エンジニアが市場価値を上げるには、営業力が必要だ。元SEで営業経験もある著者が、「エンジニアが身に付けておきたい営業力」を語る。
前々回の記事「顧客が本当に欲しかった、『技術力以外』のもの」、前回の記事「『DB』『要件定義』が通じない? 顧客の知識レベルを探る」で、三大発信方針とそこから導き出される三大質問方針について説明してきました(図1)。
今回は三大質問方針の最後、「3.相手の興味・関心はどこにあるのか?」についてお話しし、この話題についてはいったん区切りをつけたいと思います。
この連載は、「考え方と事例」という構成であることが多いのですが、今回はテクニックらしいテクニックをご紹介します。
相手の興味・関心がどこにあるかをきっちりと聞き出すには、まずは相手のタイプを知る必要があります。何かを成し遂げるとき、先頭に立って引っ張っていくタイプの人と、一人一人と根気良く話をして協力を取り付けながら進めていくタイプの人では、興味・関心はまるで違います。
ここでいうタイプとは、性格とか血液型といったものとは多少違います。言動のパターンでタイプ分けする方法があり、あくまで私の経験上の評価ですが、結構有効なのです。
このタイプを、「ソーシャルスタイル」と呼びます。私はこれを、約20年前に社外研修で学びました。なので、私のオリジナルのアイデアではありませんが、私なりの解釈を交えてお話ししたいと思います。
ソーシャルスタイルは、すでに述べたように言動のパターンで人をタイプ分けしたものです。良い悪いの価値判断は含みません。
縦横2つの軸で考えます。
1つ目の軸は、言動の中に自分の思考を表現することが多いか少ないか。
2つ目の軸は、言動の中に自分の感情を表現することが多いか少ないか。
これらの組み合わせで、4つにタイプ分けできます(図2)。
思考表現も感情表現も多いのが、感覚派。明るく、声の大きい、大ざっぱだが人を乗せるのがうまい、自信にあふれた人です。
思考表現が多く感情表現が少ないのが、行動派。きびきびとして、「目力」があり、決断が速く、仕事の効率も良い、ちょっと断定的な人です。
思考表現が少なく感情表現が多いのが、協調派。温和で、気づかいがあり、人を助けることが好きだけれど、ストレスに弱く、楽しい雰囲気が好きな人です。
思考表現も感情表現も少ないのが、思考派。物静かで、冷静で、考え深く、細かいこともよく観察している人です。
それぞれの主な特徴は、図3にまとめました。
先ほど、「良い悪いの価値判断は含みません」と書きました。多くの方が、「あなたは感覚派です」といわれると、「何も考えてないみたいじゃないか」と不服を唱えます。しかし、これは言動のパターンに過ぎません、どのソーシャルスタイルであっても、物事をしっかりと考える人とそうでない人がいるというだけのことです。
相手のソーシャルスタイルは、打ち合わせの本題に入る前の雑談でだいたい分かります。特に話すトーンやアクションで判断がつくことが多いです。ただ、注意したいのは、その人が正反対のタイプの上司を持っている場合、ソーシャルスタイルは修正されている可能性があることです。
例えば、行動派の上司と協調派の部下の組み合わせだと、たぶん上司は「もっと人の目を見て話せ」とか「結論を先にいえ」などと部下に注意することが多いでしょう。そのため、上司と似たようなパターンに自分を修正しようとしていることがあるのです。
ソーシャルスタイルは、生まれ持っての気質や性格とは違い、言動のパターンなので、長い間に変化することもあります。しかし多くの場合は無理をしているので、だんだん本来の姿が見えてくるはずです。注意深く観察しましょう。
特にアイコンタクトの仕方や気の遣い方はなかなか修正が利きませんので、このあたりをじっくり見るのがよいでしょう。
見分けるのが難しいと思ったら、「言動の中に自分の思考/感情を表現することが多いか少ないか」という、本来の定義に基づいて判断しましょう。その人が自分の考えをいった数、気持ちを表現した数をカウントしていけば、本当のソーシャルスタイルが分かるはずです。
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