なる泣き言ととらえられてしまうことがあるからです。
例えば、「入社してすぐに結果を求められたのだが、まったく教育しようという姿勢がない会社だったので、転職を決意しました」という理由などはよくありません。
(3)希望職種
どのような仕事を希望するのか。また、なぜその職種を希望するのか。これと関連して、自分の強みをどのように生かし、弱みを克服するために何をしているか。将来的にはどのようにスキルアップしていきたいのか、将来の目標は、についても考えておくとよいでしょう。
上記の(1)から(3)に関する質問を想定し、それに対してどう答えるのかを、個条書きにして、次の内容を考慮してチェックしてみてください。
- それぞれの回答に矛盾点はないか
- 後ろ向きな答えになっていないか
- 論理的な構成の内容になっているか
面接時、緊張のあまり頭が真っ白になるというケースをよく聞きますが、このチェックで防げるものです。書いた内容は結構頭に残っているからです。だからこそ、書いた内容を音読して読むことが重要なのです。単に文章を丸暗記するのではなく、自分の言葉で話せるよう注意してください。
質問事項を複数用意する
面接が終盤にさし掛かったところで、面接官から質問があるかどうかを聞かれます。
質問がまったくないということは、企業に対して意欲や関心が薄いと取られる場合があります。質問事項は事前に用意しておく必要があります。しかし質問事項を用意していても、面接の会話の中で用意していた質問が解消されてしまい、質問するネタがなくなってしまう場合がありますので、質問項目は、多めに用意しておくとよいでしょう。
留意点として、下記の点についての質問はなるべく避けた方がよいでしょう。
- 会社案内やWebページを読めば分かるような内容
- 給与や待遇については、面接管からの質問がない場合は、自分からはあまり質問しない
- 教育や福利厚生についても同様で、即戦力としての意気込みや受け身な性格として取られる場合があり注意が必要
入社時期の質問
面接時に、「入社はいつぐらいが可能ですか」と聞かれる場合がありますが、在職中の方は安易に何月何日など、具体的な日にちを伝えるのは禁物です。とはいえ、ある程度の目安は伝えなければなりません。
例えば、「内定通知書をいただいてから、約1カ月から1カ月半程度いただければ、現職と調整を図ります」といういい方をしておけば、内定から入社までのプロセスで十分な時間が取れ、余裕のある退職活動ができます。しかし、契約期間に縛りのある雇用契約をしている場合は、一定期間退職することができない場合があります。特に注意が必要なのは、契約社員として勤務している方です。
長所と短所
第二新卒や経験の浅い方に対しての質問で多いのが、性格的な強み・弱み、あるいは長所・短所についての質問です。
特に短所が強調されるような答え方は、禁物です。なるべく、弱みも見方を変えれば強みになるように答えを工夫してください。
例えば、「長所は、粘り強い性格です。短所は、少ししつこいといわれることがあります」など、短所が長所の裏返しになるような表現がよいと思います。急に質問されると戸惑う場合があるので、あらかじめまとめておくとよいでしょう。
経験者の場合は、これまでに経験したトラブルについて聞かれることがあります。面接官は、トラブルの対処法から取り組み姿勢を見て性格を判断する場合があります。ご自身の性格をアピールできる事例を用意しておくことです。
訪問した時点で面接は始まっている
受付で訪問の主旨を伝える際にも、丁寧な対応を忘れずに。この段階からすでに選考は始まっています。直接の面接官ではないからといって油断しないでください。お辞儀やあいさつは忘れずに。
過去の事例で面接地に向かう際、ビルのエレベータで同乗した人が面接官と知らずに失礼な対応をし、不採用となったケースがありました。どこで誰が見ているか分かりません。
面接官は、人事担当や現場の担当者が対応するケースがほとんどです。「お忙しいところお時間をいただきましてありがとうございます」など、相手を気遣う発言は好印象を与えます。あらかじめ場面を想定して、対応を考えておきましょう。
それでは、内定を勝ち取りましょう。
著者紹介
人事系コンサルティング会社にて人事採用と教育・人事制度関連のコンサルティングに従事。その後、IT専門の人材サーチ会社にてITコンサルタントやSEを中心とした人材のキャリアコンサルタントを経験、現職に至る。これまで、IT業界を中心に2000人以上の転職支援を行った実績あり。現在、@ITジョブエージェントのパートナーとしても活躍中。
- 情報が転職を成功に導く
- 年齢とともに変わる求められる能力
- 論理思考は転職でどれほど大切か
- キャリアプラン、作成したことありますか?
- 30代後半の転職、その現実とは?
- 重要なのは、転職の目的を見失わないこと
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