特集
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先に発売されたOffice XPに続き、今回発売されたWindows XPでは、OSとして初めてプロダクト認証(product activation)の機構が組み込まれた。これは利用者の良心に頼るのではなく、強制力をもってソフトウェアの不正コピーを防止しようとするもので、ソフトウェアのインストール時にインストール対象となるハードウェアの情報を取得し、シリアル番号とセットにしてマイクロソフトのセンター側に登録することで、同一シリアル番号で別のコンピュータへのインストールを行えなくするしくみだ。この際でも、ユーザーのプライバシは守られており、マイクロソフト側に残されたデータから、認証されたコンピュータやユーザーを特定したりできるわけではない(希望すれば、プロダクト認証とは別にユーザー登録を同時に行うことは可能)。
Windows XPでは、猶予期間として、最初にインストールしてから30日間は、プロダクト認証を行わなくてもWindows XPを使うことが可能で、その間に認証を受ければ、インストールした環境を使い続けることができる。ただし最初にインストールしてから30日を超えると、Windows XPにログオンできなくなる(ログオンしようとすると、認証を要求する画面が表示され、認証作業を行わない限りWindows XPが使えなくなる)。
プロダクト認証では、ハードウェア情報を検出することから、新しい拡張カードを追加したり、メモリを追加したりすると、すでにWindows XPをインストールしているコンピュータでも、異なるシステムであると判断され、再認証を求められる可能性がある。ただしある程度の改変は認められており、実際には、かなり大幅にハードウェア構成を変更しないかぎり、再認証は求められないようになっている(米Microsoftが公開しているプロダクト認証に関する技術情報[英文])。
企業のコンピュータ管理者としては、プロダクト認証による現場の混乱や、それによる管理コストの増大が気になるところだが、プロダクト認証はボリューム・ライセンス版のWindows XPには適用されない(ボリューム・ライセンス版の特別なWindows XPが用意されている)。ボリューム・ライセンスは5クライアントから利用可能なので、これ以下のごく小規模なSOHOユーザーを除けば、企業ユーザーはボリューム・ライセンスの導入を検討するとよいだろう。
なお前述したとおり、大手PCベンダがプレインストールするOEM版のWindows XPでは、BIOS情報だけを確認し、ハードウェア構成を走査しないものもある。この場合には、BIOS情報さえ一致すれば、ハードウェアはいくら改変しても再認証は必要ない。
Windows XPの必要ハードウェア構成
Windows XPをインストールするためには、最低でも以下のような構成のPCを用意する必要がある。参考までに、2000年2月18日に発売されたWindows 2000 Professionalの必要スペックを併せて表記した。
Windows XP Home Edition/Professional | Windows 2000 Professional(参考) | |
CPU | Pentium-233MHz以上。300MHz以上のCPUを推奨 (CPUはIntel Pentium/Celeronファミリ、AMD K6/Athlon/Duronファミリまたはこれらと互換性があるもの)*1 |
Pentium-133MHz以上(または互換プロセッサ) |
必要メモリ | 64Mbytes以上 | 32Mbytes以上 |
推奨メモリ | 128Mbytes以上(96Mbytes以下では一部機能に制限がある)*1 | 64Mbytes以上 |
ハードディスク | 1.5Gbytes以上 | 1Gbytes以上 |
グラフィックス | Super VGA(800×600)以上の高解像度ディスプレイ*1 | VGA |
その他 | キーボード/マウス互換のポインティング・デバイス/CD-ROMまたはDVD-ROMドライブ | キーボード/マウス互換のポインティング・デバイス/CD-ROMまたはDVD-ROMドライブ |
Windows XP Home Edition/Professional日本語版、Windows 2000 Professional日本語版の必要システム構成 | ||
*1 11/16日に発売されたWindows XP Home Edition/Professionalのパッケージ表記を元に情報を更新しました。 |
このようにWindows 2000の必要最低スペックと比較すると、CPUクロック、メモリ、ディスクともパワーアップした環境が必要だが、Pentium-233MHz/64Mbytesメモリ/1.5Gbytesディスクといえば、4年ほど前のエントリ・モデルなので、この最低スペック自体が問題になることはないだろう。だが現実的には、このスペックでは実用的にWindows XPが使えるとはいえない。厳密にはベンチマーク・テストが必要になるが、ここでは、Windows 2000よりもハイスペックのPCが求められる、という程度に認識しておけばよいだろう(現在、編集部ではWindows XPに関するベンチマーク・テストを進めており、まもなく記事を公開する予定である)。
Home EditionとProfessionalの違い
すでに述べたとおり、Windows XP Home Editionは、フルセット版であるProfessionalからいくつかの機能を省略したサブセット版である。具体的にHome Editionでは、Professionalに比較して以下の機能が省略されている。
Home Editionにはない機能 | 内容 |
ドメインへの参加 | Windowsネットワーク・ドメインにクライアントとして参加する機能。ドメインとしてのクライアントの集中管理は行えないが、ワークグループ名やユーザー名/パスワードを一致させることで、Windows XP Home Editionからネットワーク上の資源などにアクセスすることは可能 |
リモートデスクトップのサーバ機能 | 遠隔地からそのコンピュータに接続し、操作可能にする機能。Home Editionでは、クライアント機能のみが提供される |
オフライン・フォルダ | ネットワークの接続時/切断時にかかわらず、ネットワーク・ファイルの操作を可能にする機能(変更内容については、ネットワーク接続時に同期する) |
マルチプロセッサ・サポート | Home Editionではシングル・プロセッサ・システムのみサポート。ProfessionalではデュアルCPUまでをサポート |
EFS(Encrypting File System) | ファイルを暗号化し、情報漏えいを防止する機能 |
ファイルその他のリソースに対するアクセス制御 | 特定のファイルやアプリケーションなどに対するユーザーのアクセスを制限する機能 |
グループ・ポリシー | ユーザー・グループなどに応じてクライアント環境をセットアップするための機能 |
ユーザー・プロファイルのローミング | ログオンの有無にかかわりなく、ユーザーのドキュメントや設定情報にアクセスする機能 |
RIS(Remote Installation Service) | ネットワーク経由でのOSインストールを可能にする機能 |
自動システム回復(ASR:Automatic System Recovery ) | Home Editionでは、標準ではバックアップ・ユーティリティ(NTBackup)がインストールされない。インストールCD-ROMから手動でインストール可能だが、このバックアップ・ユーティリティでは、ASRは使用できない |
多言語ユーザー・インターフェイス対応アドオン | ユーザー・インターフェイス言語を他の言語に変更する機能。これによりダイアログ・ボックスやメニュー、ヘルプ・ファイルの言語設定が変更される |
Windows XP Professionalと比較して、Home Editionで省略されている機能(主要なもの) |
全体的には、LAN環境の集中管理を可能にするクライアント機能、セキュリティ関連の機能などが省略されていることが分かる。つまりHome Editionは、集中管理が不要で、ネットワークを使うメンバーも家族やごく親しい仲間などで構成される家庭内LANやSOHO LAN(ワークグループ・ネットワーク)で使うことを前提としているということだろう。
Windows 2000 Serverなどで構成されるWindowsドメイン・ネットワークを管理している企業のネットワーク管理者にとって、Home EditionとProfessionalにおける最大の差は、前者がドメインのクライアントとしてネットワークに参加できないことだろう。実際には、Windows 9xやWindows Meと同様に、XP Home Edition側でのワークグループ名をドメイン名と一致させておき、ユーザー名/パスワードをドメイン・アカウントのそれと一致させることで、Windows XP Home EditionクライアントからWindowsドメインの各種ネットワーク資源を利用することは可能である。しかし、Windows 9Xクライアントしかなかった以前はともかく、これから新規に導入するクライアントOSとして、Home Editionを選択する積極的な理由はないはずだ。
Home Editionでは、バックアップ・ユーティリティは標準ではインストールされない。インストールCD-ROMには収録されているので(「\VALUEADD\MSFT\NTBACKUP」フォルダ)、手動でインストールすることはできる。ただしHome Editionでは、ハードディスクのパーティション情報などをバックアップ作業時に自動的に保存しておき、万一のシステム障害時にこれを復帰可能にする自動システム回復(ASR:Automatic System Recovery)は使用できない(バックアップ・ユーティリティを起動すると、ASR用のボタンは表示されるが、正しく機能しない)。
なお、複数のユーザーが同時にWindows XPにログオンして、セッションを素早く切り替えながら使用可能にするユーザーの簡易切り替え機能は、Home EditionおよびProfessionalともに利用可能だが、Professionalを使ってWindowsドメインに参加した場合には、この機能はオフにされる。
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