ユーザーごとに専用の仮想デスクトップを割り当てる方法や、リモートのアプリケーションへ直接アクセスするRemoteAppなどを解説する。
前々回と前回の2回に渡って、Windows Server 2008 R2のリモート・デスクトップ・サービス(RDS)を利用して、プール化された仮想マシンにリモートからアクセスするというVDIの基本的な環境の構築手順を説明した。今回は、前回の記事で作成した環境を使い、VDIの応用編として次の4種類の拡張方法を紹介する。
いずれもVDIの価値をさらに向上させる拡張機能である。
デスクトップ環境を仮想化したからといって、すべての環境をプール化できるとは限らない。例えば管理者が利用する監視・管理用PCのように、固有の設定をしたデスクトップ環境を特定ユーザーだけが利用することも十分に考えられる。そこで、VDIの中でも、ユーザー1人に対して1台の仮想マシンを割り当てる方法を紹介しよう。
まず、Windows Server 2008 R2のActive Directoryでは、ユーザー・アカウントの標準プロパティに「個人用仮想デスクトップ」というタブが用意されており、管理者はこのプロパティを利用することで、ユーザーに個別の仮想マシンを割り当て可能だ。この設定はRDSの管理画面からウィザードで実施できるが、ここでは仕組みを理解するために、設定が保存されるActive Directory側から確認してみる。
また、個人用仮想デスクトップが割り当てられたユーザーがVDIポータルにログオンした際、[マイ デスクトップ]というアイコンが表示されるが、そのアイコンを表示するかどうかも制御できる。それには、RD仮想化ホスト・サーバにおけるRDS管理画面の[個人用仮想デスクトップ]のプロパティで設定を変更する。もちろん、個人用仮想デスクトップに対しても、仮想マシン・プールの場合と同様に、カスタムRDPの設定や仮想マシンの自動保存などを設定できる。
上記の(2)の作業が完了すると、仮想マシン・プールのアイコンだけが表示されていたVDIポータルに[マイ デスクトップ]アイコンが表示されるはずだ。
アプリケーションによっては、仮想デスクトップを用意しなくても、サーバにインストールしておいてリモートから直接アクセス/実行すればそれで十分な場合がある(このときアプリケーションはサーバ上で実行される)。そこで、RemoteAppによってリモートのアプリケーションに直接アクセスする方法を紹介する。RemoteAppについては第1回の「3.リモートからデスクトップを利用するRDP/RDSのメリットとデメリット」を参照していただきたい。
第2回では、RDセッション・ホストという役割サービスがリダイレクタとして働くと記した。一方、このRDセッション・ホストは、従来のターミナル・サービス(RemoteAppを含む)を提供する場合にも利用する。しかし、1台のRD セッション・ホストは両方の機能を同時には提供できない。
要は、RDセッション・ホストという1つの役割サービスを追加した際、リダイレクタとして利用するのかRemoteAppとして利用するのかを選択する必要があるわけだ。
ここではRemoteAppが必要なので、リダイレクタとして動作しているRDセッション・ホストとは別のマシンを用意する必要がある。この機能は仮想マシンでも動作するので、今回は仮想マシンとして動作するWindows Server 2008 R2を利用することにした(コンピュータ名は「hvr02.contoso.com」。以下では「RemoteAppサーバ」と呼ぶことにする)。
(1)RemoteApp用役割サービスの追加
まずRemoteApp用に役割サービスを追加する。それには、RemoteAppサーバに予定しているマシンのサーバ・マネージャで[役割の追加]ウィザードを起動し、[サーバーの役割の選択]画面で[リモート デスクトップ サービス]にチェックを入れてオンにしてからウィザードを進める。その次の画面で、役割サービスの[リモート デスクトップ セッション ホスト]を追加する。そのほかの設定は第2回で説明したRDSのインストール時と共通だ。追加後はシステムの再起動をすること
(2)RemoteAppサーバへのアプリケーションのインストール
再起動したRemoteAppサーバにアプリケーションをインストールする。本稿ではOffice 2010をインストールしてみた。なお、第1回の「3.リモートからデスクトップを利用するRDP/RDSのメリットとデメリット」で説明したように、Windows Server 2008 R2にインストールできないアプリケーションはRemoteAppで公開できない。
(3)VDIとRemoteAppの連携
次にVDIとRemoteAppを連携させるための設定を行う。まずはRD接続ブローカ・サーバ(本稿ではhvr01.contoso.com)側での設定だ。サーバ・マネージャを開いて左ペインから[リモート デスクトップ サービス]−[リモート デスクトップ接続マネージャー]−[RD 仮想化ホスト サーバー]−[RemoteApp ソース]を右クリックし、RemoteAppソースの追加を選択する。今回はRemoteAppサーバとして、hvr02.contoso.comという仮想サーバを割り当てる。
次のページでは、引き続きRemoteAppの設定手順を解説する。
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