Wikiでは、プロジェクトの情報共有に利用します。Wikiでプロジェクトの情報共有といっても具体的なイメージがわかない方もいるかもしれませんが、例えば次のような情報を整理していくとよいでしょう。
新しいプロジェクトメンバーが増えたとき、ネットワークやプリンタを設定したり、ツールの使い方を覚えたりする必要がありますが、Wiki上でセットアップガイドや使い方を手順書として掲載しておけば、新しいメンバーが来る都度、やり方を教える手間が削減します。特にプロジェクトメンバーが多いプロジェクトでは効果的です。
手順書をWiki上で管理する場合は、まずはWiki上の手順書を読んで作業をしてもらい、質問や誤りがあったら発見した人に追記や修正をしてもらうとよいです。メンバー1人1人の意見が積み重なることにより、手順書の品質が上がっていきます。
周知事項などを記載しておきます。メールでも周知などはできますが、メールの数が多くなるとメールボックスの中に埋もれたり、周知者が多いと周知漏れが発生しますが、Wiki上で公開しておくといつでも誰でも見ることができます。
また、周知がどこに書かれているか忘れた場合でも、Tracの持つ検索機能により素早く過去の周知を発見できます。
打ち合わせ内容など、議事録としてWikiへ記載しておくと後で見直すときに便利です。TracのWikiは各バージョンの差分が簡単に表示できるようになっていますので、レビューもWikiを利用して修正を行うと効率良くレビューできます。
アプリケーションの仕様をまとめるのに利用します。複数の人で仕様書を変更しても、誰が、どこを編集したか差分をすべて記録できるというメリットがあります。
ただし、Wikiベースでの文書の編集になるため、図を多用した設計書の作成の生産性は低下します。また、フォーマットにこだわるお客さまを抱えているプロジェクトにも不向きです。逆に文書に占める文字の比率が高く、見た目にこだわらない開発の場合、非常に効果的です。
編集したいWiki上で編集ボタンを押すと、Wikiを編集できます。Wikiの下部に表示されている「このページを編集する」ボタンを押下すると編集画面が表示されます(図21)。
TracのWikiはTWikiと呼ばれるWikiの文法で記述します。Wiki文法の詳細は、テキストエリア下のWikiFormattingとTracWikiのリンクから確認できます。
Wikiを使い始めのころは、Wiki文法になじめず、入力に時間がかかってしまうという欠点があります。WYSIWYGモードで編集すると、Wikiの文法を知らなくてもより直感的にWikiを編集できます(図22)。WYSIWYGモードにするには、Wikiの編集領域にあるWYSIWYGボタンを選択します。
WYSIWYGモードでは、Wikiの入力テキストエリア内で領域を選んで、画面上の装飾ボタンを押すとテキストを装飾することができます。スタイル、ボールド、イタリック等基本的な装飾からテーブルの編集まで直感的に編集できるのでWiki文法に慣れない初心者には非常に便利です。Wiki文法に慣れてくると、テキストモードの方が早く編集できるので、うまく使い分けてください。
編集が終わったら、「プレビュー」ボタンで変更後のWikiページの内容を確認できます(図23)。
[変更を確認]ボタンでは、編集前との差分が表示されます。「変更を送信」で変更内容を送信できます(図24)。
TracはWikiの変更履歴を表示できます。この機能を利用すると、複数の開発者で同時にWikiを編集する際に、誰がどこを編集したのか一目で分かるので、非常に便利です。Wikiの変更履歴を表示するには、メニュー右下の[ページ履歴]へのリンクをクリックします。
クリックすると、Wikiページの履歴が表示されます。Wikiを編集する際にコメントを入力しておくと、コメントも一緒に表示されます。
差分を表示したいバージョンを2つ選んで「変更個所を見る」ボタンを押すと2つのバージョンの変更個所を表示することができます。再レビューを行う場合など、変更履歴を利用すると、前回のレビューからの変更個所が一目で分かるので、非常に便利です。
新しいWikiページを作成するには、まず、既存のWikiページ中に存在しないWikiページへのリンクを作成します。下記のように記述します。
[wiki:<Wikiページ名> <表示名>]
例えば、下記のように記述すると、図27のようにグレーでページ名の後ろに「?」が付いたリンクが作成されます。
[wiki:NewPage 新しいページ]
このリンクをクリックすると、新しいWikiページを作成できます。
Trac Lightningについて簡単にご紹介しましたが、いかがだったでしょうか? Trac Lightningを利用することにより、いままで各担当者が抱え込んでいた作業をメンバ全員で共有でき、各開発者が持つ作業が見えるようになるとともに進捗(しんちょく)が見えるようになります。
作業が見えないプロジェクトでは、作業が割り振られていない開発者がいたりして、プロジェクトが無駄なコストを掛けることがあります。作業を見える化することにより、各開発者のプロジェクトへのコミットを明確にし、作業を効率的に行う動機付けにもつながります(くだらない作業に時間がかかっていたらカッコ悪いですよね!!)。TracなどのITSをまだ導入されていない方は、本稿を読んでぜひTrac Lightningを導入してみてはいかがでしょうか。
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