エンジニアが市場価値を上げるには、営業力が必要だ。元SEで営業経験もある著者が、「エンジニアが身に付けておきたい営業力」を語る。
今回は、起承転結をコミュニケーションに役立てるにはどうしたら良いかについて考えます。
「起承転結? 今さら何で?」と思う方もいるかもしれません。実は私も、今まであまり起承転結を意識しないで文章を書いてきました。
ところが最近壁にぶち当たりました。ある仕事の編集者が、私の書いたものをなかなか理解してくれなかったのです。正直に言うと、最初は編集者の読解力や知識レベルを疑いました。ところが話し合ううちに分かってきました。編集者もベテランです。文意が取れないわけではなかったのです。
彼が分からなかったのは「なぜ、ここでこの話題が出てくるのか?」ということでした。いわゆる“唐突感”というものです。
実を言いますと、過去にも何回かそのような指摘を他の編集者や校閲者から受けたことがありました。それまではなんとなくスルーしてきたのですが、そのときは真剣に1時間以上討論し、私の文章の書き方が定型パターンを外しているので編集者には理解しづらいということが分かったのです。その定型パターンが、起承転結でした。
それで、起承転結についてあらためて考えることにしたのです。
起承転結という言葉自体は、漢詩の授業で習ったと思います。4コママンガにも応用されているので、そちらで知った方もいるかもしれません(現代の4コママンガは起承転結をあえて外すものも多いのですが)。
一般に言われている起承転結の意味は、このようなものです。
冒頭の編集者とのやりとりは、私が書いたメールマガジン用のコラムについてでした。編集者は、コラムは起承転結の構造で書かれていると一番安定していると主張します。ではその起承転結とはどういうものかと聞くと、次のように答えてくれました。
そのとき私が書いたコラムは、いったん“結”になったのに、その後にまた小さな“転結”が入る。それでは読者が戸惑うと編集者は言うのです。
私は「なるほど」と思いました。そういえば、私の過去の文章にはそういうパターンが多かったような気がします。最後に余計な一言を入れたくなってしまうのです。自分ではそこが“芸風”だと思っていたのですが、分かりづらいと言われればその通りなので、以後は気を付けることにしました。
前段でコラムにおける起承転結について説明しました。では、仕事においてはどうでしょう?
IT企業では、顧客への情報提供が重要です。顧客向けの小冊子を発行している会社も多く、中堅以上のITエンジニアは寄稿を求められることもあるはずです。このようなときに論文調の記事を書くのも良いかもしれませんが、読者のことを考えると、肩の凝らないコラム的な読み物の方が良い場合もあります。
また、インターネットが当たり前になった現在では、情報発信の機会がますます増えています。何らかの文章を書くことと無縁なITエンジニアは減っているのではないでしょうか。起承転結の考え方は、このようなときに役に立つ知識といえるでしょう。
起承転結はプレゼンテーションにも応用可能です。なぜなら、分かりづらいといわれるプレゼンは、起承転結の構造を外していることが多いからです。
プレゼンにおける起承転結は以下のようになります。
話し方の巧拙はあるかもしれませんが、この構造で話している限りは、あなたのプレゼンが分かりづらいと言われることは少なくなるはずです。
このコラムのタイトルは『エンジニアの市場価値を高める「営業」入門』です。営業における起承転結とはどのようなものでしょうか。
営業のハイライトは商談です。そして商談の黄金パターンも、実は起承転結なのです。
少し詳しく見て行きましょう。
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