転職の鉄則は「最初は勢いよく、最後は慎重に」転職活動、本当にあったこんなこと(28)(1/2 ページ)

多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。

» 2009年10月29日 00時00分 公開
[山口孝之アデコ]

 転職活動はタイミングが命。でも、転職は人生の一大イベント。慎重になってしまうのは仕方がない……。

 転職活動をしている方の多くが、このようなジレンマを感じているのではないでしょうか。これを単なるジレンマで終わらせないことが重要です。慎重になりすぎてチャンスを逸してしまったり、逆にスピーディーに動いて失敗してしまったり……。両方のケースをよく聞きます。

 今回は、転職活動におけるさまざまな「タイミング」についてのお話です。

「だって経験ないですし」

 小倉さん(仮名)は28歳のソフトウェア開発エンジニア。大学の理系学部卒で、開発経験は6年です。就職氷河期世代で、大手企業に入ることができず、新卒で現在の40人規模のソフトハウスに就職しました。中小企業だったため、ソフトウェア開発は大手メーカーやSI企業からの下請け仕事が多く、上流工程や大規模な仕事がしたいと考えるようになりました。

 筆者は小倉さんの話を聞き、いくつかの求人案件を提案しました。しかし、実は懸念点がありました。

  • 現在までの業務内容が詳細設計以降の下流工程である点
  • リーダーの経験がない点
  • さまざまな業界向けのシステム開発を経験しているが、一方で特定分野の深い業務知識を持たない点

 小倉さんはキャリアアップを考えているので、「この会社ならキャリアアップできるな」と思えるような会社を受ける場合、上記のような懸念点が問題になってしまいます。「若さ」や「やる気」で払拭(ふっしょく)できるかが問題でした。

 しかし、お会いしてから1週間がたっても小倉さんから連絡がありません。心配になって電話をしてみると、求人票を見ても自信がなく、どの会社に応募しようか決められないでいるとのことでした。筆者はもう一度、打ち合わせの機会を持ちました。さて、小倉さんはどのような点で迷っていたのでしょうか。

 「例えばこの求人なのですが、会社のWebサイトを見るとJavaに力を入れているようで、わたしの強みである.NETの開発は生かせないのでは、と……。それから、この会社はわたしくらいになるとリーダー経験のある人材を求めているのかなと思いました。それから、この会社の場合は……」


 ここで筆者は、視点を変えてみることにしました。「懸念点はひとまず置いておいて、これらの会社自体に興味はあるか?」という質問をしたのです。すると、小倉さんは答えます。

 「そうですね、求人票やWebサイトだけでは何ともいえませんが、現在の会社よりは大きな仕事を任せてもらえるチャンスが多い気はします。上流工程にもチャレンジできそうな気がしますね。良い会社だとは思いますよ」

「何とか転職先、決まりました」

 もう1人、紹介しましょう。同じくソフトウェア開発に携わるエンジニアの木村さん(仮名)から、ある日1本の電話を受けました。転職支援の面談をしてから3日後のことでした。

 「実は前々から応募していた会社から連絡があって、一昨日、面接試験を受けたのですが、1回の面接で内定をいただけまして、そこに決めようかと思っています」

 突然の電話に驚いた筆者は、どんな仕事内容なのかを尋ねました。ですが、どうも要領を得ません。

 「詳細は守秘義務の関係で教えていただけなかったのですが、上流工程からかかわれるらしいです。せっかく面談をしていただけたのに申し訳ないのですが、この会社に決めようかと思います」

 満足できる転職先が決まったのであれば、それ自体は良いことですから、素直に「おめでとうございます」と伝えました。ただ、少し気になる点がありました。果たしてその会社のことを、木村さんはよくご存じなのでしょうか?

 「よく知っているかといわれると、ちょっと……。面接も1回でしたし……。でも、面接官の方は上流工程からやれるといってますし、お会いした印象も信頼できそうでした」

 会社名を聞くと、筆者も知っている会社でした。転職先を決めるプロセスに若干の不安を感じましたが、せっかく意気揚々と転職をしようとしている木村さんに、否定的なことはいえませんでした。最後に新天地での活躍を期待している旨お伝えし、筆者は電話を切りました。

 小倉さんと木村さん、2人の転職活動を紹介しました。皆さんはどう思われましたか?

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