特集
|
|
Windows XPのパッケージ発売は、米国で2001年10月25日から開始された。これに対し日本国内では、10月25日から、一部のPCショップなどで、PCパーツ購入者に対するOEM版(内容はパッケージ版相当)の先行発売が行われた。またPCベンダは、10月末ごろより、Windows XPをプレインストールした2001年冬モデルのPCを一斉に発売し、これらがPCショップの店頭に並び始めた。店頭に並んだプレインストールPCの多くはホーム・ユーザーを対象とするもので、ほとんどはWindows XP Home Editionを搭載している。
そして11月16日からは、Windows XPのパッケージ販売がいよいよ開始される。マイクロソフトのWebサイトでの情報によれば、全国各地のPCショップで、11月16日午前零時の深夜販売が行われるという。従来、新バージョンのWindowsの発売といえば、このパッケージ発売を山場としてプロモーションされていたが、今回はパッケージ発売を待たずして、その気になれば広くWindows XPを購入できるという方法がとられた。
OSカーネルは32bit版に一本化
Windows OSの歴史におけるWindows XPの大きな役割は、古い16bitカーネルの使用をやめ、フル32bitのNTカーネルに一本化することだ。すでにマイクロソフトは、フル32bit対応のOSとして、Windows NTカーネルを設計し、これをWindows 2000に搭載している。しかしホーム・ユーザーなどを対象として販売されていたWindows Meでは、16bitコードが残された古いカーネルを使用していた。
Windows 2000もWindows Meも、アプリケーション・インターフェイスのレベルでは同じWin32をサポートしているため、同じアプリケーションの実行ファイルを双方のOSで実行可能だ。しかし実際には、アプリケーションの内部でOSのバージョンを調査し、処理を切り替えているものが少なくない。Windows XPになったところで、ホーム・ユーザー向けのHome Editionと、企業ユーザー/上級ユーザー向けのProfessionalでは機能が異なるので(詳細は後述)、OSバージョンに応じたアプリケーションの処理は変わらず必要である。しかしOSのコア部分は32bitカーネルで共通化されるため、16bitカーネル/32bitカーネルという従来環境に比べれば、はるかに処理は容易になるはずだ。
プログラム開発者の中で、32bitカーネルへの一本化で最も恩恵を受けるのはデバイス・ドライバ開発者だろう。Windows Me向けの16bitドライバと、Windows 2000向けの32bitドライバは互換性がなく、これまではアーキテクチャの異なる双方のOS向けに別々にデバイス・ドライバを開発しなければならなかった。しかし今後は、32bit対応ドライバを1つ作れば、それをHome EditionとProfessionalの双方で使うことができる(ただし、64bit版のWindows XPもあるので、のんびりできるわけではないが)。
Windows XP OSの3つのバージョン
クライアントOSとしてのWindows XPには3つのバージョンがある。1つはホーム・ユーザー向けのHome Edition、1つは企業ユーザー/上級ユーザー向けのProfessional、そして64bitプロセッサのItanium搭載システムに対応した64bit版Windows XPである。64bit版Windows XPは、一部のメーカー製PCにプレインストールされるもので、OSのパッケージ販売は今のところ予定されていない。したがってほとんどのユーザーにとって当面の選択肢となるのは、Windows XP Home EditionとWindows XP Professionalの2つである。
なおWindows XPに対応するサーバ向けバージョンは現在開発中で、先ごろ、米国版のベータ3が2001年11月中に開発者向けに提供されると発表された(米Microsoftのニュースリリース[英文])。製品版の発売は来年(2002年)が予定されている。「XP」という名前が付くのはクライアント向けバージョンのみで、サーバ向けバージョンは先ごろまで開発コード名を使って「Whistler Server」と呼ばれていたが、正式名称は「Windows .NET Server」となった。名前から想像できるように、このWindows .NET Serverは、マイクロソフトが進める次世代ネットワーク基盤技術のMicrosoft .NETに準拠し、XML、WSDL、UDDIといった標準プロトコルのネイティブ・サポートが追加され、.NET Frameworkと各種アプリケーション・サービスが統合される。
Home EditionとProfessionalは、OSバージョンとしては異なるが(事実、APIを通じてアプリケーションから両者を識別することが可能)、別々に開発されたものではなく、開発はあくまでProfessionalで進め、ユーザー管理機能やLAN管理機能などを取り除いてHome Editionを構成している。つまりHome Editionは、Professionalのサブセットになっている(逆に言えば、Professionalは、Windows XPのすべての機能が搭載されたフルセット版だということもできる)。商品戦略上の機能差はあるが、OSの内部は基本的に同一である。したがってHome EditionとProfessionalとの間で、デバイス・ドライバやアプリケーションの互換性などで差が生じることはないと考えてよいだろう(一方で動くものは他方でも動く可能性が高く、逆に一方で動かないものは他方でも動かない可能性が高い)。
Windows XPのパッケージ構成
Windows XPの提供形態は、パッケージ販売ばかりでなく、PCへのプレインストールや企業向けのボリューム・ライセンスを含め、いくつかの種類がある。
■OEM版(パッケージ同等版)
OEMベンダ向けに提供されるOEM版には2種類がある。1つは、マイクロソフトによるユーザー・サポートがないこと、OEM版としてのライセンス条件があることなどを除けば、基本的には次に述べるパッケージ版と同等のもの。10月25日に一部のPCショップで販売されたOEM版パッケージがこれである。CD-ROMの内容はこのパッケージ版と同じなので、OEM版といえども、プロダクト認証もパッケージ版と同じように機能する。販売価格はOEMベンダ次第だが、一般的には、マイクロソフトのユーザー・サポートが受けられないことなどがあり、パッケージ版よりは安価に販売される場合が多いようだ。
Windows XP Professional(左)/Home Edition(右)のOEMパッケージ | |
マイクロソフトのユーザー・サポートがないこと、OEM版としてのライセンス条件があることを除けば、CD-ROMの内容はパッケージ版と同等である。プロダクト認証もパッケージ版と同じように機能する。 |
■OEM版(大手ベンダ製PCにバンドルされるもの)
もう1つのOEM版は、大手PCベンダが自社のPCにプレインストールするバージョンである(一部の中小PCベンダでは、前出のOEM版などをプレインストールしている場合もある)。このタイプでは、Windows
XPがシステムのBIOS情報を読み取れるように変更されており、プレインストール・マシン以外のマシンにはインストールできない。代わりにこのタイプでは、ハードウェア構成をどのように変更しても、正しいBIOS情報が読み取れるかぎり、プロダクト認証の再認証は不要である(プロダクト認証は、ハードウェア構成のスキャンを行わない)。
■パッケージ版
パッケージ版には次のタイプがある。
製品 | タイプ | アップグレード対象製品 | 推定小売価格 |
Windows XP Home Edition 日本語版 |
通常版 | MS-DOS/Windows 3.1/Windows 95 | 2万5800円 |
アップグレード版 | Windows 98/Windows 98 SE/Windows Me | 1万3800円 | |
Windows XP Professional 日本語版 |
通常版 | MS-DOS/Windows 3.1/Windows 95 | 3万5800円 |
アップグレード版 | Windows 98/Windows 98 SE/Windows Me/Windows NT Workstation 4.0 (SP5以上)/Windows 2000 Professional | 2万3800円 | |
特別アップグレード版 | Windows 2000 Professional | 1万5800円 | |
アカデミック・アップグレード版 | Windows 98/Windows 98 SE/Windows Me/Windows NT Workstation 4.0(SP5以上)/Windows 2000 Professional | 2万800円 | |
Windows XP日本語版パッケージの製品価格 |
Window XPパッケージ版(Home Edition(左)/Professional(右)) |
日本では、Windows 2000 Professionalユーザーが安価にWindows
XP Professionalにアップグレードできる「特別アップグレード版」が用意された。 (パッケージ写真の使用に際して、Microsoft Corporation発行のガイドラインに準拠しています) |
Windows XP Home EditionはWindows 98/Windows 98 SE/Windows Meの後継、Windows XP ProfessionalはWindows 2000 Professionalの後継と位置づけられている。まず、Windows 98/Windows 98 SE/Windows Meのユーザーは、安価なアップグレード版を購入することで、Windows XP Home Editionへも(バージョン・アップグレード)、Professionalへも(プロダクト・アップグレード)バージョンアップすることができる。ただしバージョンアップ・パッケージを購入できるのはWindows 98以降のユーザーであり、Windows 95以前を使っているなら、通常版を購入しなければならない。
Windows NT 4.0/Windows 2000 Professionalユーザーは、Windows XP Professionalアップグレードを利用できる。ただしWindows 2000 Professionalユーザーについては、さらに安価な特別アップグレード版が用意されている。これは米国では提供されない日本オリジナルのパッケージである。OSの内部を知るパワー・ユーザーの間で、Windows 2000からWindows XPへのアップグレードは価格に見合うメリットが感じられないとの声があるが、特別アップグレード版はこうした声に応えたものだろう。
|
注意すべきポイントの1つは、Windows XP Home EditionからProfessionalへのアップグレード・パッケージが用意されていないことだ(米国版ではこのアップグレードが可能になっている)。したがってHome Editionを購入したユーザーは、アップグレード版や特別アップグレード版を購入してProfessionalにバージョンアップすることはできない。マイクロソフトによれば、2002年第1四半期に3カ月限定でこれに対応するアップグレード方法を提供するとのことだ(この件に関するマイクロソフトの解説ページ)。
なおマイクロソフトは、Windows XPと同時にWindows XPに対するアドオン・ソフトウェアをひとまとめにしたPlus!パッケージ(Microsoft Plus! for Windows XP)を発売した。このPlus!パッケージには、Media Playerのアドオンツール(MP3形式からWindows Media形式へのデータ・コンバータや新しいスキン/視覚エフェクトなど)や3Dグラフィックスを駆使したゲーム、スクリーン・セーバなどが含まれる。ただしターゲットはあくまでコンシューマ・ユーザーであり、企業ユーザー向けの製品ではない。PCショップなどで販売されるOEM版のパッケージには、このPlus!を同梱したパッケージも販売されている。
関連リンク | ||
Windows .NET Server ベータ3に関する米Microsoftのニュースリリース[英文](米Microsoft) | ||
Windows XP Home EditionからProfessionalへのアップグレードの件に関するマイクロソフトの解説ページ(マイクロソフト) | ||
特集 |
- Azure Web Appsの中を「コンソール」や「シェル」でのぞいてみる (2017/7/27)
AzureのWeb Appsはどのような仕組みで動いているのか、オンプレミスのWindows OSと何が違うのか、などをちょっと探訪してみよう - Azure Storage ExplorerでStorageを手軽に操作する (2017/7/24)
エクスプローラのような感覚でAzure Storageにアクセスできる無償ツール「Azure Storage Explorer」。いざというときに使えるよう、事前にセットアップしておこう - Win 10でキーボード配列が誤認識された場合の対処 (2017/7/21)
キーボード配列が異なる言語に誤認識された場合の対処方法を紹介。英語キーボードが日本語配列として認識された場合などは、正しいキー配列に設定し直そう - Azure Web AppsでWordPressをインストールしてみる (2017/7/20)
これまでのIaaSに続き、Azureの大きな特徴といえるPaaSサービス、Azure App Serviceを試してみた! まずはWordPressをインストールしてみる
|
|