特集
Windows XPとは何か?

8.遠隔地からのデスクトップ操作を可能にするリモート・デスクトップ

デジタルアドバンテージ
2001/11/20
Windows XPとは何か?

 Windows XPでは、従来はサーバ向けバージョン(Windows NT 4.0 Terminal Service Edition/Windows 2000の各サーバ製品群)にのみ組み込まれていたTerminal Serviceが拡張されて標準実装され、これを応用したさまざまな機能が提供されている。Terminal Serviceは、Windows OSをマルチユーザー対応にするためのしくみで、これにより、1つのWindows OSに複数の仮想的な端末を接続して、それらが同時にWindows OSを利用できるようになる。具体的にWindows XPでは、このTerminal Serviceの機能を使って、遠隔地からのデスクトップ操作を可能にするリモート・デスクトップ、家族などで1台のWindows XPマシンを共有し、各ユーザーが同時にログオンしたまま、素早くデスクトップを切り替えられるようにする「ユーザーの簡易切り替え」機能、デスクトップを遠隔地から操作しながらのユーザー・サポートを可能にするリモート・アシスタンスが実現されている。

 ここで最初にご紹介するリモート・デスクトップは、基となっているTerminal Serviceを最もストレートにユーザー・レベルの機能として提供したものだ。Terminal Serviceでは、RDP(Remote Desktop Protocol)と呼ばれるプロトコルによってクライアントからターミナル・サーバに接続し、サーバ側で構成する仮想的なWindows端末をクライアント側から利用できるようにする。簡単にいえば、サーバ側のWindowsデスクトップを、あたかもローカルで操作しているような感覚で、クライアント側から操作できるようにする機能である。

 Windows 9x/MeやWindows 2000 Professionalにおいても、NetMeetingのリモート・デスクトップ機能を使えば、遠隔地にあるWindowsマシンのデスクトップを制御することができた。しかしこのNetMeetingのリモート・デスクトップは、ひと口で言えば操作される側の画面表示やキーボード入力/マウス入力をリモート・クライアントにリダイレクトするものであり、複数のユーザーが同時にコンピュータを操作するという前提で作られたものではない。これに対しTerminal Serviceは、Windowsをマルチユーザー対応サーバとして機能させるためのしくみであり、原理的には、複数のユーザーが同時にTerminal Serverに接続して使用することができる。

 Windows XP Professionalには、このTerminal Serviceのサーバ機能が標準で組み込まれており、LANやインターネットを経由してクライアントからこれに接続し、デスクトップを操作できるようにしている。ただしこのサーバ機能が提供されているのはWindows XP Professionalだけで、Home Editionにはリモート・デスクトップのクライアント機能だけが提供されている。

 前述したとおり、Terminal Serviceでは、原理的には複数ユーザーが同時にサーバにログオンできるのだが、Windows XP Professionalのリモート・デスクトップでは、ある時点でログオンできるユーザーは1人に制限されている。同一ユーザーがリモートから接続したときには、コンソール側はロック(ドメイン参加時)されるか、「ようこそ」画面に切り替わり(ドメイン非参加時)、デスクトップの内容(表示しているウィンドウなど)はそのまま引き継がれる。一方、異なるユーザーがリモートからログオンしたときには、コンソール側はログオフ(ドメイン参加時)または「ようこそ」画面に切り替わり(ドメイン非参加時)、デスクトップの内容は引き継がれない。

 Windows 2000 Serverに組み込まれていたTerminal Serviceと比較すると、Windows XPのリモート・デスクトップでは、フルカラー・サポート(16bitカラー/24bitカラー、従来は256色まで)やサウンド・データのローカルでの再生(リモートからWAV音声データをクライアント側に送り、クライアント側でこれを再生する機能。従来は音声データはすべて無視)などの機能が拡張されている。

 ただしWindows XPのリモート・デスクトップで使用されるRDPプロトコル自体はWindows 2000のTerminal Serviceと互換性があるので、上記拡張機能が使えないことを除けば、従来のTerminal ServiceクライアントからWindows XP Professionalのリモート・デスクトップ・サーバに接続したり、逆にWindows XP Professional/Home Editionに付属するリモート・デスクトップ・クライアントからWindows 2000 Terminal Serviceサーバに接続したりすることが可能である。

 なお、Windows XPのインストールCD-ROMには、Windows 9x/MeおよびWindows 2000に対応したターミナル・サービス・クライアントのソフトウェアが提供されている。これを前出の環境にインストールすることで、Windows XPで拡張された機能を使って、ターミナル・サービスを利用できるようになる。

Windows XPのインストールCDのメニュー
Windows XPのインストールCDのメニュー
初期メニューから[追加のタスクを実行する]を選択するとこの画面になる。ここから、リモート・デスクトップ・クライアントを既存のWindows環境にインストールすることができる。
  リモート・デスクトップ・クライアント・プログラムをインストールするにはこれをクリックする。

 Windows XPのリモート・デスクトップ機能の詳細については、別項「Windows XPの正体:リモート・デスクトップで遠隔操作する」を参照されたい。


 INDEX
  [特集]Windows XPとは何か?
     1. Windows XPのパッケージ構成
     2. プロダクト認証の影響は?
     3. Windows XPのインストール
     4. ユーザーから見たWindows XP
     5. 改良されたデスクトップ・パーツ
     6. 初心者向け/熟練ユーザー向け双方の機能拡張がなされたエクスプローラ
     7. 液晶ディスプレイの解像度を擬似的に向上させるClearType
   8. 遠隔地からのデスクトップ操作を可能にするリモート・デスクトップ
     9. SOHOユーザーや家族での簡易なデスクトップ切り替えを可能にする「ユーザーの簡易切り替え」
    10. ヘルプデスク業務を効率化するリモート・アシスタンス
    11. Home EditionとProfessionalで大きく変わるユーザー管理
    12. ファイルの共有設定
    13. ファイルのセキュリティ設定
    14. 暗号化ファイル・システム:EFS
    15. システム管理ツール
    16. バックアップ・ツール(システムの復元)
    17. バックアップ・ツール(自動システム回復)
    18. アプリケーション起動の高速化
    19. ファイル・システム関連の強化点
    20. Windows XPのネットワーク機能(その1)
    21. Windows XPのネットワーク機能(その2)
 
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