論理思考は転職でどれほど大切か:転職失敗・成功の分かれ道(35)
毎日、人材紹介会社のコンサルタントは転職希望者と会う。さまざまな出会い、業務の中でこそ、見えてくる転職の成功例や失敗例。時には転職を押しとどめることもあるだろう。そんな人材コンサルタントが語る、転職の失敗・成功の分かれ道。
転職活動の中で、面接などでは論理的な説明を心掛けようとキャリアコンサルタントからいわれたことがあるのではないでしょうか。面接で説明しにくい部分があったり、複数回転職を重ねていて、業界や業種の一貫性に欠ける方もいらっしゃるかと思われます。そこをうまく表現できなかった場合、高いスキルや実績を持っていても、企業側に納得してもらえず、不合格となるケースがあるのです。
いまや中途採用では、論理的な思考が求められるのは当たり前とはいえますが、特にITエンジニアやコンサルタントなどは、非常に高度な論理的思考を求められます。また企業は、論理的でかつ一貫性のある方を好みます。これまでのご自身の経歴を思い返して、職務経歴書を書く前や面接準備において、一貫性のある話となっているか、一度確認してみることをお勧めします。
異なる職種を経験したケースでは
Aさん(29歳)は、大学卒業後に大手のシステム開発会社に入社し、システムエンジニア(SE)として勤務していました。その会社に3年ほど勤めた後、公務員を目指すため会社を退職されました。1年間ほど試験勉強に力を注ぎましたが、試験は残念ながら不合格。そのため、公務員への道をあきらめ、縁あってある経営コンサルティング会社に就職しました。
しかし会社の経営は安定せず、2年ほどで退職せざるを得ない状況になったため、転職活動を始めました。Aさんは新卒で勤務した経験のあるシステム開発会社と同じような企業を希望し、実際に応募しましたが、多くの企業から「経歴の一貫性に疑問を感じる」との評価を受け、見送り(つまり不合格)の結果となってしまったのです。
Aさんの場合、個々の退職理由を見れば納得できる内容ですが、単に、SE→公務員試験受験→経営コンサルタントという経歴を書き並べるだけでは、確かに一貫性がないと受け取られる結果となり、厳しい評価を受けるだけでした。
経歴を書き換えることはできません。そのため、このようなケースでは一貫性を出すことは難しいのですが、大学時代の専攻や思い描いていた将来像、自信の持てる分野などを合わせれば、論理的にその流れをうまく説明できたかもしれないと思います。
多くの職務を経験したSEのケースでは
Bさん(34歳)は、大学卒業以来10年近く某システム開発の会社でSEとして勤めています。入社当初はアプリケーションの開発を、その後Javaを含め複数の言語を使用したシステム開発を経験。さらにサーバ設計、キャパシティプランニング、ミドルウェアのチューニング、そしてネットワーク機器の設定やネットワーク設計などのインフラ分野でも活躍される、プロジェクトリーダー経験もある優秀なITエンジニアです。
この方が勤められている会社は、社員が10人足らずで、顧客から要求されることは極力何でも受託するようにしていたため、必然的に幅広いスキルを身に付ける必要があったのです。その結果、さまざまなスキルを得ることができたようです。
そんなBさんが転職を考えるようになり、転職活動を始めました。複数の企業に応募した結果、多くの企業では書類選考は通過したのですが、1社だけ、書類選考の段階で見送りとなりました。
やはり出た「職務に一貫性なし」の表現
その理由として会社が指摘したのが、「職務に一貫性がない」点でした。転職活動を支援していた私も、最初はその理由に納得できませんでしたが、とらえ方によってはさまざまな経験を積んだものの、コアとなるスキル、キャリアがないと判断する人もいそうだと気付きました。
便利屋として扱われているのではと疑問を持たれることも考えられます。アピールのために、幅広い職務経験を職務経歴書に書いてもらったのですが、かえってそれが仇(あだ)となったようです。
どうやら、なぜその作業を担当することになったのか、自身の考えるキャリアパスと経験した職務は整合性が取れているかなどを整理して、職務経歴書に書いておく必要があると痛感したのです。このときの経験は、私自身もキャリアコンサルタントとして大いに反省した次第です。
プリセールスエンジニアへの職種の変更希望
Cさん(35歳)は、12年間システム開発会社にて、オープン系の開発エンジニアとしてプロジェクトを経験してきました。プロジェクトでは、1メンバーとして参加したことも、リーダーとして複数のメンバーを統率した経験もあります。しかし、Cさんは開発よりもプリセールス職種を希望し、社内で異動願いを出したのですが、まったく無視されたのです。そこでプリセールスができるところを探そうと、転職活動を開始されたのです。
某システムインテグレータに応募して、書類選考は無事に通過し、面接に至りました。
しかし、その結果は見送りに。開発に専念するより顧客に提案する職務が自身に合っていると考えた結果、職種変更の決断をされたわけですが、面接の担当者はその理由だけでは不満であり、「理由が希薄である」との評価をしました。その理由自体の正否を問うわけではなく、キャリアのどの部分が生かせるのか、プリセールス職になるためにどのような努力をされているか、自身が考えるキャリアパスとの整合性は取れているか、説明が足りず論理性に欠ける内容となり、面接担当者を納得させるまでには至らなかったのです。
「なぜ?」を繰り返す
以上の方々はご経験も豊富で高いスキルをお持ちで、見送りとなった会社でも活躍される力を十分に持たれておりましたので、これらの結果は悔やみ切れません。
冒頭に申しましたとおり、論理性を持たせることは重要ですが、まずは「なぜ?」と思うことが必要です。常に「なぜ?」と考え、徹底的に物事を追求する性格であれば、職務経歴書や面接でも論理性に富んだ表現ができるかと思います。
しかし、思考の問題であるため、突然そのように考える性格に変わることはそう簡単ではありません。常日ごろから「なぜ?」を繰り返しておけば論理的思考を持てるようになると思いますので、普段からそのことを心掛けることが大切かと思います。
コンピュータは複雑な構造であり、システムは多くの要素から成り立っているため、「なぜ?」と考えさせてくれる環境を常に提供してくれます。そういう環境にいれば、論理的な思考にもなれるかもしれません。
著者紹介
山田二朗(イムカ)
大学卒業後、外資系の大手IT企業に入社し、システムエンジニア、ITアーキテクトとして、主に大手のクライアントを担当し、企画・提案から開発、導入、フォローまで幅広い活動をする。その後イムカに転職し、前職の経験を生かして、IT業界を中心としたキャリアコンサルタントとして活躍している。
- 情報が転職を成功に導く
- 年齢とともに変わる求められる能力
- 論理思考は転職でどれほど大切か
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