シリアルポート(9ピン)ケーブル&コネクタ図鑑

「シリアルポート(9ピン)」は、PCと周辺機器、あるいはPC同士を接続するシリアル通信用コネクタの一種だ。

» 2015年06月15日 05時00分 公開
[島田広道デジタルアドバンテージ]
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ケーブルに付いているシリアルポート(9ピン)のコネクタ ケーブルに付いているシリアルポート(9ピン)のコネクタ

PCに搭載されているシリアルポート(9ピン)のコネクタ PCに搭載されているシリアルポート(9ピン)のコネクタ

 シリアルポートは、PCと周辺機器、あるいはPC同士を接続するためのシリアル通信インタフェースである。そのコネクタにはD-Sub 9ピンとD-Sub 25ピンの2種類がある。1990年代までは標準でPCに搭載されていた。現在はUSBやBluetoothといった後発のインタフェースに置き換わっている。

PCでのシリアルポートの始まり

 オリジナルのIBM PC登場当初から用意されていたシリアルポートは、その後に登場したPC互換機にも標準で装備された。

 もともとシリアル通信自体が規格化されており、PC以外の分野でも普及していたこと、パラレルポートと違って最初から双方向通信が可能だったことなどから、シリアルポートはさまざまな用途に活用された。

 具体的にはアナログモデムISDN TAといった通信機器から、PDAとのデータ同期、一部のプリンタやプロッタ、マウス、さらには各種計測機器まで、非常に多種多様な機器との接続に用いられてきた。

9ピンコネクタの成り立ち

 シリアルポートのコネクタのうちD-Sub 9ピンは、もともと規格として定められていたD-Sub 25ピンをベースに、IBMが作った独自仕様である。

 D-Sub 25ピンコネクタはサイズが大きすぎて、拡張スロットブラケットに一つしかコネクタを配置できない。そこでIBMはPC/ATをリリースする際、D-Sub 25ピンコネクタから最低限必要な信号だけを選び、新設したD-Sub 9ピンコネクタの各ピンに信号を割り当てた。

PCに搭載されているシリアルポート(25ピン)のコネクタ PCに搭載されているシリアルポート(D-Sub 25ピン)のコネクタ

 基本的に両者はピン数が異なるだけで信号線は同一だ。また、PC側コネクタがピンの出ているオスで、ケーブル側コネクタがメスなのも共通である。

 その後に登場したPC/AT互換機にもD-Sub 9ピンコネクタは広まっていき、25ピンとともにシリアルポートの標準コネクタとしての地位を確立した。

 1980年代〜1990年代のPC互換機のうち、デスクトップPCなら大抵2つのシリアルポートを標準装備していた。'90年代前半までは、25ピンと9ピンそれぞれ1ポートずつという構成だった。その後、マザーボードがATXフォームファクタに移行するにつれて、次第に9ピン×2ポートという構成に変化していった。

PCでのシリアルポートの凋落

 シリアルポートはIRQやI/Oアドレスが固定されていてプラグアンドプレイを阻害することから、レガシーデバイスの一つとして、次第にPCの主要なインタフェースから追われることになった。

 2000年代になると、1ポートのみ、あるいは全く装備していないPCが次第に増えていく。特にノートPCは、I/Oパネルのスペースが狭いことから、その傾向が強かった。

 その一方で、USBやBluetoothといった新しいインタフェースが台頭する。これらはコネクタが小さく(あるいは全く存在しない)、通信速度は速く、セットアップも難しくない、消費電力も小さい、といったメリットから、幅広いユーザーからの支持を受ける。結果としてシリアルポートは廃れていき、産業用機器など互換性が重視される用途を除けば、PCでは見かけなくなっている。

25ピンと9ピンの変換アダプター/ケーブル

 PCとシリアルで接続する周辺機器側でも、25ピンコネクタと9ピンコネクタが混在している。もともとは標準規格に従った25ピンコネクタ(メス)ばかりだったが、PC互換機の普及と周辺機器の小型化に伴って、9ピンコネクタ(オスが多い)を装備する製品が増えていった。従って一種類のシリアルケーブルでは、コネクタ形状が合致せず接続できないことがある。

 そんなときには、25ピンと9ピンのコネクタ変換アダプターや、オス/メス変換アダプターを用いる。シリアルケーブルのコネクタに取り付けることで、PC側や周辺機器側とコネクタ形状を合わせることができる。

パラレルポートとの誤接続には要注意

 ただし変換アダプターを使うときには、接続先を間違えないように注意したい。というのも、PC側のパラレルポートもD-Sub 25ピンコネクタを使っているからだ。

 パラレルはメスでシリアルはオスという違いはある。だが、変換アダプターで25ピンコネクタのオス/メスを変換すると、接続を間違えやすい。シリアルとパラレルでは、信号の向きや電圧などが全く異なるので、誤接続すると最悪PC側の電気回路が故障する可能性もある。

クロスケーブルの扱い

 シリアルポートは、周辺機器との接続だけではなく、PC同士を接続してデータ交換にも利用されてきた。そのため、イーサネットのツイストペアケーブルと同様に、ストレートケーブルクロスケーブル(リバースケーブル)という2種類のケーブルがシリアルにも存在する。周辺機器との接続に使うのがストレートケーブルで、PC同士の通信に使うのがクロスケーブルだ。

 クロスケーブルに関する注意点は2つある。一つは、ストレートとクロスを間違えないようにすることだ。購入時にはパッケージに「クロスケーブル」などと記されているから区別できるが、ケーブル単体だと外見では全く判別できないので要注意である。

 もう一つは、クロスケーブルには複数の種類が存在することだ。異なるのは信号線の結線で、これによりフロー制御の方法も変わってくる。フロー制御は、PC同士の通信を制御するソフトウェア(例えばWindowsのケーブル接続やアナログモデムの通信ソフトウェアなど)が担当するので、このソフトウェアに合わせて適切なクロスケーブルを選ぶ必要があるわけだ。クロスケーブルにもソフトウェア側にも、信号の結線図が記されているはずなので、両者をつきあわせて合致することを確認すればよい。

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